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2017年2月17日 (金)

新倉瞳さんCDリリース記念+朝倉侑子さん   黛敏郎の作品に力量を発揮

17日、チェロの新倉瞳さんが、新譜CDリリース記念の
リサイタルをCDと同じ「祈り」という副題で
HAKUJUホールで行った。

伴奏はピアノではなく、CDと同じハープの朝永侑子さん
との共演で、彼女と新倉さんは桐朋学園時代からの「心友」
という。

新倉さんは2010年からチューリッヒを拠点としているが、
朝永さんは桐朋学園大学卒業後はロンドンの英国国立音楽院で
学び、同時にロンドン大学で学位を取得。
その後、モスクワのグネーシン音楽院で学び、
昨年からはメルボルンに住んでいるとのことで、本人いわく
「長崎の田舎の、特に音楽環境は無かった家庭で育ち」
のわりには、小学生時代に既にハープのレッスンで
度々東京に通ったというから、大変アクティブな人だ。

見た目は失礼ながら日焼けしたヤンキー風?
(オーストラリアは夏で、出て来る直前も36℃の
 気温だったということもある)の気さくな感じだが、
ハープおよびその努力家の姿勢に驚く。

前置きが長くなったが、新倉さんは、昨年デビュー10周年を
迎えた。今回のCDは久々の小品集ということで、
この日も1曲目を演奏後、マイクを手にし語った中で、
「小品集というのは個々短い曲が多くても作曲家が
 異なることもあり、リサイタルではソナタを軸に置いた
 構成とすることが多いが、
 それは小品集でのプログラムは結構組み難いこともある
 から」、という主旨の発言があり、
なるほどなと思った次第。
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演奏曲は以下のとおりだが、CDから選ばれた前半では、
知らない曲が特に面白かった。
1曲目はベルギーのハープ奏者による曲で、
数少ないチェロとハープのための作品。
素朴な旋律ながらハープとのからみが美しい曲。

「黒鳥の歌」は哀愁のある美しい曲で、黒というより
色彩も感じられる素敵な曲だったし、
ベルトミューの3曲も、どれも優雅で抒情的な美しい曲だった。

なお、「白鳥」は速めのテンポということもあって、
優雅なプリンセスというより、凛としたプリンスの舞を連想
する演奏だった。
そのアプローチはカッシーニや前半最後の「ラルゴ」にも
感じた。

そのカッシーニは、アヴェ・マリアの中では
新倉さんが一番好きな曲とのことだが、本当の作曲者は、
旧ソ連の音楽家ウラディーミル・ヴァヴィロフ作曲の歌曲
という(CD解説より)。

シューベルトの「アヴェ・マリア」について、
新倉さんがプログラムに寄せた文の中で
「冬の旅に通じるものを感じている」
と述べているのが興味深い。
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前半は技巧的に難易度の高い作品は少なかったことや、
敢えてラフに弾こうとされたせいか、
部分的にはスッキリし過ぎ感も感じたのに対し、
後半こそ聴きものだった。

思うに、プロレベルの優秀なアマチュア奏者は器楽には
多々いるし、オケだってあるけれど、
それでもプロとアマで大きく違いを感じるのは
現代作品を演奏したときだ。

奏者であってもオケであっても、現代曲の演奏レベル、
完成度こそ、プロ奏者のプロたる力量の証明となると想う。

この日の新倉さん単独による黛敏郎の「BUNRAKU」、
朝永さん単独による同「ROKUDAN」のいずれも
技巧的にも大変難しく、黛敏郎の優れた作曲技法を
あらためて思い知らされたし、
演奏も「これぞプロの演奏」というものだった。
お2人ともお見事。

なお、会場にはこの2曲それぞれの初演者で、
かつそれぞれ2人の師匠でもあるチェロの堤剛さんと
ハープの篠﨑史子さんも来場されていた。
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アンコール1曲目のピアソラの曲は以前は「アヴェ・マリア」
とされていたが、映画「エンリコ四世」に起用される際、
この「昔々」を意味するタイトルに変えられたとのことで
 (CD解説より)、抒情的な美しい曲。
2曲目もヴィブラートを抑えて淡々と素朴に弾く事で、
曲線の美しさを出していた。
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今回リリースされたCDは前半とアンコールの曲の他にも、
あまり演奏されないパルムグレンの「白鳥」や、
ペルトの「鏡に中の鏡」といういかにもペルトらしい静けさを
基調とした珍しい作品などを含め、
合計18曲も収められた充実の内容だ。

小品集はついつい聴く側も軽く受け止めてしまいがちだが、
選曲においてもこれほど充実した内容は決して多くない
という点からも、お薦めしたい。
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終演後のCDサイン会はたくさんの人が列を作った。
HUKUJUのロビーは狭いので、サイン会が行われる場合、
満杯になり易いが、それでも出入り口を出て上階に行く階段
にまでならんでいたので、とても驚いた。

私は朝永さんには
 「ROKUDAN、良かったです。これからもどんどん弾かれると
  いいと思います』と言うと、
とても喜ばれたようで
 「(曲を)広めていきます」と応えてくれた。

新倉さんにも
 「BUNRAKU、良かったです」というと
 「良かったぁ」とホッとされたような表情で応じてくれたのが
印象的だった。

(前半)
1.アッセルマン「チェロとハープのためのコンフィデンス」
2.サン=サーンス「白鳥」
3.ヴィラ=ロボス「黒鳥の歌」
4.カッチーニ「アヴェ・マリア」
5.シューベルト「アヴェ・マリア」
6.ベルトミュー「5つのニュアンス」より1哀愁、3のどか、5甘く
7.ヘンデル「ラルゴ」(オンブラ・マイ・フ)

(休憩後の後半)

8.黛 敏郎「BUNRAKU」~無伴奏チェロ曲
9.黛 敏郎「ROKUDAN」~ハープソロ曲
10.ピアソラ「タンゴの歴史」より
1.Bordel 1900 2.Cafe 1930 3.Night-Club 1960

アンコール
1.ピアソラ「マリア=タンティ・アンニ・プリマ」(アヴェ・マリア)
2.バッハ「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」
https://spice.eplus.jp/articles/102717

CD
https://www.amazon.co.jp/%E6%96%B0%E5%80%89%E7%9E%B3-%E7%A5%88%E3%82%8A%E3%80%9C%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%81%A8%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%97%E7%8F%A0%E7%8E%89%E3%81%AE%E5%90%8D%E6%9B%B2%E9%9B%86/dp/B01N33FGC6

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