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2017年10月13日 (金)

田中彩子さん ソプラノリサイタル2107紀尾井

田中彩子さんソプラノリサイタル~ガラスの繊細さと無垢な羽

田中彩子さんは不思議な魅力を持った人だ。
声質が細く軽いので、1つのリサイタルで歌う曲数は少なめで、
声量が特別あるわけではないので劇的で長大なアリア等も
まず歌わない。
それでも着実に道を開きつつあり(それもウィーンで!)、
日本における3回目となるツァーでも人気上昇中なのは、
ある種典型的な稀なほどの美人ということだけではないと想う。

TBS「情熱大陸」が取り上げたことが
 ~ピアニスト反田恭平さんがそうだったように~
人気を大きく後押ししたことは確かだろうけれど。

12日夜、今年の国内ツァーの東京公演をこれまでと同じく
紀尾井ホールで聴いた。
今回は2枚目のCDリリースにもちなんでの
「美しきウィーンとコロラトゥーラ」と題したリサイタル。

前半は新CDのお披露目という内容だったが、
今回は特にそれとは無縁な後半の選曲が、
彼女の特性が良く出た個性的なプログラムで、
2年前の初回からピアノと進行役を務める作曲家の
加藤昌則(まさのり)さんによる編曲もステキで、
過去2回にも増して印象的なコンサートだった。

・・・・・・・・・・・
私は初回から紀尾井で聴いていて今回3年連続なので、
彼女の「トークの状況」はむろん承知済みが、
初めてライブを聴かれた方は、あのシャベリにさぞ驚くだろう。
了解済みのファンからすると、
「今初めて来場されたかたは、どう思っているのだろう?」
と心配になるほどの「不得手」さ。

加藤昌則さんによるフォローが無いと、進行自体が
危ぶまれるかもしれないスリル感?

内心、加藤さんに「あまりトークを交えないほうが良いのでは?」
と言いたくなる気持ちもある中、以前にも増して、
加藤さんは敢えてトークを増やしている感があり、それにより
田中さんも以前よりよく話すようになっている。

「危険なまでの?ギャップ」だが、今回は
最後の「春の声」が終わったときの大きな拍手と歓声、
アンコール後のカーテンコールでのそれ、そして
終演後のサイン会の行列を見て安心した。
老若男女、特に女性が多いのが良かった。
過去最多の行列。ファンを確実に増加させている。 

彼女のタドタドしい不得手なシャベリにさえ、聴衆には、
「都会の喧騒や汚れに染まっていない無垢さ」を見て取る
のかもしれないし、そうしたことさえ、結果として
聴衆に興味を持たせてしまう、不思議な魅力が彼女には有る。
正に「田中彩子ワールド全開のコンサート」。

男女を問わず「守ってあげたい系」と思わせてしまう、
ガラスのように繊細な声の歌姫。

それにトークが不得手と言っても、短い言葉ながら、
「ウィーンでは街路で演奏する人は多いが、全体として静か。
 日本のお店(例として某大手家電店の名を出してしまったが)
 のような音楽をかけたままの(うるさい)店は無い」、

「ウィーンの3拍子が均等でないのは踊る際の、
 ステップによる体重移動による(力点の移動による)
 3拍子だから」など、
本質を突いた発言はされていた。

・・・・・・・
ガラスの工芸品の様な繊細さ。
あるいは絹織物の様な佇(たたず)まい。
あるいは、フワフワと飛翔する羽毛のような自在さ、軽やかさ。

コロラトゥーラという技巧を凝らした歌と歌い回しで勝負している
のに、実は無垢なまでに自由で天衣無縫に歌うスタイル。

それでも今の時点の彼女の歌唱力(技術)を
「優秀な同業者」が聴いたら、
たぶん感想は「いろいろ」と想像できるが、
少なくとも彼女は、今抱えているであろう弱点も含めて、
それも自身の個性として自分を信じて歌っている、
ということが伝わってくる歌唱と言える。

敢えて体操競技に例えるなら、
彼女は「個人総合」の優勝を目指す歌手ではなく、
あくまでも「種目別」で勝負する歌手だと思う。
よって、個人総合的観点からの意見や批評は
彼女にはあまり当てはまらないだろう。

・・・・・・・・・・・
とはいえ、誰にでもあるだろう課題に今後向き合っていく場合、
ずっと今のスタイルで彼女が押し通して良いのか、
押し通して行けるのか、という問題は存在するだろう。
例えば(一般論)だけれども、中音域が多い曲をどう歌うか、
とか、声量を求められる曲をどう歌うか、等々、
今後、彼女が直面し、克服し、修得していくかもしれない
幾つかの点に関して、どう変わっていくか、
あるいは変わらない(部分を残したまま)で行くか、
想像すると興味は一層強まる。

加藤さんが明かした、新アルバムのレコーディングの際の
エピソードでの
「同じ曲でも繰り返しリハをすると、良い意味で
 毎回違うように歌う」として、
ピアニストに合わせることよりも、むしろその時々の
情感に任せて歌うスタンスが1つのヒントになるかも
しれないが、その点に関する変化の有無も含めて、
今後が楽しみだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・

終演後のサイン会は先述のとおり、過去2回以上の
多くの人がならんだ。
私は幸い田中さんとFBで友人になっていただいているので、
前回のとき、田中さんから「あっ」と気づいていただいたし、
今回も私を見るや「いつもどうも」という感じで挨拶を交わした。

1年に1回しかお会いしていないのに、
まるで月1回くらい会っているように接することができるのは
フェイスブックのおかげでもある。
FB恐るべし、FBありがたし、というところ。

なお、加藤さんには「漫才のようで面白かったです」と伝えた。
前後するが、前半で加藤さんがソロを演奏した
グアスタヴィーノのソナチネ第1楽章は、「枯葉」のような
哀愁感のあるカンツォーネ風のステキな曲だった。

・・・・・・・・・・・
曲目
1.モーツァルト「アヴェ・ヴェルム・コルプス」
2.J・シュトラウス2世「美しき青きドナウ」
3.フリース(伝モーツァルト)「子守歌」
4.モーツァルト「アレルヤ」(エクスルターテ・ユピラーテより)
5.ピアノ独奏 グアスタヴィーノ「ソナチネ」より第1楽章
5.シューベルト「アヴェ。マリア」
6.ロジャース「サウンド・オブ・ミュージック」
7.J・シュトラウス2世「ウィーンの森の物語」

(休憩)

8.ベートーヴェン「豊穣の夢~エリーゼのためにより~」
9.アリャビエフ「夜鳴うぐいす」
10.モシュコフスキ「愛しの小さな夜鳴うぐいす」
11.パガニーニ「カプリース第24番」
12.パガニーニ「愛しき人よ」(ヴァイオリン協奏曲第24番第2楽章より)
13.J・シュトラウス2世「春の声」
アンコール「エーデルワイス」(日本語)
http://j-two.co.jp/ayakotanaka/archives/708
http://j-two.co.jp/ayakotanaka/

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