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2015年1月18日 (日)

FAF管弦楽団 第48回定期演奏会

大学同期のN君が団長を務めるFAF管弦楽団の
第48回定期演奏会を聴いた。

指揮は元ベルリン・フィルのヴィオラ奏者 土屋邦雄さん。
今、81歳だがとてもパワフルでお元気だ。
土屋さんが初登場された2008年のヴェルディのレクイエムを
聴いたときはあまり感心しなかったが、
この日はとても楽しめた。

演奏曲

1.ブラームス 交響曲 第3番

 (休憩)

2.ベートーヴェン 交響曲第7番


最初に音楽以外のことを書くと、このオケには
毎回 その集客力に驚かされる。
この日もすみだトリフォニーの大ホールはほぼ満席だったし、
ミューザ川崎でも8割は軽く埋める。
特にバックボーンが有るわけでもないだろうし、
VIPがいるわけでもない普通の組織だと想うが、
団員の毎回の努力と、家族だけでないコアの聴衆を
既に多く獲得している、ということだろう。
アマオケでここまで毎回集客できるオケは
決して多くはない。素晴らしい。

指揮者も天沼裕子さんなど、「意外な大物」を
ときおり招聘していることにも感心する。

それと、この日は新年明けて間もないということか、
女性奏者がそれぞれ色の異なるドレスを来て登場
したので、ステージがとても華やかだった。


前回での拝聴で知ってはいたが、土屋さんはユニークな人で、
指揮台を使わず、奏者と同じ平らなまま振るのだが、
そのステージへの登場も自分でスコアを持ち、
団員といっしょに出て来る、というスタイルだ。

そしてこの日は2曲とも前フリとしてトークもあった。

ブラームスの4つの交響曲の中で3番が一番難しい、
やりにくい曲であることはアマ奏者でも(いやアマ奏者こそ)
よく知る事実だが、それを聴衆に説明して
はたしてお客さんは興味深く思ったか、退屈だったかは
判らない。

それでもベルリン・フィル時代は7回か8回しか演奏して
おらず、1、2、4番に比べとても少なかったということと、
その3番を振った人の名前
 ~ヨッフム、カイルベルト、イッセルシュテット、
  Sr.ジョン・バルビローリ、カラヤン~らを挙げたのは
土屋さんならではだった。

ただ、どうせなら、なぜ3番がなぜ難しいか
 ~個性的リズムや6、9といった3拍子の応用拍子による
  設定等~という具体的なことを
もう少し詳しく説明して欲しかったが。

そして、
 「3番のオファーは前回も受けたが、当時は指揮者に
  なりたてということもあり断った。今回もまたあったが、
  理由が3番の第1楽章と団名に関係している
   ~Frei Aber Froh(自由にしかし楽しく)~
  ことを知り、名誉あることと知り、承諾した」
として演奏に入った。


  ブラームス 交響曲第3番

第1楽章
管と弦の音量バランスがとても良かった。
全楽章を通じてデリカシーが無視されていた感があった
のは残念だったが、この音量バランスはアマオケでは
なかなかできないことだと想うので、
この楽章の演奏はなかなか立派だった。

第2楽章
テンポが速いだけでなく、フレージング処理も曖昧で
キレイとはいえなかった。

第3楽章
情感ある演奏ではあったが、ときおり
3拍子タテの線が揃わない部分が散見されたのは残念だった。

第4楽章
この楽章は、土屋さんの情熱パションと曲想が合っていて、
音楽的にはこの終楽章が一番良かった。
ただ、終わりから9小節前からの弦の分散和音による
主題のメロディラインがあまり聞えなかったのは
 ~とても難しい部分であるは事は承知~惜しかった。


なお、この曲だけでなく後半のベートーヴェンもそうだったが、
土屋さんは各楽章間の間合いはほとんどとらず、
それぞれアタッカに近い感じで次の楽章に入っていったのは、
それなりに説得力があって面白かった。

もっとも、それゆえに弦奏者は楽章の終わり前数小節の
ところで、プルト裏の人が次の楽章のページをめくっておく
という動作が毎回なされることになり、
見ている側としても大変そうに見えた。


  ベートーヴェン 交響曲第7番

休憩後、2曲目の演奏前にも、先述と同様の登場のしかたで
土屋さんが登場して、団員が全員座る前から話し出した。
いわく、ベートーヴェンの9つの交響曲の中では、5番、6番、
そしてこれから振る7番は(自分には難しいから)
 振りたくない曲なのだが、FAFの最初の演奏会で
演奏した曲がこの7番なので、その曲のオファーを受ける事は
これまた名誉あることだと知り、受けた」とし、
  「でも辛(つら)いです」
と言って聴衆を笑わせてから演奏に入った

第1楽章
序奏からして落ち着いたテンポで、7小節の間に4回ある
トゥッティ和音強奏もどっしりとした音でとても良かった。
具体的に言うと、ほんの一瞬だけ低音楽器が先んじて入る
ことによりそういう音がつくれる。

昨今の若い指揮者(いや、小澤さんも含め、外人も含め)
多くの指揮者は、速めのテンポでサクッと進んで行くので、
面白くないこと極まりない演奏が多い中、
こうしたサウンドは貴重。

全体としてじっくりと落ち着いた演奏
 ~この楽章が熱狂が無くて良いか否かは別として~で
なかなか立派だった。

部分的には例えば301小節から308小節のヴァイオリンの
Aの音が微妙に揃っていない音程で聞えていた、ということは
あったが。

第2楽章
充実した合奏で、ヴィオラ奏者の土屋さんの指導成果が
見て取れた。 ただ、練習記号AとかBにおいて、
弦の中で主旋律を歌う楽器(パート)がバトンタッチして
受け継がれていく部分で、やや途切れた印象
 =有機的に流れていない印象を受けたが、
これは土屋氏自身が自分のことを(謙遜して)
 「歳はいってるが、指揮者としては未だチンピラ」
とする、その「チンピラ」が取れると、
こういうところの処理ももっと上手く行くということなのかも
しれない、と想像した。

あと、細かい事だと、249小節の
1st.ViolinのGisの音程がいまいちだった。

第3楽章
良かったが、冒頭のフォルテ音型が戻ってくる箇所
 (240小節、500小節)で、
ちょっと危なっかしい感じ(一斉に揃って出ていない感じ)
がした。

第4楽章
スタッカートによる歯切れよりも、全体としてのパワーを
引き出すことに注力された演奏という印象。
リズミックではなかったかもしれないが、音の充実感、
合奏としての力感としてはとても立派な演奏。

特に、378小節以降において、
384と386小節、390小節と392小節、396小節と398小節に
なぜヴィオラが弾くのか、を、その充実したヴィオラの音とともに
立体的に見せてくれる様な演奏は実に見事だった。

こういうところは、一流オーケストラの弦奏者として
長年演奏された氏の指導の成果だろう。


 全体として、土屋さんの指揮

振り方は、故・山田一雄さんをもっとメチャクチャにしたような
身ぶりだが、「どうしたいか」が聴衆にもよく伝わる指揮。

その点では、昨今の
 「整然としてマニュアル的で常識的でまったく面白くない
  多くの日本人指揮者」
より、ずっと面白かったし、勉強になった。
こういう人は貴重だ。

年齢は別として、もし土屋さんが指揮者コンクールを受けたら、
どのコンクールでも一次予選で落とされるだろうけれど、
実は聴衆が求め、聴衆を喜ばせる指揮者とはこういう人
のことを言うのではないか?と強く想う。

とても楽しかった。
またこのコンビでの演奏を聴かせて欲しいものだ。


アンコールとして「エグモント」序曲を演奏したのは驚いた。
8分くらいの曲とはいえ、アマオケが7番の後で
演奏するのは結構パワーが必要と想われるからだ。
演奏は、土屋さんの「この曲、好きなんです」という気持ちが
伝わってくる力演だった。


最後に1つ。
何年か前までは、FAFの演奏会で、
曲が終わるやいなや「これで終わりって知ってます」とでも
自慢したいかのような間髪入れず拍手する人がいて、
とても興醒めしていたのだが、
この日は2曲ともそういうことはなかったので良かった。
良い演奏会でした。お疲れ様でした!

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