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2013年9月15日 (日)

池辺晋一郎さん 「第九」 世界初演

この日に70歳の誕生日を迎えた池辺晋一郎さんの
交響曲第9番が東京オペラシティで初演された。
バリトンとソプラノのソロを伴う50分くらいの力作。

バリトンは宮本益美光さん、ソプラノは幸田浩子さん。

指揮;下野竜也

管弦楽;東京交響楽団

演奏曲

1.悲しみの森 (1998年作)

2.木に同じく~チェロとオーケストラのための協奏曲
    (1996年作)
  チェロ…向山佳絵子

 (休憩)

3.交響曲 第9番~ソプラノ、バリトンとオーケストラのために
      世界初演
   バリトン…宮本益光
   ソプラノ…幸田浩子
    詩:長田 弘


まず前半は、90年代後半の2つの作品。
既にCD等で聴いているが、特に尾高賞受賞作でもある
 「悲しみの森」の響がユニークな点が面白かった。
 「木に同じく」を弾いた向山佳絵子さんはこの曲の初演者
でもあるのだが、いまひとつパッションが弱い感じがする演奏
だった。


そして休憩後の後半、いよいよ「第九」の初演だ。

この作品は、この演奏会会場である
東京オペラシティ コンサートホール開館15周年記念委嘱作品
として書かれたもの。

ところで、ベートーヴェンに「第九」以降、交響曲を9曲以上
作曲した人は限られる。
その少数者たちにとって、9曲目のシンフォニーを書く際に
 「第九」は圧倒的なプレッシャーとして立ちはだかって来た
ようだ。

マーラーは9番の交響曲を書いたら死ぬかもしれないと恐れ、
9曲目を「大地の歌」と名付けた。
結局その後、全ての交響文献史上の中で最も美しく偉大な
 「9番」を書いたのだが、
初演を待たずして本当に死んでしまった。

ショスタコービッチは敢えて小さくユーモラスな、というより
 「ふざけた」(でも立派な)作品を書いた。


そして今日、池辺晋一郎さんの「第九」が初演された。
冒頭に記載のとおり、バリトンとソプラノのソロを伴う50分くらい
の力作。

詩は、池辺さんが以前より愛読しているという 長田 弘さん
という詩人によるもの。

以下のように、全9楽章のうち、6つの楽章で歌を伴う。

Ⅰ.「世界の最初の一日」 by バリトン 一部ソプラノ

Ⅱ.Splash

Ⅲ.「遠くからの声」
   「森をでて、どこへ」 by ソプラノ、バリトン

Ⅳ.「世界はうつくしいと」 by ソプラノ、バリトン

Ⅴ.Choral

Ⅵ.「人の一日に必要なもの」
   「切り株の木」 by ソプラノ、バリトン

Ⅶ.「むかし、私たちは」 by ソプラノ

Ⅷ.「立ちつくす」
  「春のはじまる日」 by ソプラノ、バリトン

Ⅸ.空と土とのあいだで
  この楽章のタイトルは同様に長田氏の詩のからのもの
  だが、オーケストラ演奏だけの楽章


 感想

池辺さんが音楽教育を受けた時代(その背景)は、
いわゆる無調、12音階音楽の流行全盛だったから、
いくら優秀な人でも、いや優秀であればあるほど、
その影響を皆無として今の時代の新しい作品として
世に送り出すのは~良し悪しでなく~難しいのだろうと
容易に想える。

よって、この新作の第九も、最近の解り易い、いわば
調性回帰という作風とは全く違う。

だから、「楽しい作品か?」と問われれば「ノー」と答える。

「解り易く、美しいか?」と問われれば、
「特別、理解に苦しむとかいう曲想ではないが、
 無調性を基盤に置いていることには変わらず、
 響自体は美しい場面も出てくるが、
 キレイな曲かと聞かれたら、ノーと言える」、と答える。

一番気になったのは、宮本さんと幸田さんのヴィブラートだ。

池辺さんはこの2人を気に入っていて、2010年の
自作オペラの「鹿鳴館」でも起用し、来年の再演も2人
ということで決まっているという。

私も幸田浩子さんの大ファンだが、日本語の歌唱では、
意識的にヴィブラートを排さないとイタリア語に慣れた歌手
ゆえ、そして、池辺さんが書いた調性の無いまま音域を上下
する曲想的にも、違和感を伴う日本語歌唱となり易い。
宮本さんの場合は更にそれが顕著だった。

なので、私の勝手な想像と意見では、ソプラノもバリトンも、
もっとヴィブラートが普段から抑制された歌手
 ~何人か思い当たるが、敢えてここにはその名前は
  書かない~
を起用したほうが、もっと良かったのではないか?という
思いが最後まで消えないまま演奏は終わった。

終演時は、たくさんの池辺ファンが来場されているようで、
決して解り易い曲では無かった割には盛大な拍手が続いた。
もちろんそれは、バースデーケーキも登場したステージ
における池辺さんへのご祝儀としての拍手という点は
含まれるだろう。

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