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2017年7月31日 (月)

OPERA MANIA 2 ~ベルカントからR・シュトラウスまで

フランコ酒井さんが代表を務める「杉並リリカ」主催の
「OPERAMANIA 2」を杉並公会堂で聴いた。
昨年も4時間近くかかる大イベントコンサートだったが、
今年はそれを上回り、3回の休憩を含めて6時間40分に
及んだ。
15時~21時40分。さすがに長過ぎる。
4部構成だが2部が終わった段階で帰った人も2割はいた。

それでも18人の歌手によるソロと重唱を含めた全46曲は
名唱の連続であったのも事実なので、要点的な感想は
書いてみたい。

フランコ酒井さんが代表を務める「杉並リリカ」よる
コンサートは2014年10月26日の立ち上げコンサートを
皮切りに、杉並公会堂を拠点に同年11月14日、
2015年7月19日、11月22日、2016年9月25日と継続し、
今回が6回目。私自身は昨年に続き2回目の拝聴。

今回は「ベルカントからリヒャルト・シュトラウスまで」と題し、
副題としては「マリア・カラス没後40年、
        マリオ・デル・モナコ没後35年、
        エットレ・バスティアニーニ没後50年」と
題された。

以下、記載の構成は、

1.全出演者一覧
2.トピックス的に先んじて3名についての感想
3.全員について、各歌手が歌った複数の曲(ソロ、重唱を
   問わず)の内、特に印象的だった曲を極力1曲ないし
   2曲か3曲の感想
4.最後にご参考として全演目を記載、

という構成としたい。

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1.全出演者一覧・・・総勢、歌手18名、ピアニスト2名
  ソプラノ7名(五十音順、敬称略。以下同じ)
  青木エマ、石原妙子、板波利加、岡田 愛、大隅智佳子、
  岸七美子、山口安紀子

  メゾ・ソプラノ2名
  鳥木弥生、中島郁子

  テノール7名
  及川尚志、小笠原一規、小野弘晴、塩塚隆則、城 宏憲、
  笛田博昭、藤田卓也

  バリトン2名
  木村 聡、山口邦明

  ピアニスト2名
  服部容子、藤原藍子

司会進行(兼)曲の解説・・・フランコ酒井

・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.トピックス的に先んじて3名についての感想

 (1)岸七美子さん
この日、私にとって最大の「発見」、すなわち初めて聴いた
歌手でまず言及しなければならない人が、
ソプラノの岸 七美子(なみこ)さんだ。
まだ若いと想うがその実力に驚いた。コントロールの巧みさ、
声量、表現力、加えて個性的なトーンを持つ。
現在、トリエステ国立歌劇場に所属というから、
日本で歌う機会は今のところ少ないのだろうが、
外見的にも可愛いらしく、遠からず日本で人気歌手になるに
違いないと想像する。

岸さんが歌った曲はソロも重唱もどれも素晴らしかったので
とても絞り込めない。「恋は薔薇色の翼に乗って」で圧倒
され、第3部での四重唱「もう道化師じゃない」の中でも
際立っていたし、第4部での「可愛い瞳の少女」では
藤田さんともども素晴らしいデュオを聴かせてくれた。

稀なほどの逸材だと強く感じ入った。
今後が本当に楽しみだ。
・・・・・・・・・・・・・

 (2)青木エマさん
青木エマさんは、たびたびオペラで拝聴してきた他、
今年4月12日には日本声楽家協会主催のシリーズ企画
「独演コンサート」でリサイタルを聴かせていただき、
十分魅力は感じたが、そのときは多少の緊張もあってか、
曲によってはフレージングが硬くなる場面も感じたが、
この日は遅い出番にもかかわらず、伸び伸びと歌われた。
「私の名はミミ」での清冽さ、とりわけ小笠原さんとのデュオ
が魅力的だったし、
第4部での「何を恐れることがありましょう」でのスケール感
と抒情性が見事だし、スタイルの良さ、美形という
外見的要素も含めて「稀なくらいスター性十分な歌手」
という印象を強めた。

4月にもそれは感じたが、この日の堂々たるステージで、
その印象は決定的。
今後は適役にめぐまれるチャンスを得るか次第だろう。

・・・・・・・・・・・・・

 (3)岡田愛さん
フェイスブック「クラシックを聴こう!」の会員でもある現在、
東京芸大の大学院生、ソプラノの岡田愛さんが
「新人紹介コーナー」で紹介された。それに先立ち、
私は第1部終了後の休憩時間に通路で、岡田さんのほうから
「いつもフェイスブックを拝見しています」と挨拶を受けて恐縮
したのだが、そのときはとても落ち着いた声だったので、
 (その後に歌う)歌もそういう声を想像したのだが、
それは良い意味で違った。

1曲目の「私のお父さん」からすぐ感じたが、とても軽やかで
ピュアな声なのだ。
この曲は丁寧に歌うことに専念されたようで、感情移入は
少なかったように想えたが、オペラ公演での中だったら、
もちろんもっと役のキャラクターに入り込んで歌われた
ことだろう。
2曲目のR・シュトラウスの「朝の歌」は、清らかさに徹して、
シュトラウスの抒情性がよく出ていたし、
3曲目の「初恋」は特に私には魅了された。
控え目な表現の中に、瑞々しさと懐かしさを感じさせる
清らかさは、今後十分彼女の「個性」「特徴、特性」として
伸びて行く要素ではないかと強く感じた。
今後に期待したい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.全員について、各歌手が歌った複数の曲
  (ソロ、重唱を問わず)の内、特に印象的だった曲を
   極力1曲ないし2曲か3曲の感想

 既に2で書いた3人を除いた皆さんについて、
 女性→男性(いずれも五十音順)で記す。


石原妙子さん
石原さんは第2部の「おお、わが故郷」が特に魅力的だった。

・・・・・・・・
板波利加さん
外見のイメージとは違ってハデさよりも、むしろ独特の、
メゾに似た憂いあるトーンと、大人な表現力が魅力的。
第2部の「世の虚しさを知る神」も魅力的だったが、
何と言っても「大トリ」で歌った「ひとりぼっちだ」が
素晴らしかった。ベテランに属する人だと思うが、
いつまでも魅力的な歌唱を披露されてステキだ。
・・・・・・・・

大隅智佳子さん
大隅さんの実力は凄い。コントロール、声量、表現力とも
圧倒的な歌声で、林正子さんとともに、
今や日本人歌手屈指の、最高レベルにいる1人だと思う。
この日も第1部2曲目の三重唱でも大隅さんがひときわ
見事だったが、なんと言ってもラストから2番目に歌われた
長大なサロメのフィナーレが圧巻だった。
・・・・・・・・

山口安紀子さん
山口さんも絶好調で素晴らしかった。
初めて聴いたとしたら、2のトピックスに入れて先んじて
書くほどだが、昨年聴いているので力量は承知して
いたので2に入れなかっただけ。
それでもこの日は一段と声に気品と強さがあり、
更に実力をアップされたのだと強く感じた。
第1部での「あの花を摘み取って」がステキだったし、
第3部での塩塚さんとのデュオも見事。そして
第4部最初の「歌に生き、愛に生き」も素晴らしかった。
・・・・・・・・

鳥木弥生さん
第4部にやっと登場された鳥木さんの「ハバネラ」は
何度も聴かせていただいているので、この日はむしろ
城さんとのデュオ「カスタネットの歌」「花の歌」が魅力的
だったし、圧巻はなんと言っても笛田さんとの
カルメンの終りの場面のデュオ「あなたね? 僕だ」。
実力者同士による名演。
・・・・・・・・

中島郁子さん
中島さんも色々な場面で聴かせてきていただいた歌手で、
本当に凄い実力のあるメゾ。
深々とした、しかも声量豊かな声。好きなメゾの1人だ。
第1部での城さんとのデュオがまず素晴らしく、
第2部での「呪わしき美貌」が圧巻だった。
・・・・・・・・

及川尚志さん
体格のイメージと違って細めの性質で個性ある声。
第2部での木村聡さんとの「神かけて誓う」が見事。
・・・・・・・・

小笠原一規さん
昨年聴いて驚いた才能。この日の冒頭を飾った
「やさしい魂よ」も迫力があったが、むしろ第3部での
青木エマさんとの「愛らしい乙女よ」のアンサンブルの
見事さと、第4部でのソロ「清らかな住まい」の文字通り
清らかな抒情性にこそ、この日の小笠原さんの良さが
強く出ていたと思う。
・・・・・・・・

小野弘晴さん
この日初めて聴いた歌手。第3部での「幸せな日に戻り」
が良かった。
・・・・・・・・

塩塚隆明さん
塩塚さんも初めて聴いた。
爽やかに「ある日青空を眺めて」を歌われた。
・・・・・・・・

城 宏憲さん
今や、売れっ子テナーの一人。
第1部での中島さんとのデュオがまず見事だったし、
第4部での鳥木さんとのデュオも素晴らしかった。
・・・・・・・・

笛田博昭
笛田さんも城さんにも増してと言えるくらい、ここ数年で
名を挙げてこられたテナー。声量、色気、余裕の
いずれも素晴らしく、今や西村悟さんとともに、
若手期待の逸材。
第2部での三重唱での際立ち、岸さんとの二重唱でも
見事な歌声を披露。
そして何と言っても鳥木さんのところでも書いた第4部
でのカルメンのラストの二重唱が圧巻だった。
・・・・・・・・

藤田卓也さん
昨年もこのコンサートで聴いているのだが、そのときは
あまり強い印象を受けなかったようにも想えたが、
今年7月の砂川涼子さんのリサイタル終了後のサイン会時に
購入した藤原歌劇団員によるCDを聴いて、
「素晴らしいテナー」と「発見」したのが、
他ならぬこの藤田さんだった。
この日は第1部でのソロ「永久に君を失えば」と第3部での
「冷たい手を」のソフトな美声に魅了されたし、
第4部の岸さんとのデュオも嫉妬感を覚えるほどに
素晴らしかった。
・・・・・・・・

木村聡さん
木村さんも初めて聴き、トピックスに入れてもよかったと
思うほど、素晴らしさに感じ入った人。
私にとって木村さんも「この日の発見」の歌手。
第1部での「お前の名誉を汚すもの」でまず魅せられ、
第2部での及川さんとのデュオ、特に
「アルアヴァーロよ隠れてもダメだ」が見事。
とても良い声。とても良いテナー。
・・・・・・・・

山口邦明さん
前回聴いて感心したので、そういう意味では特別
驚きはなかったが、第3部での「祖国の敵」が良かった。
・・・・・・・・

以上の2と3で、18人全員の歌唱に触れさせていただいたが、
最後に、この長大なプログラムを2人だけで交代で演奏した
ピアニストの服部容子さんと藤原藍子さんに心からの
労(ねぎら)いの敬意と拍手を送りたい。

・・・・・・・・・
なお、プログラムには、高島勝治さんが、
「バスティアニーニ、カラス、デル・モナコの思い出」として、
それぞれが来日時に撮影された貴重な写真と思い出が
語られており、昔からこうした「追っかけ的大ファン」は
いたんだと、その熱情、行動力に感心するとともに、
写真撮影に快く応じたバスティアニーニ、
デル・モナコの気さくな人柄、
こっそり撮ってた写真を渡したらとても喜んだというカラスの
柔軟な人柄にも強く感じ入った。
・・・・・・・・・・・・・

4.全演目

第1部
1.ドニゼッティ『ラ・ファヴォリータ』より「やさしい魂よ」
      ~小笠原一規
2.ベッリーニ『ノルマ』より
   「ああ、震えるのではない 邪悪な者め」
       ~大隅智佳子、中島郁子、城宏憲
3.ヴェルディ『エルナーニ』より
   「エルナーニ、いっしょに逃げて」~石原妙子

4.ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』より
   「恋は薔薇色の翼に乗って」~岸七尾子

5.ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』より
   「それでは私は貴女の息子ではないのか」
      ~中島郁子、城宏憲
6.ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』より「聞いているか?」
      ~岸七尾子、山口邦明

7.ヴェルディ『仮面舞踏会』より
    「あの花を摘み取って」~山口安紀子

8.ヴェルディ『仮面舞踏会』より
    「永久に君を失えば」~藤田卓也

9.ヴェルディ『仮面舞踏会』より
    「お前こそ名誉を汚すもの」~木村聡

10.ヴェルディ『仮面舞踏会』より
    「私が貴女と一緒だ」~藤田卓也、山口安紀子

 (休憩)

第2部~オール・ヴェルディ

11.『運命の力』より「アルヴァーロよ、隠れてもダメだ」
    ~及川尚志、木村聡
12.『ドン・カルロ』より「お願いがあってやって参りました」
    ~板波利加、城宏憲
13.『ドン・カルロ』より「呪わしき美貌」~中島郁子

14.『ドン・カルロ』より「別れの日は来た」~山口邦明

15.『ドン・カルロ』より「世の虚しさを知る神」~板波利加

16.『椿姫』より「過ぎ去りし日々よさらば」~大隅智佳子

17.『アイーダ』より「ああ、わが故郷」~石原妙子

18.『アイーダ』より「すでに神官たちが待っている」
     ~及川尚志、中島郁子

19.『アイーダ』より「地上よ、さらば」
     ~笛田博昭、石原妙子、中島郁子

20.『オッテロ』より「神かけて誓う」~及川尚志、木村聡

21.『イル・トロヴァトーレ』より「貴女こそ私の恋人」
     ~笛田博昭、岸七美子

 (休憩)

第3部
22.レオンカヴァッロ『道化師』より「プロローグ」~木村聡

23.レオンカヴァッロ『道化師』より「衣装を着けろ」
     ~及川尚志

24.レオンカヴァッロ『道化師』より「もう道化師じゃない」
     ~小野弘晴、岸七美子、木村聡、山口邦明

25.ジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』より
      「ある日青空を眺めて」~塩塚隆則

26.ジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』より
     「祖国の敵」~山口邦明

27.ジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』より「胸像はそこね」
     ~塩塚隆則、山口安紀子

・・・・・・・・・
新人紹介コーナー~岡田愛
28.プッチーニ『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父さん」
29.R・シュトラウス「明日の歌」
30.越谷達之助「初恋」
・・・・・・・

31.プッチーニ『妖精ヴィッリ』より「幸せな日に戻り」
    ~小野弘晴

32.プッチーニ『ラ・ボエーム』より「冷たい手を」
    ~藤田卓也

33.プッチーニ『ラ・ボエーム』より「私の名はミミ」
    ~青木エマ

34.プッチーニ『ラ・ボエーム』より「愛らしい乙女よ」
    ~小笠原一規、青木エマ

 (休憩)

第4部
35.プッチーニ『トスカ』より「歌に生き、愛に生き」
    ~山口安紀子

36.プッチーニ『トスカ』より「星は光りぬ」~城宏憲

37.プッチーニ『蝶々夫人』より「可愛い瞳の少女」
    ~岸七美子、藤田卓也

38.ビゼー『カルメン』より「ハバネラ」~鳥木弥生

39.ビゼー『カルメン』より「母親の事を話してくれ」
     ~笛田博昭、青木エマ

40.ビゼー『カルメン』より「闘牛士の歌」~山口邦明

41.ビゼー『カルメン』より「カスタネットの歌」「花の歌」
     ~城宏憲、鳥木弥生

42.ビゼー『カルメン』より「何を恐れることがありましょう」
     ~青木エマ

43.ビゼー『カルメン』より「あなたね? 僕だ」
    ~鳥木弥生、笛田博昭

44.グノー『ファウスト』より「清らかな住まい
    ~小笠原一規

45.R・シュトラウス『サロメ』よりフィナーレ
    ~大隅智佳子

46.R・シュトラウス『エレクトラ』よりひとりぼっちだ
    ~板波利加

以上。
全員によるアンコールも予定されていたが時間の関係で
カットされた。

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