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2015年11月 9日 (月)

武蔵野合唱団 創立60周年記念 第48回定期演奏会

武蔵野合唱団 創立60周年記念 第48回定期演奏会
熱い絆から生まれ出でる演奏

9日 サントリーホール

指揮 小林研一郎


1.三木稔 レクイエム
  混声合唱・ピアノ伴奏版;1977年混声版委嘱作品
  バリトン=井上雅人
  ピアノ=大室晃子、高橋美佐

(休憩)

2.高田三郎 混声合唱組曲「水のいのち」
   詩=髙野喜久雄
  ピアノ=雲野茉里


 <序に代えて>

開演5分前なのに、サントリーホール入口付近のロビーに
団長を含む数人が、客の迎え入れ挨拶やプログラム配布を
やっていて驚いた。
 「もう始まるんですけど」と、こちら(聴衆)が心配してしまうが、
こういうところから既に「武蔵野」なのだ。

そして、団員が入場し始めると~終演後コバケンさんも
ステージからの挨拶でふれていたように、
外来オケの入場で見られるような~団員が全員ステージに
上るまで拍手が続いた。

これはさすがに「武蔵野」の演奏会でも毎回ということではないと
思うが、しかし、これも長い歴史の中で「コアなファン」を
多く獲得してきた証と言えるだろう。


 <三木稔「レクイエム」>

「水のいのち」から始めると想像していたが、考えてみると、
難曲に取り組み、結果を提示してから「水のいのち」で
締めくくったほうが確かに演奏する側としたら正解だ、
と合点した。

バリトンソロが急きょ変更ということで、いつの時点での決定か
知らないが、気安く代演を引き受けられる曲ではないから、
ピンチヒッターで歌った井上雅人さんに敬意を捧げたい。
情感と正確さとのバランスの点でも立派な歌唱だった。

当初、男声合唱曲として書かれたこの曲は、作曲者が
武蔵野合唱団に捧げた曲というわけではないものの、
1977年3月に今日の指揮者 小林研一郎さん
 (以下、失礼ながら敬愛を込めてコバケンさんとする)と
武蔵野で演奏するにあたり混声版を作曲者に委嘱して演奏
されて以来、たびたび節目節目でこの合唱団が取りあえげて
きたという、
いわば「おはこ」というか、強い縁で結ばれた曲である。

もちろん今回初めて歌った団員も少しはいただろうが、
多くは2回以上のステージとなる演奏だったのだ。(注)

私はこの曲に対して、理解が未だ浅く、そして今述べたように、
武蔵野とこの曲の深い繋がりを考えたとき、
軽々しい感想は控えたいと思う。
しかし、それでも、一応、自分のメモとして
以下述べておきたい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この「レクイエム」と題されている曲だが、私にはこれが
どの他者に向かって投げかけられていく曲なのか?
という点で掴みきれないもどかしさを感じる。

基調は当然沈鬱だったり複雑な感情の発露だったりするが、
かといって音の語法は特別刺激的であるということでもない。
いわば、あくまでも内面から内面への問いかけという印象を
抱く曲想だ。

武蔵野合唱団の立派な子音の発音にもかかわらず、
歌われた1つ1つの単語の発音(意味)が聞き取り易いとは
決して言えないのは、きっと、曲の構成が一見
他者への呼びかけのかたちを採りながらも、
感情の発露だったり感慨だったり慟哭だったり願いや
祈りだったりという内的な詩情、読み手の内省の詩に対しての
作曲であること、原詩が日本人によるものではなく訳詩に
作曲されたことで、音の語句と詩歌の語句の間に、
微妙な齟齬が生じているように私には感じられるから、
戸惑いを禁じえないのだろう。

しかしもちろん、これは今の私のいわば「印象」に過ぎない。
この曲に長年真摯に熱心にいわば「自分たちの曲」として
取り組んできた武蔵野合唱団にとっては、
もっともっと私の理解を遥かに超えたところでの熱い共感と
深い理解があるに違いないことは言うまでもないだろう。
実際、演奏は外面性に走らない内面からの真摯な歌を
強く感じさせる立派な演奏だった。


ただ、意外だったのはサントリーホール大ホールでの
合唱団単独での演奏の音響効果という点だ。

純粋に合唱団だけ(とピアノ)がならんだこのホールでのシーンは
割と珍しいものだと思う。オーケストラ主体になっている
このホールでの公演は、団にとって誇らしいそれ自体
記念になる演奏会になったと思うが、しかし、意外に、
声の響きが客席に明瞭にストトレートに響き届くホールではない
かもしれない、と感じた。

空間が大きいので、合唱の声、発音が天井に拡散される
というか、あるいはステージ上では響いても、
例えば東京芸術劇場のように、ストレートに合唱の声が
客席に突き進むという感じがしなかったのは意外だった。

このことも、実は曲想に加えて、発音の外的イメージよりも
内省的志向を強く感じさせた要因かもしれない。
それは曲にとって実は好ましいことだったのかもしれないが、
しかし、正直に言えば、今日のこの「レクイエム」の演奏を、
東京芸術劇場で聴いてみたかった、という思いは残る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 <水のいのち>

1曲目の「雨」は驚くほど速いテンポで弱音で歌い出され、
まるで、独り言をつぶやくような、詩を1人で口ずさむような
詩情で歌われたのが印象的だった。
ただし部分的にはゆったりとした大きな間合いをも設定して
いたが。
まるでちょうど、大きな水溜まりか池に出くわした瞬間を設定
したような。

このアプローチはこの1曲目だけで、あとの4曲はむしろ、
どっしりと根を下ろした歌として演奏された。

2曲目の「水たまり」もフレーズごとに大きな枠取りを設定
していたが、1番個性的で意志的なアプローチを提示したのは
第3曲の「川」だった。

3曲目の「川」では、冒頭からまるでレスタティーボを
合唱に置き換えた、とも言えるような「語り」で歌い出され、
その後も、フレーズ単位で言葉を徹底的に強調した演奏だった。

ゆえに、「曲として流れがない」という批判もできるかも
しれないが、しかし、コバケンさんは、
 敢えて「流れをせき止め」、むしろ停滞する澱んだ川、
それが今の人間社会だ、というようなことを感じさせる
アプローチをとったのだった。

少し穿(うが)った言い方をすれば、コバケンさんの故郷、
 「福島県ではまだ川はキレイになんか流れていない。
  澱み、濁り、停滞しているんだ」
ということを我々に突き付けてくるような、
そういった曲想でのアプローチで、とても印象的だった。

4曲目の「海」も良かったが、ただ、「みなさい これをみなさい」
という、印象的であるはずの詩句が割と素朴に歌われたため、
私の胸にはあまり強く入っては来なかった。

5曲目=終曲「海よ」は、3曲目「川」と似た、
単位ごとに大きな枠を設定して演奏され、
堂々とした立派な、熱い演奏だった。

ここでも、やはり依然として、
海であっても「流れは停滞している」のだが、しかし、
それが次第に流れ始め、最後の
「のぼれ のぼりゆけ おお」では、
正に川も海も空に大きく解放されていくようで、
すこぶる感動的だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 <ピアニストについて>

前半の「レクイエム」での2人とも立派な演奏。
特に大室晃子さんの打鍵とのその音が印象的だった。

後半での雲野茉里さんは想像以上に立派な、と言っては失礼
だが、コバケンさんの意図を十分理解しきって、
十二分に詩的に弾きこんだ素敵な演奏だった。

終演後、「ウンちゃん、ブラーヴァ」と言おうと思ったが、
私のキャラではないので止めておいた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 <終わりに>

なお、コバケンさんも合唱団も、当然ながら
 ~1曲目は難曲にもかかわらず~全曲暗譜で演奏された。

そのことよりも、この日の演奏に終始感じられた「熱い絆」の、
この「熱い」は「厚い」であり「強い」と言い換えてもよい
形容詞で、それを飾るのは団としての団員の絆であり、
若い時期から強い関係で歩んできたコバケンさんと
武蔵野合唱団との絆であり、
そして「レクイエム」と「水のいのち」と武蔵野合唱団との絆
でもある。
何よりもそれを強く感じさせてくれた演奏会だった。

後々まで語られ得る、そして心地よい雰囲気から益々
 「武蔵野ファン」が増大したのでは?と想像できる
印象的な「熱い」コンサート、
それがこの日の記念演奏会だった、と言えるだろう。
お疲れ様でした!

(注)後日、合唱指導者から
 「初挑戦者が多く、経験者は2割ほどだったとのこと。

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