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2015年7月19日 (日)

魔笛~二期会公演~CG演出のプラスとマイナス~森谷真理さんによる完璧な夜の女王に感服

魔笛~東京二期会公演~CG演出の妙
 ~充実の第2幕~第1幕は中途半端
 ~鮮烈で見事だった森谷真理さんによる夜の女王~

リンツ州立劇場との共同制作、宮本亜門演出の
 「魔笛」 東京二期会公演を
満員の東京文化会館で聴いた。

ダブルキャストの両日を観たかったが、都合がつかず、
この日の幸田浩子さん組のみを拝聴。

でも、後述する森谷真理さんの夜の女王が聴けただけでも
大きな収穫「発見」で、この組みに行って本当に良かったと思う。


 まずは、主な出演者、関係者を記載する

指揮   デニス・ラッセル・デイビス

管弦楽  読売日本交響楽団

合唱   二期会合唱団

演出   宮本亜門


   16日(木)& 19日(日)  18日(土)& 20日(月・祝)

ザラストロ   妻屋秀和       大塚博章

タミーノ     鈴木 准        金山京介

パミーナ    幸田浩子       嘉目真木子

パパゲーノ   黒田 博        萩原 潤

パパゲーナ  九嶋香奈枝     冨平安希子

夜の女王   森谷真理       高橋 維

侍女Ⅰ     日比野 幸       北原瑠美

侍女Ⅱ     磯地美樹       宮澤彩子

侍女Ⅲ     石井 藍        遠藤千寿子

モノスタトス  高橋 淳        青柳素晴

弁者      加賀清孝       鹿野由之

 (以下の童子は5人はTOKYO FM少年合唱団員
 田中北斗君のみシンフォニーヒルズ少年少女合唱団)

童子Ⅰ     小野颯介       栗橋優輔

童子Ⅱ     福田 建        山本江龍

童子Ⅲ     高井麻飛       田中北斗

僧侶Ⅰ     高橋祐樹       狩野賢一

僧侶Ⅱ     栗原 剛        升島唯博

武士Ⅰ     成田勝美       今尾 滋

武士Ⅱ     加藤宏隆       清水那由太

ダンサー 全日~鈴木裕香、津吉麻致子、泉 真由、
        栗林昌輝、藤岡善樹、竹中勇貴


<演出について>

ほぼ全編CGを用いた演出は、第1幕ではやや中途半端、
文字通り「絵空事」的な場面もあったが、
第2幕は美しさ、場面転換の効率性、説得力ある情景等、
全ての面ですこぶる充実した上演で、強いインパクトを有し、
今後、恐らく益々演出においてCGの需要度、利用度が
増すだろうことを大いに予感させる印象深い公演だった。

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<やや中途半端な第1幕>~時系列的に感想を

デニス・ラッセル・デイビス指揮の読響による序曲。
冒頭の3和音、音が硬い。特にティンパニが。

後半に入るB-durの3和音後のb-mollで開始するところ
からも緊張感が無く、クレッシェンドも甘い。
この程度(以上)の演奏は今やアマオケだってできる時代だ。

後述するが、この指揮者はモーツァルトの音楽を流して
いくだけで、豊かなニュアンスとか、「解釈」とか音による
意味づけといった事には無関心のようだ。

なお、この序曲の間、ステージでは現代家庭の
居間の様子が演出されていて、
 「また奇妙な読み替えかよ」と意味が解らず閉口した。

もっとも、これは最後の最後に再現された際、
 「なるほどね」と理解できたのだが。

したがって、この現代家庭の設定は、序曲が終わると
すぐに取り払われた。

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 <歌手のみなさん>

序曲が終わり、CGで竜が襲いかかる印象的な演出。
今回最初の「CGOKだね」のシーン。
ヘタな縫いぐるみが登場するより、CG映像のほうが良い。

その映像の中、タミーノが登場。
鈴木准さんの声はピュアで好きなのだが、力みと気負いからか
声に伸びや艶が無く生彩を欠く。
美しいパミーナと歌う「絵姿のアリア」もそうだった。
後述するが1幕の終わり近くから第2幕にかけては良かった。


重要な役である3人の侍女。衣装が品が無い。
演技もコケティッシュ過ぎる。
でも、日比野幸さんを中心とした声のアンサンブルはとても良く、
特にタミーノ、パパゲーノとの5重唱や第2幕での
 「試練なんてやめてこんなところ逃げ出しちゃいなよ」
と誘うシーンは充実していた。


真面目過ぎさが懸念された黒田博さんのパパゲーノ。
最初のアリアは硬さが目立った。
後述するが黒田さんも第2幕はとても良かった。


そして森谷真理さん演じる夜の女王の登場。
低い音はややかすれたが、高音は素晴らしい。
この日最初の大きな拍手と歓声が起きた。
 「森谷ショック」は後述する第2幕で頂点を迎える
ことになる。


モノスタトス役の高橋淳さんはこのオペラでも歌だけでなく
演技が秀逸で、第2幕でもとてもその才能を遺憾なく発揮
していて面白かった。


幸田浩子さん演じるパミーナと黒田さんによる
有名な二重唱。ここは聴衆が聴き入るシーンだが、
十分素敵なデュオだった。


TOKYO FM少年合唱団から選抜された3人の童子は
とても上手かった。
第2部でも登場するたびに可愛らしくピュアな重唱で
楽しませてくれた。

鈴の音の合唱はコミカルで楽しかった。

タミーノの魔法の調べのアリアで、
ようやく鈴木准さんは声の伸びやかさを取り戻していて、
ホッとした。良かった。


妻屋秀和さんのザラストロは予想どおりの充実で素晴らしい。
「何も心配することはない」と歌うところや
「試練」を告げるソロでの低音のF音(音域)は
やや響きが薄れるものの、それ以外は見事。

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 <前後するが、演出で3つ>

先述の5重唱での絵は陳腐だった。
こういうところが、気をつけないと(ややもすると)
 「やっぱCGだね。生演出ほど説得力は無いね」
ということになる。

しかし、タミーノと合唱のやりとりでの、
 「パミーナは生きているのか?」と問うシーンでは、
タミーノ1人に青い照明を当てていて、あれは美しく良い演出
だった。

この日、2つ目の印象的なCG効果が生かされたシーン。

ゴリラかチンパンジーが複数たびたびに登場する。
第2幕ではとても効果的で、この演出の中での
特徴の1つと言えるのだが、
第1幕ではあまり効果的な役は演じておらず、
やや中途半端だった。

このように、第1幕での演出は中途半端だったし、
男声陣の歌唱も総じて第2幕のほうが良かった。

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 <歌も演出も素晴らしかった第2幕>

冒頭からCG効果が発揮された美しいシーン。
この日3つめ、というより、これ以降、この幕は冒頭に記載
したように、美観、効率的で説得力ある場面転換等、照明も
工夫も含めて全て魅力的だった。

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 「圧倒的名唱~復讐のアリア」

ザラストロとモノスタトスによる充実した歌唱が終わり、
夜の女王が再び登場。

森谷真理さんによる「復讐のアリア」。
余裕を感じさせるまでの完璧さに驚嘆し、感動した。
3連符で動くところではオケと合いにくいところだが完璧。

そして終わりから数えて27~21小節間での8分音符で
ニ短調の分散和音的に上下するところでは、
声を 「やや軽めの音に置き換えて」 完璧に歌う、という
余裕を見せてくれた。実に素晴らしい。

単に音程が正確とかいうだけでなく、声量、それも
派手でケバケバしいい声量ではなく、
1本の太い綱が真っ直ぐに広い会場のどこにでもまっすぐ届く、
そういう声量がある点でも申し分ない。

この歌を、私はライブ、録音、外人、日本人を問わず、
たぶん30人くらい聴いてきたが、

 控え目に言ってもベスト5、
 あるいはもしやベスト3にも入るかもしれないデキ

だった。

すなわち、ルチア・ポップさんや、
エディッタ・グロヴェローヴァさんの域にも達する
というレベルの歌唱。

ウィーン国立歌劇場だろうとメトだろうとスカラだろうと、
世界のどこのオペラハウスで歌っても必ず絶賛されるに
違いない名唱。

これほど完成度の高いアリアを聴いたのはいつ以来だろう?

こういう言い方は意味が無いが、敢えて言うと、

 「森谷さんは、日本人がこのアリアを歌う基準の
  ハードルの高さを一気に上げてしまった」

これ以上に歌うことはちょっと想像がつかないくらいのレベル。

もちろん直後は、この日1番の大きな歓声と、
長い長い拍手が続いた。

もし1つだけ注文を付けるとしたら、セリフでの声が
妙に優し過ぎていたので、セリフではもっと「アクの強さ」が
あるといいなと思った。それ意外は言うことが無いほど見事。

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ザラストロの「この聖なる殿堂の中では」も素晴らしい。
このアリアでも下のFisはやや艶が消えるものの、
それ以外は申し分ない。
妻屋さんは、「威厳あるザラストロというよりは、
人間的なザラストロ」を意識したように想える。

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そして、妻屋さんに劣らず、この日、見事だったのは
幸田浩子さんだ。
やはりこの人は抗し難いほどの魅力を持っている。

セリフでのドイツ語はイタリア語ほどの明確さはなかったかも
しれないが、歌はどれも見事で、
有名な嘆きのト短調のアリアだけでなく、
第1幕での「私は罪をおかしました」というザラストロとの重唱や
第2幕でのタミーノとの重唱等、どの場面をとっても
素晴らしかった。

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マジメを返上した?かのような黒田さんによるパパゲーノ。
沈黙の試練の中でのユーモアたっぷりの「抵抗」は、
メイクからも、まるでチャップリンのギャグを見ているようで
面白く、聴衆を何度も笑わせていた。

良い意味で予想を裏切られた愉快なパパゲーノを演じていて
見事だった。

第1幕ではやや硬さがあった歌においても、
 「恋人か女房が欲しいな」のアリアでは
とても感興豊かに歌っていてとても素敵だった。

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タミーノとパミーナが手をとって火と水の試練に向かうシーン
でも、原爆のキノコ雲を想わせる爆発や火災、洪水や
あるいはもしや津波をも想わせる水の災いを、
効果的で迫力あるCGで描き、その中を進んで行く
2人のシーンも今回の演出の意義、成功を象徴するシーン
だったと言えるだろう。

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このオペラはタミーノとパミーナの愛の勝利で終わっても
おかしくないのに、そこはエンタの神様モーツァルト。

パパゲーノによる「死んじゃうよ」のシーンでは高橋淳さん
演じるモノスタトスも加わらせての愉快な演出や、
客席の照明を休憩時間のように明るくすることで、
 「たくさんの人が世の中にはいるのに
  助けてくれる人はいない」
ことを伝えるなどの工夫がなされていた。

第1幕では中途半端な扱いに留まっていたゴリラ君たちも、
第2幕では結構重要な「役」を演じていて面白かった。

そして、パパゲーナをユーモラスなセリフと演技
でチャーミングに歌い演じた九嶋香奈枝さんとのデュオで
愉快に終えた。

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<ラストと冒頭に設定された現代家庭のシーンについて>

冒頭、演出で、序曲を演奏しているとき、
現代家庭でのシーンが演出されていて、
 「意味が解らない」としたが、最後の最後に、
再度、ステージでそのシーンが再現された。

要するに、男と女のありかた、親子の関係は、
家庭をみても現代にも脈々と続いていることなのですよ、
ということなのだろう。
それは解るが、この演出は私は無くてもよかったと思う。

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 <最後に指揮とオケについて>

いくら古典オペラの演奏でもやはり、もっとあざとく、
というか、強弱のダイナミクスがあって良かった。
要するに第2幕でもオケは平凡な演奏だったのだ。
もちろんこれは100%指揮者の責任。
以上です。

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