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2018年1月14日 (日)

幸田浩子さんのCD「優歌」(ゆうか)~そばにいるうた、よりそううた~空気と心を清め、胸を熱くしてくれる新譜

美しい日本語が空気を清める。聴き手を優しく熱く包み込む。
その意味においても、歌をジャンル分けすること自体、
そもそもおかしい。
あるいはまた、嬉しいときに聴くだけが歌ではない。
むしろ失恋や深い悲しみや孤独の絶望の中にあるときにこそ、
歌は人を勇気づける。歌は人生において重要な意味を持つ。

このことを鑑みても、歌手をジャンル分けすること自体も、
それほど意味があることとは想えない。

人によって励まされた泣きぬれた熱くなった歌や歌手は
様々なのは当然だ。ある人は歌謡曲であり、
ある人はオペラのアリアであり、ある人はシャンソン等々。

勇気づけられ感動したのはマリア・カラスの人もいれば
エディット・ピアフ、中島みゆき、安室奈美恵、椎名林檎、
藤圭子、ダイアナ・ロス等々いろいろだろう。

優れた歌はジャンルを隔てないし、ジャンルに優劣は無い。
優れた歌手もまたジャンルに留まらないし、
優劣を論じることに意味は無い。

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幸田浩子さんが今回J-POPを録音してリリースされたことも、
その意味では全く驚くことではない。

このアルバムは何より選曲が良い。
古くは1976年の「翳りゆく部屋」(荒井由美)から、
2014年作の「明日への手紙」(手嶌葵)まで、
時代範囲も広い。

幸田さんの寄稿によると、中島みゆきさんの「糸」を知った
ことがきっかけだったいう。
そのとき感じた想いを、多くの人と共有したい、
だから届けたい、として録音された。

きっかけが「糸」だったのは示唆的かもしれない。
AKBや三代目J Soul Brothersを好む若い人も「糸」には
魅せられるという。
名だたるオペラ歌手の幸田さんも「糸」に魅せられた。
この象徴的事象においても、歌や歌手のジャンル分け自体、
それほどの意味は持たないことを雄弁に物語っている。

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幸田さんの声は細く軽やかだが、聴き手を置き去りにして
そそくさと過ぎ去ることは決してない。それどころか、
その繊細な声の筋の1本1本が、聴き手の胸の細胞に
入り込み、心をグサッとわし掴みして離さない。
そういう強さのある声だが、むろん強圧的なものではなく、
自然にストレートに入り込んで聴き手の心を清め、
そして熱くする、そういう歌声だ。
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1曲ごとの感想を以下のとおり整理してみた。

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1「ハナミズキ」(一青窈)~編曲=内門卓也
美しい日本語の歌声が第1曲から広がり、胸に染み入り、
心が洗われ、感涙を禁じ得ない。
室内楽アンサンブルが素敵だ。終わり近く、
少しだけオペラティックな、クラシックな歌唱を入れるが、
最後は原曲を生かしてシンプルに終わるのも、
誠実さが感じられて良い。
・・・・・・・

2「LOVE LOVE LOVE」(DREAMS COME TRUE)
    ~編曲=Momo
大森康司さんのギターのみの伴奏というMomoさんの
編曲がシンプルで良い。
終わり近く「LOVE LOVE 愛を呼ぼう」では、二重録りと
オペラティックなオブリガートを交えて盛り上げてから、
最後は落ち着いたかたちで終える。
・・・・・・・

3「奇跡~大きな愛のように~」(さだまさし)~編曲=藤満健
この曲を選曲されたのは幸田さんの見識だ。
大きな広がりのある曲想に、幸田さんの清らかに広がる歌声が
よく合う。
まるで幸田さんのために作曲されたかのようにさえ感じる。
「あなたを守ってあげたい」の「を」の響きが感動的なまでに
美しい。この曲も室内楽的アンサンブルが良い。
低音のシンプルなリズムや移行も巧く効いている。
・・・・・・・・

4「for you…」(高橋真梨子)~編曲=藤満健
この曲の録音も嬉しい。清らか声が曲の奥にある感謝と
せつない悲しみと希望と愛がにじみ出る。
ロマンティックなピアノソロのみによる伴奏も良い。
最後のセンテンスでの「きっと」での幸田さんのロングトーンは
オペラ歌手ならではだ。これを目の前で聴かされたら、
全員スタンディングオベーションかもしれない。
シンプルなピアノ伴奏が良いが、
最後の主音のピッチが高いのが気になる。
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5「いい日旅立ち」(山口百恵)~編曲=藤満健
凍てる冬の雪景色の中に幸田さんの歌声が凛と響く。
「日本の」の「の」の高音が美しい。
ピアノ伴奏も熱くもあり、また控えでもあり、とても素晴らしい。
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6「糸」(中島みゆき)~編曲=藤満健
最初に書いたとおり、この曲を知ったことが、
このアルバムに至るきっかけだったという。
最後のセンテンスで、オペラティックで美しい編曲が入る。
ここは他の誰でもない幸田さんならではの良さ、
素晴らしさが発揮されるところだ。
この曲でもピアノソロのみよる誠実な和音進行が
シンプルで素敵だ。
ただこの曲も最後の音がやや高い気がする。
「for you…」程ではないが。録音上の問題かもしれない。
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7「たしかなこと」(小田和正)~編曲=Momo
この選曲は良い意味で意外。これを聴いて、
小田さんの恒例の「クリスマスの約束」に出て、
小田さんと共演して欲しい、そう強く想った。
アレンジはジャズ風。この曲でも終わり近くに
オペラティックな高音によるオブリガートが入り、美しい。
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8「グリーン・ティー・ファーム」(矢野顕子)~編曲=内門卓也
このアルバムの中で私が唯一知らなかった曲。
この選曲も幸田さんの見識の高さを感じる。
「ありがとう」という、一見、使われ過ぎとも捉えかねない言葉
が、この曲の中で素朴に歌われることで、
この単語がいかにたいせつな言葉かということを再発見する。
チェロのソロが美しい。ピアノソロも控えめに愛を添える。
抒情的という点では「明日への手紙」につながる。
素晴らしい選曲に感謝。
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9「もしもピアノが弾けたら」(西田敏行)~編曲=内門卓也
本当に良い曲。阿久悠さんの歌詞はそれほど好きでない
ものあるが、この歌詞は彼の作品の中では一番好きだ。
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10「明日への手紙」(手嶌葵)~編曲=Momo
この曲も選曲が嬉しい。幸田さんの新しいJ-POPへの
細心の留意(アンテナ)の幅広さを感じる。
Momoさんによる編曲と演奏のピアノソロのアレンジ、
和音が独特で、やや工夫し過ぎと感じなくもないのだが
 (素朴な主旋律とやや乖離感を覚えなくもない。
  寄り添い度が薄いかもしれない)、
それでも洒脱ではある。
最後の「進むの」をア・カペラで終えたのは素敵。
・・・・・・・・・・・

11「瞳がほほえむから」(今井美樹)~編曲=藤満健
懐かし曲。この曲でもピアノの素朴な伴奏を縫って
奏される独奏チェロのオブリガートが素敵だ。
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12「翳りゆく部屋」(荒井由美)~編曲=藤満健
この曲の選曲も見識だと思う。ユーミンについて私は
特別詳しくはないが、それでもこの初期の曲が
特別重要な位置にあるわけではないだろうと想像する。
しかし、幸田さんはこの曲を選んだ。
初心の気持ちで聴くと、その理由が解る気がする。
発声がクラシック歌唱であることで、
曲の清楚感が増すのが面白いし素敵なのだ。
最終のセンテンスでの「愛を遠ざけたの」の「の」の
ロングトーンの響きが素晴らしい。
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13「未来へ」(Kiroro)~編曲=内門卓也
アルバムを「ハナミズキ」で開始し、「未来へ」で閉じたのは
正解だと思う。中年の私にとってこの曲は特別重要な
位置にあるわけでないが、特に若い人向けの
メッセージソングとして、美しいソプラノで歌われた意義は
大きい。ピアノソロの編曲もシンプルで素敵だ。
・・・・・・・・・・・

終わりに
このCDのタイトルは「優歌」(ゆうか)。
優れた歌は、それ自体優れているが、
歌い手によって更にこれまでと違った色彩が加えられ、
引き立ち、今新しく生まれた歌となって聴き手を
優しく熱く包む。
録音とリリースは昨年だが、
私にとって新年最初のCD観賞がこのアルバムだった
ことは、このうえない幸せだ。
http://columbia.jp/koudahiroko/newrelease.html
http://columbia.jp/artist-info/koudahiroko/discography/COCQ-85388.html

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