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2017年9月 1日 (金)

青山 貴さん 独演コンサート

青山 貴さん~独演コンサート~ユニークなプログラム
9月1日の夜は、人気バリトン歌手青山 貴(たかし)さんが
日本声楽家協会主催のシリーズ企画「独演コンサート」
に初登場されたので拝聴した。
ピアノは高田絢子(あやこ)さん。
会場はいつもの日暮里サニーホール(コンサートサロン)。

プログラムを見て直ぐに気付くのは「海」をテーマ、あるいは
それに関係する歌をメインとしていることと、
言語だけだと日本語、フランス語、イタリア語、ドイツ語に加え、
なんと韓国語の歌も交えたユニークな構成によるものだった。

青山さんも(後述のとおり)プログラム曲終了後
(アンコール前)の短めなトークの中で、
「最後のワーグナー以外は、初めて歌う曲を揃えました」
とのとおり、チャレンジングな選曲が素敵だった。

第1部
1.別宮貞雄作曲「海四章」(詩=三好達治)
 (1)馬車 (2)蟬 (3)沙上 (4)わが耳は

2.フォーレ 「幻想の水平線」
 (1)海は果てしなく(2)私は乗った(3)ディアーヌよ、セレネよ
 (4)船たちよ、我々はお前たちを

3.ヒョン・ジェミョン作曲「希望の国へ」(ヒマンエ ナラロ)

4.韓国民謡「舟歌」(ベンノレ)

  (休憩)

第2部
5.チマーラ作曲 (1)海のストルネッロ (2)海辺の光景

6.ポンキエルリ作曲「歌劇ジョコンダ」より
     「漁師よ、お前の餌をう沈めるが良い」

7.ワーグナー作曲「歌劇さまよえるオランダ人」より
     「期限は切れた」~オランダ人のモノローグ

アンコール
中山晋平作曲「鉾をおさめよ」
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1曲目の別宮さんの曲は、1947年作ということも関係
してか、全体に沈鬱な孤独感、哀愁感を漂わせた曲で、
ピアノは特別変わった音(和音等)はあまりないのだが、
歌の旋律はまるでピアノの流れ、音型とは独立しているかの
ような別の音楽の世界を歩む感じがして、
「歌うのには難しい曲(集)だろうな」と想像した。
むろん青山さんは丁寧で端正な誠実な歌唱で抒情的な
世界を示した。

2曲目のフォーレも全体としては抒情的な詩的な歌で、
フランス語特有の柔らかさがそれを特に印象づけた。

そしてこの日、最初に客席を大いに沸かせたのが韓国語による
「希望の国」で、軽快なテンポによる愉快な歌で面白かったし、
続く「舟歌」は雄大な曲想で、素敵な曲だった。

「北」だけでなく、政治的には日韓はまだまだ前途多難な
問題を抱えたままだが、また、青山さんはそのような状況を
考慮して選んだわけではないだろうが、結果的に、
言葉が解らなくとも(歌詞の大意は用意されていた)
音楽だけの力で、民族や国家間の問題を越えて
心が容易に結びつくことをあらためて如実に証明する
幸福な提示だったと思う。

考えてみれば、韓国ではつい最近まで国民が
「日本語の歌を聴くことを禁じられていた」わけだし、
日本でも「冬のソナタ」放送以前は、「アリラン」他
ごくわずかの韓国(朝鮮民族)の歌しか知らないできたわけ
だから、こうした今回の青山さんの試みは、
本人の意思を越えて、とても素晴らしいことをしてくれたのだ、
とも言えると思う。
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声量の全開という点では正に後半第2部が冒頭から
そうだった。声量の豊かさだけでなく、
青山さんの声はまるで体躯のように、丸みがあって
温かな柔和さがある声だ。
鋭角的ではなく、もたれるほどの重々しさもない。
ダンディで優しい声。しかも声量も素晴らしい。

チマーラの2曲でそれを示し、ポンキエルリの曲では
愉快なドラマ性も提示して聴衆を楽しませた。

そして最後は、「オランダ人」。
あの堂々たるヴォータンを彷彿とさせる威厳ある低音
により、実力を如何なく発揮された。
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ここまで、「もう1つの期待、楽しみ?」である、
青山さんのユーモラスなMCはとうとう封印されたまま
だった。
笑顔全開のユーモラスなトークは、全プログラムが終わって
アンコールに入る前の少しだけだったことからも、
それだけ歌に集中したい、という思いが伝わってきた。

それでも、
「9月1日はまだ暑いだろうと思い、海にちなむ歌で
 涼しくなっていただけたら、と思ったら、
 今日はとても涼しく~」
と笑わせてから、アンコールの「鉾をおさめよ」では
聴衆の手拍子も交えながら、勢いの良いお祭り風の
メロディとリズムに乗って、
いわば「やんちゃ」な気取らない笑顔を歌唱という、
青山さんの持つ真骨頂(かもしれない)の面を示したし、
これは4の曲とも相通じる曲想でもあって面白かった。

アンコール曲終了後も聴衆の大きな拍手は手拍子に
変わってまで継続されたが、2回目のカーテンコールで、
「すみません、アンコールは1曲しか用意しておらず
 (会場、爆笑)」と「告白」され、楽しいコンサートが
終了した。
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ピアノの高田絢子さんは申し分ない演奏で見事。
以前も書いたが、優秀な歌手の増加に伴うかのように、
歌手たちに負けじと、いわゆるコンサートピアニストだけでなく、
優れたコレペティトゥールの資質を持つ優秀な奏者が
どんどん増えていようで、
これは日本の音楽界全体の底上げを象徴している事でもある
と思う。

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