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2016年7月17日 (日)

二期会 フィガロの結婚~黒田博組

二期会「フィガロの結婚」のダブルキャストの両組を観、聴いた。
まず、主な出演者、関係者

指揮  サッシャ・ゲッツェル

管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

合唱  二期会合唱団

演出  宮本亜門

装置  ニール・パテル

衣装  前田文子

            15(金)、17(日)  16(土)、18(月・祝)

アルマヴィーヴァ伯爵  小森輝彦       与那城 敬
伯爵夫人         大村博美       増田のり子
ケルビーノ         小林由佳       青木エマ
フィガロ          黒田 博         萩原 潤
スザンナ          嘉目真木子      髙橋 維
バルトロ          妻屋秀和       長谷川 顕
マルツェリーナ      押見朋子        石井 藍
バジリオ          高橋 淳         高田正人
ドン・クルツィオ      渡邉公威        升島唯博
アントニオ         鹿野由之        畠山 茂
バルバリーナ      盛田麻央        全 詠玉
花娘1           藤原 唯         辰巳真理恵
花娘2           宍戸茉莉衣      加藤早紀


1.作品へのあらためての感想
仮に~歌手の皆さんに感心しながらも~第1幕と2幕の内容のバカバカしさに辟易したとしても、第3幕での伯爵夫人の独唱を聴き、「ああ、素晴らしい曲。このオペラに来て本当に良かった」と感じ入ることになる。

ハ長調の、一見小学生でも書けそうなこのアリアの気品と神々しさ。このオペラ全体の音楽的な頂点は正にこの奇跡のようなアリアにある。
大村さんの歌唱は素晴らしく、この日1番の大きな拍手と歓声を受けたのは当然。

このアリアで作品全体が浄化されるが、前後にはドタバタを置くしたたかな設定がなされている。
管弦楽と重唱の1つのピークは第2幕のエンドに向かう七重唱にあるし、前述の第3幕をもってこの作品を終わらせることもできたかもしれないが、そこはモーツァルト。

第4幕ではそのアリアだけ聴けば脇役とはとても思えないへ短調の優れたアリアをバルバリーナが歌い、フィガロのソロ、スザンナのソロ、2人のデュオ、そして最後は再度伯爵夫人が際立つ場面が設定されて終わる。
内容のバカバカしさに反比例した珠玉の音楽が続くのだ。

第4幕では、第1幕と第2幕のドタバタ要素だけでなく、力感あるドラマと音楽による展開には、いわば形而上学的なまでの内的な説得力を有するものとして提示される。

最後に至る場面などを見ると、「フィガロ」と「ばらの騎士」は伯爵夫人のデキで全てが決まる、と言うのがやや言い過ぎでも、伯爵夫人によりオペラ全体が締まるかどうかが決まる、と言えるだろう。


2.個々の歌手
伯爵夫人については前述のとおりで、大村博美さんの起用は大正解。見た目的にも大柄で美人でスタイル良し、と言うことなし。

黒田博さんのフィガロは充実した声で終始客席を魅了した。

外見からして真面目過ぎるように見える点が「贅沢な?」という以外、堂々たる第一級のフィガロ。
嘉目真木子さんはやや太めのメゾを思わせる声質が在るので、この役としては「頭の良過ぎる大人」的なイメージを抱かなくもないが、それでも特に第4幕での有名なアリアやフィガロとのデュオは格別気品のある「大人な」歌を聴かせてくれた。

この日特に面白かったのはバジリオ役の高橋淳さんと、ケルビーノ役の小林由佳さんだった。

まず小林由佳さんは、ありがちな男声を意識したズボン役をあっさりと投げ捨て、由佳さん自身メゾにもかかわらず、むしろ終始明るいソプラノのような声、トーンで歌い、あるいはボーイソプラノを意識したような明瞭な声で歌っていたのはユニークだった。ある種ノーテンキ的な役として「女性を誘惑?不倫?結構じゃない」という開放的なキャラの演技と歌で、とても斬新、新鮮なケルビーノだった。

高橋淳さんのバジリオは傑作で、歌声の充実はもちろん、「カルミナ・ブラーナ」のキャラを連想させる、ユーモアと滑稽さとそれでいて(カルミナ同様)その場の全体を牽引リードしていくようなキャラとして何度も聴衆から笑いと拍手を得ていた。高橋淳さんならではのドン・バジリオと言える。

押見朋子さんのマルチェリーナ、
妻屋秀和さんのバルトロのいずれも安定感があり、
出番は少ないながら優れた歌唱と演技で魅了した盛田麻央さんの
バルバリーナ、渡邉公威さんによるドン・クルツィオ、
鹿野由之さん演じるアントニオも各人充実していた。

最後に伯爵を演じた小森輝彦さんだが、立派な内容ながら、何か声も演技も中途半端な感じを受けた。これは後述する衣装も含めて、演出が、あくまでも高貴な身分に立つズッコケ伯爵とするのか、敢えて市民的な普通の男としての地位ある好色男として描きたいのかが中途半端だったことと直接連動するような気がして、単に小森さんがどう、という問題ではないように感じた。


3.演出について
舞台設定は驚くほどシンプルだが、ここまでシンプルだと、ちょっと物足りなさも覚える。ワーグナー作品におけるヴィーラント様式に似た、などと言うのは言い過ぎだが、設定にもう少し具体性があっても良いのではないか?

それと衣装が不満。
特に伯爵はまるで下層貴族?のような「普通」の感じで、ちょっとどうかと思う。もちろんわざとああいう「市民っぽい」感じでの演出を意図したのだろうけれど。
全体としても特に前半の各人の衣装が不満。
スザンナのメークも二期会でやるといつも魅力のないメークをするのも不満。

前述のようにドン・バジリオに代表されるようにユーモアは常に意識されていて、実際会場からは笑い声がたびたび起きていたから、客受けは良かったようだ。


4.指揮と管弦楽、合唱
指揮はウィーン・フィルのヴァイオリン奏者から指揮者に転じたサッシャ・ゲッツェル氏。作品を知りつくした余裕を感じさせるものだし、強弱のバランスも巧みだったが、ときおりステージ(歌)とオケの入りで合わない部分を感じて、これはオケとの慣れ合いが深まっていないことなのかどうかはよく解らない。
オケも合唱も不満は感じない、立派な演奏だった。

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