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2016年4月 5日 (火)

コーポレートガバナンス・コードという衝撃について

昨年2015年6月に東京証券取引所が公表した
「コーポレートガバナンス・コード」
 ~副題=会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~は、従来の日本企業のしくみ、あるいは「精神風土」と言う様なものを考えたとき、それに対する「変更」を求める具体的で理論的な内容であり、画期的な提言だと思う。

これは「会社が、ステークホルダーを尊重、配慮したうえで、透明で公正、かつ、迅速で果断な意思決定を行うための仕組み」とされるが、その説明文だと一見、形式的で抽象的なものに留まる印象を受けるが、実際はそうではない。企業がこの提言、ガイダンスを「真剣に考え、取り組もうとすればするほど」その合理性すなわち従来の「日本的な、なあなあさ」を排する厳しい内容であることを痛感するに違いない。

この「コーポレートガバナンス・コード」(以下、便宜的に「本コード」とする)は、1.株主の権利・平等性の確保、2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働、3.適切な情報開示と透明性の確保、4.取締役会等の責務、5.株主との対話 の5つの章から成り、この基本原則の5つのお題目におけるそれぞれの直接的な提言それ自体は、一見、表面的で形式的な文言に想え、よって抽象的とも言える要素が強い印象を受けるが、個々に付記された「補充原則」を見ると、その印象は全く異なり、極めて「踏み込んだ」内容となっているのが実態で、率直に驚く。
これらはいわば、企業の総務や法務、経営企画部門等の社員が、居酒屋で「理想としては、こうこうだと良いよね」と語り合う(に止まる)ような内容を、会社の役員=経営者に実際に叩きつけてきたものと言え、日本企業における曖昧さや「なあなあ」を排する、株式市場における「黒船」的内容とさえ言ってよい内容である。

以下、5つの基本原則とそこに付記された「補充原則」について見ていく。
それぞれに「これについて」として、解説や感想、意見等を付記する。

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1. 株主の権利・平等性の確保
「株主総会で可決された議案でも、(事前に送付された議決権行使書等で)反対票が相当数ある場合は、その反対の理由や、反対票が多くなった原因の分析を行い、(今後の株主総会を含め、株主総会以外においても)株主との対話や対応の要否について検討すべき」(補充原則1-1 ①)

【これについて】
前段の分析に関しては、会社によっては担当部門が行っている会社も少なからずあると想うが、本コードの「肝」の1つである「株主との対話」(5に出てくる)は新しい要素(指摘、言及、提言)で、それに先立つ準備的提言ともいえるもの。

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「株主の権利行使を妨げることのないよう配慮すべき。とりわけ、少数株主にも認められている上場会社およびその役員に対する特別な権利(違法行為の指止めや代表訴訟提起に係る権利等)については十分配慮すべき」(補充原則1-1 ③)

【これについて】
あらためて本コードに明記されたと言える。

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「招集通知は早期発送に努めるべき」(補充原則1-2 ②)
「株主総会日の適切な設定」(補充原則1-2 ③)

【これらについて】
株主総会の招集通知については、会社法上、上場会社については総会日の2週間前まで、未上場会社においては1週間前までに発送するべき、とされているが、このコードで、極力早期発送をする、という精神を求め、それを促す記載がなされたということと、直接的表現はしていないものの、要するにいわゆる
「“集中日”に合わせて開催(設定)するのは止めよ」と言っていると解してよいだろう。
 30年前に比べたら、ここ10数年は開催日の分散化が進んでいるが、それを徹底する旨を含んだもの、示唆したものと言える。

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「機関投資家や海外投資家の比率等を踏まえ、議決権の電子行使化や、招集通知の英訳を進めるべき」
(補充原則1-2 ④)

【これについて】
理解はしていても、なかなか対応が進んでいない会社が多いのでは?と想像できる。後者は外人株主がどの位いるかにもよるだろう。多い会社は既に対応済みと想われる。

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「信託銀行等の名義で株式を保管する機関投資家が議決権を行使したい場合(現状の行使し難い状況を改め)、議決権を行使できるように信託銀行等と協議するなど対策を検討すべき」(補充原則1-2 ⑤)

【これについて】
この内容は専門的で、総務部門の管理職や、係る株式実務を直接担当した経験が無いと解り難いが、
いわゆる「モノ言う株主」とグローバル化の状況を考えれば、今後益々話題に、身近な問題となると
想われる。個別に議決権を行使できるようにするのは当然のことだと思う。

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「資本政策の基本的な方針について説明を行うべき」(原則1-3)

【これについて】
具体的なプランというより、文字通り基本的なスタンス、姿勢についての開示を求めていると言える。

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「いわゆる政策保有株式(持ち合い株式)を保有している場合は、保有するその基本方針を開示すべき。政策保有株式の議決権行使に係る適切な対応を確保する基準を策定し開示すべき。また、取締役会は、毎年、政策保有株式のリターンやリスクを踏まえた経済的合理性当を検証し、保有する狙いや合理性を説明すべき」(原則1-4)

【これについて】
持ち合いについては30年前から、その是非等について色々と議論はされて来た。
 ここでの主旨は、公平性の観点から一部の株主のみに利益が行くような防衛策が無いか等、あらためて持ち合いとしての株式保有の正当性を明確化することにあると想像できる。

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「買収防衛の効果をもたらす方策は、経営陣や取締役会の保身を目的とするものであってはならない。
取締役会と監査役は、その導入や運営については、必要性や合理性を検討し、株主に十分な説明を行うべき」(原則1-5)
「自社の株式が公開買付けに付された場合は、取締役会として、対抗提案等、考えを説明すべき。また、株主が公開買付けに応じて株式を手放す権利を不当に妨げるべきではない」(同)
「株主の権利の希釈化をもたらす資本政策については、その必要性、合理性を取締役会、監査役はよく
検証し、株主に十分な説明を行うべき」(原則1-6)

【これらについて】
買収防衛策も、この20年来、色々論じられており、その正当性について、あらためて透明性の開示を求めている。
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「上場会社がその役員や主要株主等との関連当事者間取引を行う場合は、株主共同の利益を害しないよう、取締役会は、あらかじめ取引の重要性等に応じた適切な手続を定めて開示し、その手続を踏まえた監視を行うべき」(原則1-7)

【これについて】
利益相反取引等において違法性や不適切さを排除し、合理性を担保することが狙いと言える。

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2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

この2に関しては、これまでにない、あるいはこれまでの企業におけるIR(注1)を含めた対株主、対外的な対応を大きく拡大し展開した新しい内容と言える。
2008年から上場会社に必須となった金融商品取引法上の内部統制(いわゆるJ-SOX)の関係で、それを機に経営理念や行動指針の策定と開示をしている企業が増えたほか、同じく内部通報体制の整備は上場会社であれば100%設定&社内周知はなされているはずだが、このコードではそれらの他、
ステークホルダーの尊重、適切な協働等が強調され明文化されているのが特徴で、いわば、企業のCSR(注2)を本格的に企業の行動理念と実践に持って来たと言える。
ただし、下記の付記とおり、やや具体性に欠ける言及に留まっているのが惜しい。この章においても、もっと踏み込んで欲しかった。

(注1)IR…企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動をいう。日本では「投資家向け広報」とも訳される。
(注2)CSR…企業の社会的責任。企業が社会に対して責任を果たし、社会とともに発展していくための活動。企業は事業活動を続けていくにあたり、従業員、顧客、取引先、仕入先、消費者、株主、地域社会、自治体や行政など多様な利害関係者(ステークホルダー)と関わるが、彼らと積極的に対話し、良好な関係を保ちながら経営を続けることを言う。一般的にCSRの代表的なものとしては、納税や法令順守といった当たり前のことから、安心・安全な商品やサービスの提供、人権の尊重、公正な事業活動の推進、コーポレートガバナンスの向上、環境への取り組み、サプライチェーンへの取り組み、地域課題への取り組みなどがあげられる。


「経営理念を策定すべき」(原則2-1)
「行動準則を定めて実践すべき」(原則2-2)

【これについて】
内部統制(J-SOX)においても、これらの明文化による開示が一般的になってきているが、より広範なステークホルダーを尊重し配慮した面からの企業のスタンスの明瞭化を求めていると言える。

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「上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティー(持続可能性)を巡る問題について適切な対応を行うべき」(原則2-3)

【これについて】
これは、このコードの中では珍しく抽象的で、広範な概念に想われるし、使用頻度の少ない英単語を用いている点でも、やや「ムリ」を感じる。
CSRとしてのサステナビリティーはエコの観点だけなのか、とか、事業継続計画(BCP)との違いは何かという点でも不透明、混乱があるように想えるし、この点に関する提言は、もう少し具体的な説明が必要だと思う。

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「女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保」として、「上場会社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存続することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべきである」
(原則2-4)としている。

【これについて】
現内閣の要望が入ったのかどうかは判らないが、いかにもごもっともな内容ではあるが、これに関してはやや抽象的、理念的、お題目的に過ぎる様に想える。より具体的な内容の言及が欲しいところだ。

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「内部通報」~「上場会社は、その従業員等が不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な懸念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や懸念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである」
(原則2-5)としている。

【これについて】
内部統制の内容、特に金融商品取引法上のそれ(J-SOX)においては具体的な整備・運用体制を採ることが求められ、何より「公益通報者保護法」において通報者に不利益を与えないことが明記され厳命されているにもかかわらず、オリンパス社における濱田正晴さんのケースといい、「会社による社員への裏切り行為」がこれまで何度となく問題となってきた。中には、通報窓口を顧問弁護士としていた(会社)にもかかわらず、その弁護士が会社の人事部に通報し、通報者が「報復」されたケースさえあった。信じ難いほど論外的なヒドイ例だ。それゆえ、本来、社内で解決したほうが良いに決まっている懸念事案についても、そのための「内部通報制度」は社員からは全く信用されないこととなり、結果、マスコミや警察等外部への「内部告発」が主流となっている。
企業としても、外部への内部告発は「致命的」となるのに、この社内の自主的浄化システムである「内部通報制度」が軽んじられてきたため、その当然の結果としての「外部への内部告発」の増加、日常化と言えるのだ。いいかげん、企業はそのことを真摯に真剣に受け止めるべきだ。
本コードでも、正にこの点を再度徹底して明言している。「本来は当たり前の内容」なのだが、それができていない日本の企業の陰湿な体質に対する極めて率直な批判を込めた「再提言、念押し」と言える。

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3. 適切な情報開示と透明性の確保

題目的には従来より特に上場企業に求められていることの強調としての提言ではあるが、それを一層具体的に踏み込んで言及している。法令に基づく開示はもちろん、
「会社の意思決定の透明性と公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点
から、次の事項についての積極的な開示、主体的な情報発信を行うべき」(原則3-1)として、
(1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
(2)コーポレートガバナンスに関する基本方針
(3)取締役会が取締役等の報酬を決定するに当たっての方針と手続
(4)取締役会が取締役、監査役等候補者の指名をするに当たっての方針と手続
(5)その~(4)の~個々の説明  を挙げ、加えて、これらの開示に際しては、
「取締役会は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者にとって付加価値の高い記載となる
ようにすべき」(補充原則3-1 ①)、
「上場会社は株主における海外投資家等の比率も踏まえ、英語での情報開示・提供を進めるべき」
(補充原則3-1 ②)としている。

【これらについて】
(1)は先述のとおり、J-SOX導入により開示している会社が多くなった。
(2)は正に今回求められることになった点。
(3)は、内規がある会社は多いと想われるが、方針というような理念的なものなのかどうか、という点は疑問に想え、検討の余地が多いと想われる。
(4)指名に関する方針は、形式的なものはあっても、それが実態として運用されているか、という
 観点からの検証は必要と想われる。こうした点の開示を求める点は、今回のこのコードの特徴の1つと言える。

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「外部会計監査人および上場会社は、外部会計監査人が株主・投資家に対して責務を負っていることを
認識し、適正な監査の確保に向けて、適切な対応を行うべき」(原則3-2)として、
「監査役会は、外部会計監査人候補を適切に選定し、評価するための基準を策定し、独立性と専門性を
有しているかについて確認すべき」(補充原則3-2 ①)としている。

「取締役会および監査役会は、外部関係監査人が高品質な監査を可能とする十分な監査時間の確保を
しているか、CEOやCFO等との面談がなされているか、監査役会への出席を含む監査役との面談、および内部監査部門や社外取締役との十分な連携がなされているか」、そして
「外部会計監査人が不正を発見し、適切な対応を求めた場合や、不備・問題点を指摘した場合の会社側の対応体制が確立されているか」(補充原則3-2 ②)としている。

【これらについて】
外部監査人に対する点は、東芝等、昨今の不正、不祥事を考慮した、これまでになく強く踏み込んだ
ものと言える。事前に回避し得ない監査法人に対して、会社からもその選任等に関して厳しいチェック
を必要とすべきとするもので、監査法人の不正に関する監査責任を金融庁が厳しく問う姿勢を、会社も
十分認識することを基盤とする。

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4. 取締役会等の責務

本コードの「肝」と言えるものが、この「取締役会等の責務」だ。
ここでの取締役、取締役会および監査役(会)に対する要望こそ、従来ありがちな、なあなあの、法令遵守の精神の無い、活発な取締役会運営とは無縁で形式的な、すなわち「出世の結果という個人の名誉や栄達レベルで留まっている取締役という地位」が全てである多くの日本の企業の現状に対する、大きな変化を求める内容となっている。
すなわち、本来あるべき姿であるはずの取締役という機関が有する理念を個々の該当者に具体的なかたちで求める内容となっている。


「取締役会は、取締役会自身として何を判断・決定し、何を経営陣に委ねるのかに関連して、経営陣に対する委任の範囲を明確に定め、その概要を開示すべき」(補充原則4-1 ①)

【これについて】
やや理念的だが、これまでになく踏み込んでいる。

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「中期経営計画が目標未遂に終わった場合には、原因等を分析して株主に説明し、その分析を次期以降の計画に反映させるべき」(補充原則4-1 ②)

【これについて】
株主総会や経営説明会等で、ある程度実施している会社はあると想われるが、あらためて本コードで念を押す格好となっている。

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「経営陣の報酬は、持続的な成長に向けた健全なインセンティブの1つとして機能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべき」
(補充原則4-2 ①)
「取締役会は、経営陣幹部の選任や解任について、会社の業績等の評価を踏まえ、公正かつ透明性の高い手続に従い、適切に実行すべき(評価を人事に適切に反映すべき)」(原則4-3)

【これらについて】
報酬、選任や解任、評価等に関して、曖昧さや、いわゆるお手盛り等ではなく、明瞭な基準を求めている点でも、従来に無く強く踏み込んでいる。
これは、いわば、「社員に評価主義を求めるのなら、取締役も当然そうですよね? そうすべきでしょ」、ということだ。本コードが有する基本姿勢をよく表していると言える。

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「取締役会は、適時かつ正確な情報開示、内部統制やリスク管理体制を適切に整備すべき。関連当事者と会社との間に生じ得る利益相反関係を適切に管理すべき」(同 原則4-3)

【これについて】
前段はJ-SOXで、後段も本来の、以前から求められていることではあるが、本コードであらためて言及している。

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「監査役および監査役会に期待される重要な役割・責務を十分に果たすためには、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることは適切でなく、能動的・積極的に権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切に意見を述べるべき」(原則4-4)

【これについて】
「過度に狭く捉えることは適切でなく」という表現で、監査役および監査役会の責任の重大さをあらためて強調した点で、従来に無く踏み込んだものと言える。

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「監査役会は、社外監査役には強固な独立性、常勤監査役が保有する高度な情報収集力とを有機的に組み合わせて実効性を高めるべき」(補充原則4-4 ①)

【これについて】
「有機的に組み合わせて」という、いわば哲学的とも言える表現を用いており、特徴ある言及と言える。抽象的な解釈(無作為)に逃げ得る危険性も孕(はら)むが、その分、企業に関わる者にも「大人」な営みを求めていると言える。

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「監査役または監査役会は、社外取締役が、その独立性に影響を受けることなく情報収集力の強化を図ることができるよう、社外取締役との連携を確保すべき」(同 補充原則4-4 ①)

【これについて】
「監査役(会)と社外取締役の連携」の強調は、今回の大きな特色の1つだ。

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「上場会社は、取締役会による独立かつ客観的な経営の監督の実効性を確保すべく、業務の執行には携わらない、業務の執行と一定の距離を置く取締役の活用について検討すべき」(原則4-6)

【これについて】
従来、執行に関わる取締役が当たり前のように存在してきたが、執行役員制度が流行りだしてから、分離は進んできたようである。しかし、例えば、取締役(兼)専務執行役員などというような肩書きが
 まかり通っているのも事実であることから、こうした言及がなされたと想われる。

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「上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待されることに留意しつつ、その有効な活用を図るべき(原則4-7)(として)
(1)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること」

「独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を
果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」(原則4-8)

「独立社外取締役は、例えば、互選により「筆頭独立社外取締役」を決定することなどにより、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に係る体制整備を図るべき」(補充原則4-8 ②)

「取締役会は、金融商品取引所が定める独立性基準を踏まえ、独立社外取締役となる者の独立性をその 実質面において担保することに主眼を置いた独立性判断基準を策定・開示すべき」(原則4-9)

【これらについて】
独立社外取締役に関する言及も、本コードの特徴の1つだ。「少なくとも2名以上」と具体的な要求もなされている点が重要。

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「監査役には、財務・会計に関する適切な知見を有している者が1名以上選任されるべき」(原則4-11)

【これについて】
この踏み込みも、画期的と言えるほど具体的だ。

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「社外取締役・社外監査役をはじめ、取締役・監査役は、その役割・責務を適切に果たすために必要と
なる時間・労力を取締役・監査役の業務に振り向けるべき。この観点から、取締役・監査役が他の上場会社の役員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲にとどめるべきであり、上場会社は、その兼任状況を毎年開示すべき」(補充原則4-11 ②)

【これについて】
社外取締役にしても社外監査役にしても、人によっては複数、多数の会社で就任している人が現実にいるが、この点に関して懸念の表明と問題提起をした点でも画期的なまでの踏み込んだ指摘、言及と言える。極めて当然の内容でもある。

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以下の4点は、取締役会を主語としている。
「取締役会は、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべき」(補充原則4-11 ①)

「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について
分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべき」(補充原則4-11 ③)

【これについて】
新たな提言であり、「なあなあ」を排除し、厳しく客観的に運営がなされているかを要求している。

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「取締役会は、社外取締役による問題提起を含め自由闊達で建設的な議論・意見交換を尊ぶ気風の醸成に努めるべき」(原則4-12)

「取締役会は、会議運営に関する下記の取扱いを確保しつつ、その審議の活性化を図るべき。
(補充原則4-12 ①)(例として)
(1)取締役会の資料が、会日に十分に先立って配布されるようにする
(2)取締役会の資料以外にも、必要に応じ、会社から取締役に対して十分な情報が(適切な場合には、要点を把握しやすいように整理・分析された形で)提供されるようにする」

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情報
「取締役・監査役は、その役割・責務を実効的に果たすために、能動的に情報を入手すべきであり、必要に応じ、会社に対して追加の情報提供を求めるべきである。また、上場会社は、人員面を含む取締役・監査役の支援体制を整えるべき」(原則4-13)

【これについて】
「支援体制」は実態としては各社存在しているだろうが、あらためてそれについて言及した点で新鮮。
こうした指摘、言及も本コードの特徴と言える。

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「社外監査役を含む監査役は、法令に基づく調査権限を行使することを含め、適切に情報入手を行うべき」(補充原則4-13 ①)

「取締役・監査役は、必要と考える場合には、会社の費用において外部の専門家の助言を得ることも考慮すべき」(補充原則4-13 ②)
「上場会社は、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべき」(補充原則4-13 ③)

【これらについて】
外部の専門家からの助言は、多くの会社で行われていると想われる。内部監査部門と他部門の連携もいわゆる三様監査を含め、実態として機能している会社が多いと想われるので決して新しい指摘ではないが、あらためて本コードでも言及した点で意義があると言える。

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「上場会社は、例えば、社外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を適確に提供できるよう社内との連絡・調整にあたる者の選任など、社外取締役や社外監査役に必要な情報を適確に提供するための工夫を行うべき」(同補充原則4-13 ③)

【これについて】
「調整に当たる者」は実態としては多くの会社で存在すると想われるが、あらためて本コードで言及している点で新しい指摘と言える。

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「取締役・監査役(社外取締役・社外監査役を含む)は、就任の際には、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、会社の事業・財務・組織等に関する必要な知識を取得し、取締役・監査役に求められる役割と責務(法的責任を含む)を十分に理解する機会を得てその役割・責務に係る理解を深めるべきであり、就任後においても、必要に応じ、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるなど、これらを継続的に更新する機会を得るべきである。
このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会の提供・斡旋やその費用の支援を行い、取締役・監査役に対するトレーニングの方針について開示を行うべきであり、取締役会は、こうした対応が適切にとられているか否かを確認すべき」(原則4-14)

【これについて】
これまでは、選任された者が個々において学習してきたと想われるが、それを社内でシステマティックに行うべき、と明言した点で画期的とも言える言及。

以上のように、この4こそ本コードの中心に置かれた重要な骨格と言える。

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5. 株主との対話

本コードの最後は、文言(言葉数)は少ないながら、それ以上のインパクトを持つとも言えるところの、
「株主総会以外の場での株主との建設的な対話」が置かれている。
総会屋全盛時代は、上場企業の少なからぬ企業が係る一部の株主とウラで繋がっていたが、むろんそれは「建設的な対話」とはほど遠かったし、株主総会後の会社説明会や懇親会というかたちでは、こんにちにおいては、例えばカゴメでは、一般株主とのフレンドリーな場が設定され実施されてきている、などの
積極的な取り組みを実施している上場企業も増えてきているが、それは大抵、総会後などの年1回というようなケースがほとんどではないか、と推測される。

その意味でも、今回のような、「株主総会の場以外での株主との対話」は大きな問題と言える。
本コードでは、
「株主からの対話(面談)の申込みに対しては、前向きに対応すべき」(原則5-1)とし、
「取締役会はそうした対話促進のための体制整備の方針を検討、承認し、開示すべき」(同原則5-1)
としている。
加えて、係る「面談は、取締役(社外を含む)など経営幹部が臨むことを基本」(補充原則5-1 ①)
とすべき、と「部下任せ」を排する記載もされている。

更に方針については次の点を記載すべき、として、
「建設的な対話が実現するように目配りを行う経営陣または取締役の指定。対話を補助する部門との
連携方策。個別面談以外の例えば説明会等の充実に関する取組み。
対話において把握された株主の意見や懸念点と、それに関する取締役会に対する適切で効果的な
フィードバックのための方策。インサイダー情報の管理に関する方策」(補充原則5-1 ②)

ただ、もう1つ、
「上場会社は必要に応じ、自らの株主構造の把握に努めるべきであり、株主もこうした把握作業にできる限り協力することが望ましい」(補充原則5-1 ③)
としている点は、意図が不明である。
前段は、各企業で個々ある程度は株主構成を分析しているはずだし、後段での言及は何を意味し、
何を意図しているのかは私には理解できない。

基本原則5としての第5章における最後の補充原則としては、あらためて
「経営戦略や経営計画の策定・公表」として、「その実現のために具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである」(原則5-2)
として、このコーポレートガバナンス・コードを締めくくっている。

「まとめとして」
本コードは法律ではないから強制力は伴わないが、東京証券取引所が公に公表した以上、
少なくとも上場企業にその基本精神は求められる。
これら全ての実行、実現は、組織的に堅牢と想われる老舗の大企業さえ困難を伴うだろう。
いやむしろそうした老舗の大企業ほど難しい要素も在ると想像できるし、その点、若く斬新な新興企業が、
ありがちな利益至上主義に走らず、真にコンプライアンスを尊重し、社員を大事にすることを徹した企業
であるならば、そうした歴史の浅い企業にこそ、この理念と実践が早い段階に実現する可能性もあるよう
に想える。
いずれにしても、企業が真の意味で「社会の公器」として発展できるか、それによってそこで働く社員が
真に自社に誇りを持って働き、自己実現できるか否か、という観点からも、
個々の企業が本コードを真剣に受け止め、完全実現に近づいて行こうとすることが重要だと思う。

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