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2017年10月 9日 (月)

ミサ・ソレムニス~明治学院バッハ・アカデミー

バッハ研究で有名な樋口隆一さんが2000年に
バッハ没後250年を記念して設立された
明治学院バッハ・アカデミー合唱団と同合奏団による
ベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」を9日夜、
サントリーホールで聴いた。

直接的には樋口先生と最近フェイスブックで知り合えたことと、
ソプラノソロで鷲尾麻衣さんが出演されるということは
あったが、なんと言っても偉大な曲だし、
CDでも最近は聴いておらず、ライブに至っては何年ぶりか
思い出せない位だから楽しみにしていた。
指揮は樋口隆一さんご自身。

曲はこの1曲だけで、「キリエ」と「グローリア」を演奏後、
休憩に入り、その後、「クレド」以下を演奏するというスタイル。

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冒頭からゆったりと一歩一歩落ち着いて堂々と歩む演奏だが、
オケは古楽器主体の室内管弦楽団だし、
合唱団もソプラノ20名、アルト13名、テノール9名、
バス18名の合計60名の合唱団だから、
演奏規模自体においても室内楽的な要素が主体となる演奏
になるが、それは単に人数的(規模的)な要因だけでなく、
樋口先生が丁寧で温かな質感をもってじっくりと創って
いった結果とも言えるだろう。

とはいえ、もちろんこの人数で、この曲を演奏するのは
相当な「冒険」でもある。
実際、前半の2曲、特にニ長調の壮大な「グローリア」では
合唱の声がオケに埋もれてしまう場面が散見された。

これは、合唱団の配置が通常の縦割りのパート配置ではなく、
前列にソプラノ、次いでアルト、テノール、最後列にバス
というように横一列の配置にしたことも関係はしたように想える。

樋口さんは音の広がり意識されたのかもしれないが、その分、
声の厚みは薄れた感じはした。
縦配置のほうが良かったとは言わないが、少なくとも
縦配置での演奏「も」聴いてみたかったと思うのが
正直な気持ち。
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それでも、長大な「クレド」の一部や、ヴァイオリン・ソロと
掛け合う「ベネディクトゥス」(サンクトゥス)~桐山さんの
ソロはとても良かった~最後の「アニュス・デイ」の多くの場面
では曲想自体に室内楽を志向する様な要素があるので、
そうした場面での合唱はとても美しく柔らかく響いていた。

ただ、全体としてはバスが(18人と人数比率が高いもかかわらず)
あまり聴こえてこなかったのは残念だったし、
ソプラノの発声も(横ならびの関係からか)個々の声の
立ち上がりの遅れが聴こえたり、
女声2部で「pacem」と降りて来るところ(「アニュス・デイ」の
135~138小節、同245~248小節)などは柔らかくて美しい
のだが、もう少し「芯」のある(良い意味での緊張感のある)声
のほうが望ましいと想えるなど、
発声において改善、向上の余地は多々あると感じた。

壮麗な威厳ある演奏を期待した人には違う色合いだった
だろうが、合唱において「室内楽的なミサ・ソレムニス」という
独特の良さが出た演奏だったと思う。
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ソロは皆さん良かったが、特にソプラノの鷲尾さんは
贔屓目抜きに、伸び伸びと輝かしいまでの声で
素晴らしかったし、大ベテランの寺谷さんの余裕ある声、
端正なエルウィスさん、風格ある河野さんなど、
個性がそのまま出た歌唱だった。

オケを対抗配置としたことのマイナス面は特に感じないだけでなく、
とても優秀なオケだと感心した。申し分ない演奏。
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それにしても何と言う曲だろう!
壮大さだけでなく、オケと合唱の兼ね合いにおける室内楽的要素、
木管における室内楽的要素、ティンパニの斬新な扱い、
金管も効果的に使うなど、ベートーヴェンは色々な場面で
「仕掛け」を作っている。
ある意味現代的とも言えるし、交響曲の書法というより、
晩年の弦楽四重奏の書法に似ているとも想える。

なんと言っても合唱の難しさは、当然ながら第九の合唱の
比ではなく、長大さだけでなく難易度においても
第九の百倍、いや500倍は難しいだろう。

第九とともに偉大な曲、というより、
第九とは別次元の偉大な曲、と言うべきかと思う。
いわば、別の山脈にある、それぞれの最高峰と言うべきか。

第九をたくさん振ったフルトヴェングラーでさえ、
「ミサ・ソレムニス」は極力避けていたと言われているが、
解る気がする。

この点からも、少人数での未だ歴史の浅い室内合唱団が
この曲に挑んだ意味は大きいし、何よりも団員自身が
多くの収穫、課題を得た演奏だったに違いないと想像する。
お疲れ様でした!

なお、終演後、楽屋におじゃまし、樋口先生にご挨拶し、
鷲尾さんとも挨拶して、ツーショット写真を撮らせていただいた
ほか、寺谷さんは、私が活動するオケが2006年に
第九を演奏した際、ソリストとして歌っていただいたので、
寺谷先生にその旨お伝えし、ご挨拶した次第。

あと、余談ですが、池辺晋一郎さんも来場されていた。
翌日、樋口さんから、「学生時代からの友人」と聞かされた。

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ソプラノ 鷲尾麻衣
メゾ・ソプラノ 寺谷千枝子
テノール ジョン・エルウィス
バリトン 河野克典
コンサートマスター 桐山建志

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