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2016年5月 3日 (火)

三善晃からの伝言~合唱曲演奏会~Tokyo Cantat 2016~やまと うたの血脈Ⅶ~大和の和は平和の和 そして平和~

すみだトリフォニーホールが合唱の喜びに溢れた日を体験した。
1985年の三善晃の個展に際し、武満徹は三善の作品の特質を「絶対抒情」と評し、「三善を聴くことに同時代を生きることの喜びを感じる」とプログラムに寄せた言葉を今日も感じた。

1996年から開始されたというトウキョウ・カンタートのことは今回初めて知った。
毎年、合唱に関する企画公演等がなされているが、今回は4月29日から5月5日までの間に、第5回若い指揮者のための合唱指揮コンクール、公開リハーサル等。

そしてこの日の「やまと うたの血脈」第7回として、三善晃さんの合唱曲特集が組まれ、演奏された。
素晴らしい演奏会だったが、まずは演奏曲と演奏団体を付記する。

1.「夜と谺(こだま)」(1996)~2群の女声合唱、1群の男声合唱、2台のピアノのための
  合唱=合唱団 樹の会
  指揮=藤井宏樹 ピアノ=斎木ユリ、浅井道子

2.「虹とリンゴ」(2003)~女声合唱とピアノのための
  合唱=熊遊舎(ゆうゆうしゃ)女声合唱団
  指揮=野本立人 ピアノ=髙木美来

3.「その日-August 6-」(2007)~混声合唱とピアノのための
  合唱=CANTUS ANIMAE
  指揮=雨森文也 ピアノ=平林知子
  (休憩)

4.「王孫不帰」(1070)~男声合唱のための
  合唱=男声合唱70
  指揮=清水敬一 ピアノ=小田裕之 木鐘=加藤恭子 スレイベル=村居勲

 (休憩)

5.「オデコのこいつ」(1971)~こどものための合唱組曲
  合唱=むさし野ジュニア合唱団“風”
  指揮=前田美子 ピアノ=平 美奈子

6.「レクイエム」(1972)(1台または2台のピアノ用リダクション;新垣隆)
  合唱=栗友会合唱団
  指揮=栗山文昭 ピアノ=ピアノ=斎木ユリ、浅井道子

7.「地球へのバラード」より「鳥」(1983)~混声合唱のための
  合唱=出演した合唱団員全員
  指揮=栗山文昭

どの曲もどの演奏団体も、相当な練習を重ねてきたに違いないことが伝わる本当に素晴らしい演奏だった。

1曲目の「夜と谺」は「レクイエム」の激しい部分をたくさんならべたかのような曲想で、これまでこの曲に注意を払わないできた自分を恥じた。今後よく研究したい。演奏も後述する栗友会に負けないほど素晴らしいものだった。

全日本合唱コンクールの金賞受賞の常連団体でもある「CANTUS ANIMAE」を初めて聴けたのも嬉しかった。指揮者の雨森氏がゲルギエフ以上の「右手首ヴィブラート」の連続を含めたエスプレッシーヴォを身振りで伝える指揮が良かった。

また今回自分でも意外だったのは、「夜と谺」同様にこれまであまり注意を払わないできた「王孫不帰」と「オデコのこいつ」に特に魅了されたことだ。

とりわけ後者では、むさし野ジュニア合唱団“風”が完成度の高さと積極果敢で自発性に富んだとさえ言えるほどの見事なデキで感服した。小学校高学年生を主体とした小学生による合唱団といえるだろうが、良いたとえではないが、Nコンに出れば間違いなく優勝するレベル、デキだ。
「良いたとえではないが」という意味は、彼ら彼女らの演奏は、コンクール云々という次元を超えた「真に音楽的な演奏」であったがゆえだ。レベルだけでなく、これほど自発的に喜びを湛え、しかも完成度の高い児童合唱はほとんど記憶にないほどだ。

「王孫不帰」は、早大出身の指揮者 清水敬一さんが、プログラムに「この曲との出会いがその後の人生を決めた かけがいのない曲」と書いているとおり、曲に対する熱い思いが伝わる演奏だったし、指揮もマニュアル的な振りではない~という点では雨森氏も全くそうだが~要所 要所を押さえての「キュー」の出しを主体とした良い指揮だった。


そして当然ながら、というか、予想通り、「レクイエム」の演奏は圧巻だった。

もともと国内で1、2を争う優勝な合唱団だし、今回は男女バランスよく集めた170名による大合唱だった。

以前、私は三善の「レクイエム」について、アマオケはむろん、アマ合唱団も演奏不可能と書いたが、訂正が必要となった。過去においても、プロの東京混声合唱団とアマチュアである東京大学柏葉会合唱団の合同で、山田和樹さんの指揮で演奏されたことを知っているし、録音も出ているが、アマチュア合唱団単独でのこの曲の演奏会は初めてだったのではないか? と想われる。
その意味においても画期的で記念碑的な演奏だった。

2台によるピアノパート譜面も極めて難しいのだが、斎木ユリさんも、三善作品の多くの初演に携わってきた浅井道子さんも、さすがの演奏で本当に見事で素晴らしかった。しかも譜めくりの補助者を置かずの演奏なので、驚いた。

迫力満点の演奏だったが、それでも もし敢えて惜しい点を言うなら、
①ディティールにおいては、第2曲の終わり近く、53小節目からステージ上の主体合唱が重厚な音を重ねて行く中、あらかじめ録音された女声のソリが「あなたでしたね、にしわきさん~」の部分がフォルティッシュモであっても、主体合唱が多人数のフォルテッシッモゆえ、埋もれてしまい聴きとり難かったこと。これはオケとの原曲演奏でも どうしてもそうなりがちな難しい部分だ。同じく第2曲の最終小節のソプラノソロが一瞬途切れてしまったこと。

②全体については、フォルテ1つ、2つ、3つ、あるいは4つなどがならぶ流れの中で、どの部分もフォルテ3つくらいで~それ自体は立派な迫力だったが~連続してしまい、変化というニュアンス表現があまり感じられなかった点だ。これは要するに「頑張りすぎ」なのだが、この偉大な曲を歌っていくのだから、興奮し、注力大になるのはむしろ自然なことなのだろう。

実は私は、この演奏会のことを2月初旬に知り、栗友会の構成団体の1つである「コーロ・カロス」の知人に「私も参加したい」旨を打診したのだが、既に締め切っており、栗友の各団からの参加希望者にも断り続けている状態、とのことで、私も断念したのだった。


演奏会の最後は、実質アンコールとして、出演した合唱団全員が栗山先生の指揮で「鳥」が歌われた。

すなわち、栗友会がそのままステージに残り、他の合唱団は、1階の左右と後の壁に沿ってならんでの演奏で、歌われた団員たちはむろんだろうし、優秀な合唱団に囲まれて「鳥」を聴いた聴衆も無上の喜びを覚えたと想う。「鳥」の途中にある朗読をした男性も良い声だった。

17時開演、途中15分の休憩を挟んで19時30分過ぎに終了。
三善晃さんが存命でこの演奏会を聴かれたらどんなに喜んだことだろうか。

この時期、「ラ・フォル・ジュルネ」があることもあり、あまり知られていないかもしれないし、前述のとおり、かく言う私も知らないでいたが、もっと知られてよい。「「ラ・フォル・ジュルネ」もスタート当初は知名度が低かったが、今やチケット購入が困難なほどビッグイベントとなっているから、この催しも近々そうなるといいと思う。

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