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2014年8月 9日 (土)

東京混声合唱団 恒例の「八月のまつり」    信長貴富さんの新作初演~批判的見解    「死んだ男の残したものは」林光編曲はNO

2012年1月5日に林光さんが亡くなってから、
別の指揮者による3回目の「東混・八月のまつり」。

言うまでもなく、林さんの代表作「原爆小景」を
必ず歌う演奏会として継続されて来ている。

今回の指揮は同合唱団の指揮者の1人、大谷研二氏。

大谷さんが杖をついて片足を引きずりながら登場された
のには驚いた。

何でも数年前の事故が原因とのこと。

よって指揮する際は、高椅子に座って行った。

冒頭、まだ合唱団員が入場する前に大谷氏が登場し、

 「戦争はおろか、3.11の大震災でさえ、私たちは
  ともすれば忘れがちになる昨今ではないか。
  けれど、東混はこれからも「原爆小景」を歌い続けて
  いきます」

との宣言コメントはとても良かった。

ピアノ 斉木ユリさん

1.林 光 原爆小景  詩=原 民喜
 (1)水ヲ下サイ   (1958年)
 (2)日ノ暮レチカク (1971年)
 (3)夜       (1971年)
 (4)永遠(とわ)のみどり(2001年)

(休憩)

2.林 光  月わたし風 (1992年) 詩=宗 左近(1992年)
 (1)ながらえば
 (2)日が落ちた
 (3)月がある
 (4)この世は暗い

3.三善 晃  その日-August 6  詩=谷川俊太郎(2007年)

4.信長貴富 歌と石ころの転がる先に
       ~混声合唱とピアノのためのエレジー
         詩=和合亮一
     東混委嘱作 初演


アンコール

1.武満 徹「死んだ男の残したものは」 林光さん編曲版
2.「まつり」のお決まりの曲である「星めぐりの歌」
     宮沢賢治作詞作曲 林光さん編曲

「原爆小景」は何度聴いても偉大な作品だ。
演奏も素晴らしかった。
けれど、私には旧版の3曲目までだけで足りる。
  なぜそうか。

最大の理由は、従来の3曲で終わるほうが、
インパクトが強いからだ。

「永遠(とわ)のみどり」という明るい調性の曲が来ることで、
意図は理解できないこともないけれど、
この「調和」はやや「とってつけ感」がするのと、
詩に「ヒロシマのデルタ」と広島が明記されることで、
私には「長崎は?」という違和感が生じてしまうのだ。

そして、例えば、第3曲の「夜」で、今回の演奏で
感じたのは、 「ヨ ル~~」 の表現の弱さだ。

キレイ過ぎて聞こえてくるのは、指揮者の不注意にしても、
やはり4曲目があることと関係しているように想えてならない。

「原爆小景」が3曲目で終わることを継続していたら、
この「夜」における「ヨ ル~~」に最大の注力がなされ、
もっと切迫感を持って歌われるように想像できるのだ。

第4曲が設定されてしまったため、
第3曲が内在する「極限的な叫び」が相対的に弱まって
位置付けられてしまっているような気がしてならない。


さて、後半は今や合唱をやる人で知らぬ人はいない
売れっ子作曲家(上智出身)の信長貴富さんの
新作初演を楽しみにして聴いた。

その前に、林さんの「月わたし風」の4曲と、
三善さんの「その日-August 6」の2つがあり、
いずれも初めて聴いた。
私の理解度が、まだコメントするほどの段階ではないので、
今回は言及を避けたい。


そして、信長さんの「歌ところの転がる先に」の初演。

 「う~…む~……」 これは厳しい。

冒頭から、三善さんの「レクイエム」をすぐ連想するなど、
彼にしては珍しく語法に「パクリ」を感じてしまったのだ。

作曲に際して、彼にしては、これまでの戦争に関わる
三善さんや林さんの偉大な曲を前に、
必要以上に「構えて」しまったのではないか?と想像する。

これまでの「自分のスタイル」の流れの一環として、
和合さんの詩に向き合ったほうが良かったように想える。

もちろん今回一回だけの感想なので、今後、
私の感想や評価は変わるかもしれないが、
少なくともこの初演を聴いて、高評価はできない。

それでも、9月に彼の作品の何曲かをOB合唱団で歌うので、
会場で初めて実物の「生信長」を見れて楽しかった。


ところで、アンコールの恒例の「星めぐりの歌」は
素敵で楽しいのだが、
今回歌われた林さん編曲による武満さんの
 「死んだ男の残したものは」は、
私はかねてから否定的意見を持っている。

原曲の素晴らしさは言うまでもないが、
林さんの編曲が「全然ダメ」なのだ。

  林さんの編曲がなぜ良くないか、について

曲想がジャズ風なのは全然構わない。
それよりも、曲が進むにつれ、声を多重層に重ね合わせて
いくスタイルで書いているため、端的に行って、

  「詩を殺してしまっている」 のだ。

一番顕著な部分が「死んだ兵士が残したものは」の詩句で、
それまでの~死んだ男、女、子供では
 「○○ひとつ、残さなかった」と<さ>として続いてくる
のだが、

 兵士では「平和ひとつ残せなかった」、とこの曲の中で唯一、
  <せ>に変わるのだが、こんな重要な部分でも、

林さんの編曲ではこの周辺では大きな音量と各パートの
重なり具合により、<せ>を含むこの詩句全体の
センテンスがまるで聴衆に届いてこない、という結果が
生じてしまう。

これは、少なくともこの歌における
 「編曲の失敗」「失敗した編曲」と言わざるを得ない。
この曲は、武満さんによるオリジナルの合唱譜面で十分である。

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