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2016年10月25日 (火)

与那城 敬さん バリトンリサイタル

わくわくするコンサートだった。
バリトン歌手の与那城敬さんのリサイタルを
ルーテル市ヶ谷で聴いた。

前半はイタリア語でもドイツ語でもなく、英語による歌曲で、
私は詳しくないし、クィルターは彼の研究者でもある
澤江衣里さんの歌唱で数曲聴いているが、
ヴォーン・ウィリアムズの歌曲は初めて聴いた。

なんと瑞々しく新鮮な歌曲だろう。
詩はルイス・スティーヴンスンという人で、下記に記したとおり
個々のタイトルからしてロマンティックで、クィルターが
選んだシェイクスピアの詩にも負けないほどの潤いを感じた。

クィルターとヴォーン・ウィリアムズの作品に共通して
いたのは、青年が旅の中で歓喜し、憧れ、悩み、
自分を鼓舞する若々しいエネルギーで、
いわば恋心を基盤としたものと感じた。

与那城さんはそれを余すところなく、表情豊かに伝えてくれた。
格調の高さはいつものことだが、加えてクールさよりも
情感豊かに、ときに激しく、強弱メリハリを自在に
徹底して表現するという果敢さがあった。

若々しい情感を堅固な技術で表現しただけでなく、
言葉自体に「柔らかさ」と「温かさ」が終始一貫して
在ったのは、英語という言語と関係していると思う。

そして「英語による歌曲は素敵だ」と思わせてくれたのは、
与那城さんの発音が極めて明瞭であったことによる。

ソプラノやメゾ、テナーだけでなく、ポップス歌手も含めて、
これほど明瞭な英語の歌を聴いた記憶はあまりない、
そう言いたいほど優れた発音だった。

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そして後半は、期待に違わぬマーラーの歌唱だった。
前半とは一転してドイツ語の歌唱ゆえ、
鋭さと一層の迫力が加わった。

「角笛」でのリズムとたたみかけ、
「リュッケルト」での抒情性、と、
それぞれ1曲ごとの色分け歌い分けも見事。

プログラム全体の構成としても、前半の曲と「角笛」は
概ねリズミックで躍動感と流動感ある歌が多かったが、
最後の「リュッケルト」では5曲中4曲は「しっとり」系
の、いわばバラード系の歌なので、
その配合、構成の妙も素敵だった。

前半の曲と、後半の特に「リュッケルト」は、
物語を正に「語る」ことに徹し、いわば、
「物語の主人公と一体となって表現した」を歌唱
だったと思う。
魅力的な歌手による魅力的なコンサートだった。

ピアノは山口陽子さんで、音の凝縮力というか集中力の
あるダイナミックな演奏で、とても素晴らしい演奏だった。

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曲は以下のとおり

1.ロジャー・クィルター
 シェイクスピアの詩による3つの歌 Op.6
 (1)来たれ、死よ
 (2)おお、僕の恋人
 (3)吹け、冬の風よ

2.ヴォーン・ウィリアムズ 歌曲集「旅の歌」
 (1)放浪者
 (2)美しい人を目覚めさせよ
 (3)道端の火
 (4)青春と愛
 (5)夢の中で
 (6)無限に輝く天空
 (7)私はどこへさすらうか
 (8)言葉の響きは明るく
 (9)のぼり坂もくだり坂も踏みしめて

(休憩)

3.マーラー「少年の不思議な角笛」より
 (1)塔に囚われた迫害を受けし者
 (2)誰がこの唄を思いついたの?!
 (3)起床合図

4.マーラー リュッケルトの詩による5つの歌
 (1)私はほのかな香りをかいだ
 (2)美しさゆえに愛するなら
 (3)私の歌の中を覗かないで
 (4)真夜中に
 (5)私はこの世に忘れ去られた

アンコール
 マーラー「少年の不思議な角笛」より離別
http://www.nikikai.net/concert/pdf/161025yonashiro.pdf

なお、楽譜は「角笛」のときのみ見ながらの歌唱で、
あとは暗譜で歌われた。

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