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2018年4月28日 (土)

東京ユヴェントス・フィル第17回定期演奏会~個性的な指揮者と若く優秀な奏者たちの純度の高い演奏

2008年、慶應義塾創立150年を記念する特別演奏会
のために慶應義塾の高校生と大学生を中心に
「慶應義塾ユースオーケストラ」という名称で結成され、
その後、出身や年齢層に関して幅広く門戸を広げるに
際して2014年、東京ユヴェントス・フィルハーモニーに改称
したオーケストラの第17回定期演奏会を、
28日午後6時開演、パルティノン多摩 大ホール
にて聴いた。

指揮は慶應出身で、このオケの創設者、
音楽監督の坂入健司郎さん。
 曲目は

1.ワーグナー楽劇ニュルンベルクのマイスタジンガー
  第一幕への前奏曲

2.ドヴォルザーク チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104

3.ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」Op.55


パルティノ多摩は久々。
何年前に来たのか覚えていないくらい。
京王多摩センター駅から石畳のなだらかな坂を上がって
いくと、なるほど確かに現代版「パルティノン」神殿の雰囲気
のある、その名に相応しい威容あるシンメトリック建物。
舞台ステージ面積はそれほど広くなく、その分、
ステージ上(内)ではよく響くホール。
特に木管や金管がよく響く感じがする。

個別の感想の前に、全3曲が終わってロビーに出ると、
真っ先にステージから出てきた坂入さんが顔見知りの
来場者と笑顔で応対していた。こういうところが、
今年5月12日に30歳になる彼の良いところでもある
のだろう。
飾らない実直さと熱い心の持ち主であることが見てとれる。

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1曲目のワーグナーは速めのテンポ。
とはいえ、ワーグナー自身が2つ振りした(4拍子で書いて
あっても2拍子として振った)という説もあるので、
この位が妥当なのかもしれない。「喜劇」だし。
元気な演奏ながら、あまりワーグナーという感じはしなかった。
ロッシーニみたいな心象の残る演奏。
坂入さんの4拍子の腕の動きが忙しく「振り過ぎ」の感は
するが、それも個性の1つだし、情熱を常に感じさせる指揮。

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2曲目のドヴォルザークのソロは、スロヴァキア共和国の
首都ブラティスラヴァ出身のルドヴィート・カンタ氏。
プラハの春国際音楽祭コンクール2位などの経歴があり、
1990年よりオーケストラ・アンサンブル金沢の首席奏者
だったり、日本音楽コンクールの審査員や
愛知県立芸術大学で教鞭を執るなど、
日本との関係が深い人。
2003年と2005年のスロヴァキア・フィル来日公演でも
今回と同じく、ドヴォルザークの協奏曲を弾いている。

私はカンタさんは初めて聴いたが、
音は艶やかとようこともなく、むしろ「いぶし銀」だが、
演奏スタイルは知的というより情熱的。弱音場面、
抒情的な場面でのデリカシーも素敵だ。

この曲での坂入さんの指揮は1曲目とはうって変って、
丁寧にソロに合わせるそのサポート感が良かった。
それに応じるオケも見事だし、それでいて、木管ソロなどの
オブリガート的旋律線もくっきりと聴こえてくるのが素敵だった。
特に第2楽章と第3楽章の抒情的な場面が素敵だった。
逆にこの曲でのオケはトゥッティ(全奏)部分のフォルテが
総じて弱すぎたかもしれない。
ソロを意識した演奏が、その点ではやや裏目に出た感はした。

それでもオケの優秀さには感心することが多く、
クラリネットやオーボエの女性奏者の音色が素敵だし、
トランペットの2人の女性奏者の完璧さと明るい音色は
プロはだしと言ってよく、
控えめに言っても音大生のレベルを有する。

弦楽器の各パートは一糸乱れることはなく、
1つのパートが1つの音程としてはっきり届いてくる。
濁りはほとんどない。
若い奏者が多く、個々の技術が相当高いことが見て取れる。

第2楽章でファーストヴァイオリンが32分音符で弱音で
分散和音的に動く部分でも、モヤッとせず、
くっきりはっきり聴こえてきるのだ。
ソロを邪魔しない範囲で。これは見事。相当優秀な弦だ。

コンマスは技術だけでなく音も良く、
たぶん楽器も相当良いものを使っているのだろう。

なお、演奏後の長い拍手の応えてカンタさんは
バッハの無伴奏チェロ組曲第1番から「サラバンド」を
弾いた。抒情的な演奏で素敵だったし、
こうした現代の大ホールでも、たった1台のチェロだけでも
これだけの存在感、まるで昨日作曲されたかのような
作品の生命力を聴衆に伝えてくるバッハの作品、
バッハの偉大さをあらためて実感した。

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休憩後のベートーヴェンの「英雄」。
総じて速いテンポと、ヴィブラートを控えめにした、
いわゆるピリオド奏法を意識した演奏。
ティンパニも前2曲で使用した大型というか普通サイズの
ものは中央奥に置いたまま、
この曲では小型の古楽器としてのティンパニを
新たに客席から見て右手奥に置いての演奏。
このティンパにの硬い音による効果は
第1楽章では後半から効いてきたし、
第4楽章も効果をあげていた。

第1楽章は凄く速いテンポ。私の嫌いな演奏スタイル。
個人的に嫌いというだけでなく、私が「英雄」で
このスタイルに反対するのは理由がある。
私なりの信念があるからだ。

このスタイルは、ハイドンやベートーヴェンでも
第1交響曲までのスタイルであって、
カール・ベームが第1番から第2番の間には大きな飛躍がある
と言い、そして一般的に多くの人が、第2番から第3番「英雄」の
間には、それまでとは(他の作曲家も含めて)次元の違う、
革命的な一大飛躍を成し遂げたとする歴史的な偉大な作品
だという見地に立つなら、
こうした古楽器を意識したピリオド奏法を踏まえた演奏は、
一見斬新で挑戦的に想えるが、
実はかえって「古臭い演奏」と言えるのだ。
全然新しくなどない。
こういう見識から、私は係る演奏スタイルを嫌う。

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第2楽章は速過ぎるということはなく、
唯一割と控えめなテンポでの丁寧な演奏。
ヴィブラートは極力排されていた。

第3楽章もとても速いテンポで、
それに応えるオケの力量は立派。
ヴィオラが「Es-As-F-B-G-C-As-B」と刻んでいく音が
とても良い音だった。
トリオでのホルンの吹かせ方~最初の2小節(だけ)を
たっぷりと間合いを保って広い空間を作るような演奏~が
面白かった。

アタッカで入った第4楽章も速いテンポ。
合奏力は見事だが、それ以上の魅力を私は感じなかった。
フルートソロのパッセージは上手かった。

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それでも3曲全てに言えるのは、先述のとおり、
演奏技術の高さ、優秀さで、幾つかの優秀なアマオケの
中の1つの地位を占めるオケ、と言えると思う。
弦楽器群の優秀さ、トロンボーンの優秀さ、
いや木管、金管のどのパートにおいても水準以上のレベル
にあると言ってよい。優れたアマオケだ。

今年9月に予定している、私も合唱で出させていただく
予定のマーラーの「千人」が楽しみだ。
http://tokyojuventus.com/

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