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2013年11月 9日 (土)

オペラ 「リア」(Lear) アリベルト・ライマン作曲 日生劇場開場50周年記念 特別公演

昨年の「メデア」に続くアリベルト・ライマン(1936年生)の
 オペラ 「リア」 が、日生劇場開場50年記念 特別公演
として上演された。

1968年に、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウから
シェイクスピアの「リア」を作曲してはどうか、と
打診意見を受け、ライマンは当初戸惑ったものの、
10年かがりで完成。
1978年7月に、ゲルト・アルブレヒト指揮、
バイエルン州立歌劇場で初演された。

その後、ドイツで、1999年にザクセン州立歌劇場、
2008年にフランクフルト歌劇場、
2009年にベルリン・コーミッシェ・オーパー、
2012年にハンブルク州立歌劇場でと、
計5回上演されて来ている。

今回の日本初演、9日と10日の公演を観、聴いた。
ダブル・キャストは以下のとおり。

詳細な感想は下記のとりだが、第1部では、
ライマンの語法は複雑で精密ながら同じトーンの印象が
あるものの、後半である第2部は、
作品としても、歌手の皆さんにおいてもとても良く、
良いオペラだと思った。

指揮 下野竜也

管弦楽 読売日本交響楽団

演出 栗山民也

装置 松井るみ

衣装 前田文子

照明 服部 基


             11/8・10     11/9

 リ ア        小森 輝彦    小鉄 和広

 ゴリネル      小山 由美    板波 利加

 リーガン       腰越 満美     林 正子

 コーディリア     臼木 あい     日比野 幸

 フランス王      小田川 哲也   近藤 圭

 オルバニー公爵   宮本 益光   与那城 敬

 コーンウォール公爵 高橋 淳     高田 正人

 ケント伯爵      大間知 覚   小林 大作

 グロスター伯爵   峰 茂樹     大久保 光哉

 エドマンド       小原 啓楼    大澤一彰

 エドガー         藤木 大地(全日)

 道 化          三枝 宏次(全日)


合唱 二期会合唱団

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まずは、9日の公演の感想。

第1部は90分の長丁場。

「メデア」同様、この作品も、歌手泣かせで、いわゆる
美しいメロディー・ラインは皆無と言える。
オケの音も多くの楽器が断片的に無調の音を混ぜてくるので、
音をとるのは大変に違いない。

総じて男性のほうが、ドイツ語の発音がよく聞こえてくる。
女性はヴィブラートが邪魔してドイツ語の発音が曖昧になる。
オケが止んで、セリフの場面では、ゴネリル役の板波さんも、
リーガン役の林さんも立派なドイツ語だったから、
セリフに比べると、歌におけるドイツ語に関しては、
やはりヴィブラートが強すぎる感があった。
それでも、フランス語圏のジュネーブで暮らす林さんの
ドイツ語は立派だった。

男声では、エドマンド役の大澤一彰さんが
美しいテナーの声で魅了した。

ライマンのオーケストレーションは、音を断片的に使い、
刺激的な音を羅列する。
金管や打楽器、コントラバスの印象的な使い方等々は
特徴的で印象的。

そうした語法も、「メデア」では衝撃を受けたものの、
2作目となれば、聴く側の私としてもだいぶ慣れた、というか、
途中からはやや厭きるとは言わないものの
退屈になりかけていた。

けれど、残り3分の1~長いエピローグとも言えるようだ
 ~である、第3場から第4場にかけては、
それまでの賑やかなオーケストレーションから
打って変って静的で音の量を控えたシーンが続き、
とても印象的だった。
チェロのソロを含め、弦楽器が有効に使われる中、
リア王役の小鉄さん、
エドガー役のカウンターテナーの藤木さん、
「指輪」のミーメのようなおどけた役を演じる道化役の
役者(唯一歌手ではない)三枝さんらが、
実に魅力的に舞台を見せたのだった。

  第2部

まず、コーンウォール公役の高田正人さんが、
充実した高音の声が素晴らしかった。
「The JADE」での公演では、「ドイツ語はダメだ(不得意だ)」
と冗談を言ってたが、この舞台で充実した発音と声を立証した。
逆に失礼かもれないが、今まで聴いてきた高田さんの
歌声の中で、最も印象的ですらあった。
登場最後の、「血がたくさん流れている」、と驚き舞台を
去る(役として死ぬ)ときの低音も、
バリトンの様な良い声だった。

林さんも、中音域の独特の厚さと豊麗さのある声で魅了
した。
以前も書いたが、ジュネーブ在住ゆえ、
日本で歌声を聞ける機会が少なくて残念なのだが、
それでも、ひとたび登場すれば、オペラでもリサイタルでも
実に充実感ある、存在感ある歌声や演技を披露し、
貴重な歌手であることを感じさせてくれる人なのだ。
今回も あらためてそれを強く感じた。

第2場では、金管と打楽器の使い方が印象的だった。

第2部も後半からが、コントラバス以外の弦による
長いユニゾン旋律も含め、
特に印象的なオーケストレーションだった。


 リア役の小鉄さん
威厳はない。ドイツ語がややカタカナ的に浅く聞こえたのは
残念。でも、一番の長丁場で力演だった。

ゴネリル役の板波さん
先述のとおり、ヴィブラートが過多なのが気になったが、
存在感ある歌を披露した。

コーディリア役の日比野さんは、丁寧で凛とした歌唱で、
哀愁感はよく出せていた。

オルバニー公役の与那城さんは安定感ある声で立派。

グロスター役の大久保さんも独特の存在感を出した。

今回最も魅せられたのは、エドガー役の藤木さんと、
道化役の三枝さんだ。
特に藤木さんの歌と演技の充実感は素晴らしく、実際、
終演後の拍手も一番大きかったように思う。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

10日の演奏についての感想と9日との比較など。

  10日より

小山さん…ヴィブラートを徹底的に排して
       ドイツ語の明瞭さに力点を置いた見事な歌唱。

腰越さん…歌声も外見も実に魅力的。

峰さん…素晴らしいバリトン。大ベテランの世代の人だが、
      私は不勉強で知らなかった。


比べることは正当に論じる手法とは言えないかもしれないが、
せっかくダブル・キャストそれぞれを拝聴したので、
あくまでも 「より強く印象に残った」 という場合も含めて、
敢えて比べて言及させていただくと。

  リア
  王の風格、シリアスさで小森さん
  王の、男の愚かさ、軽薄さの表出で小鉄さん
  どちらを、と言えば、小森さんが特に印象的だった。

  ゴネリル
  ドイツ語の明瞭さで、小山さん。
  これはもう、キャリア的にドイツ語歌唱に長じている点で
  納得というところだ。
  板波さんはイタリア語歌手という面が出てしまっていた。

  リーガン
  甲乙付け難く、鋭さで腰越さん、豊麗さで林さん。
  林さんが優秀なのは判っているので、ここでは、
  あらためてその凄さ、力量、成長度に感心したという点で、
  腰越さんの健闘を讃えたい。

  コーディリア
  たぶん、女3役中、キャラクターの設定という点においては
  一番難しい役なのでは、と想える。
  ゆえに、その点では両日の2人とも、私はやや物足りなさを
  感じたが、それでも、丁寧で真摯な歌いにより、
  抑制された悲しみがよく出ていた点、および
  「Fater」というところのロングトーンの響の完成度において
  日比野さんが特に印象的だった。

  オルバニー公
  俗世的な巧さがあった宮本さんも良かったが、
  クールさと激情との表裏を巧みに出した点で
  与那城さんが特に素敵だった。

  コーンウォール公
  高橋さんも良かったが、
  高田さんの歌い込みの強さが本当に素晴らしかった。

  グロスター伯
  声量と声の質の充実度から峰さんが素晴らしかった。

  エドマンド
  甲乙付け難い。
  声の輝かしさでは大澤さん、
  ドラマティックな迫力と奥行きのある声では小原さん。


そして、比較ではなく、全ての公演での単独キャストとして
出演されたエドガー役の藤木さんと、
道化役のドイツ語による膨大な長大なセリフを、
ときにおどけながら語った三枝さんの2人は、
いくら褒めても、褒め足りないほどだ。


 オーケストレーションのメモ
  第1部
第2場がドラマティック。ゴネリルとリーガンの場面での
    金管、打楽器。
続く間奏も「嵐」というくらいだから、激しいもの。
第3場のあと、静けさ、アルトフルート
第4場 静けさ エドガー、リア
  リア・・・チェロのソロが素敵。

  第2部
冒頭 金管の叫ぶような強烈な響き。
第2場 オルバニーが去った後の、金管、打楽器の激しさ。
第4場での、グロスターがエドガーに
  「ドーヴァーに連れて行ってくれ」というところの、
  ヴィオラのソロが秀逸。
第5場での、少数のヴィオラとチェロの何気ない
  オブリガート~荒野
第7場 リアとコーディリアが逮捕されたときの打楽器。
そこから、ゴネリル、リーガン、エドマンド、オルバニーの
場面から、エドガーが来て、エドマンドとの決闘までの
金管、打楽器。

ゴネリルが自殺した直後の打楽器。
直後、リア登場のときは、第2部冒頭と同じような
金管の叫ぶような強烈な響き。
リア独白。エピローグでの、コンバスを除く弦のユニゾンが
 印象的。


 演出について

大ベテラン、栗山さんの演出は、狭い舞台空間を
効率的に使い、とても印象的だった。
ドイツでの上演の映像を見ると、衣装も徹底して
原始的にやっていて、それはそれで生々しいが、
今回のように、節度ある古代的衣装でも十分良いと
想われる。

 指揮者について

指揮の下野氏のベートーヴェンにはまるで興味ないが、
こういう現代曲は巧いなと思う。
こういう器用な指揮者は現代作品上演には重要だ。
ほとんどのところで、大きく4つとか、3つ、あるいは
5つ等に振り、その中に、オケが複雑な音、断片的な音を
紡いでいく。優秀なプロ奏者とプロ指揮者ならではの妙技だ。
もちろん、クレッシェンドやスフォルッツァンド、
ゲネラル・パウゼ等は、それぞれに応じた大きな腕の振りで
オケをリードしていた。

 オーケストラについて

オケも本当に素晴らしかった。
古典の作品では、今の時代、場合によっては、
アマチュア・オーケストラでも、プロオケに負けない演奏を
することは決して珍しくなくなったが、こういう現代作品は、
アマチュア・オケでは絶対に演奏できない、と断言してよい
だろう。
言い換えれば、現代作品を完璧に弾ける人、
吹ける人がプロ演奏家で、
できない奏者がアマチュア、と言えるだろう。

 作品総評

「ヴォツェック」以降に書かれた現代オペラの中で、
 最も立派なオペラに思えた。

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