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2013年9月 9日 (月)

山田和樹さんによるモーツァルトの解説講座

以前も書いたが、山田和樹氏に興味を持ったのは、
若くして三善晃さんの「レクイエム」をとりあげたことからだ。
 「ただ者ではない」と思うと同時に羨望の念を
禁じえなかった。

ライブやCDも結構聴いている。
ブログに書いたものを時系列で書くと次のとおり。

①2007年10月12日…三善晃「レクイエム」の
  ピアノリダクション版CDのこと
②2012年2月19日
  …アマデウス・ソサイエティー管弦楽団演奏会
③2012年8月9日
  …東京混声合唱団演奏会 林光さん追悼公演
④2012年8月11日…新日本フィルの演奏会

⑤2012年8月19日
  …サイトウ・キネンでの「火刑台上のジャンヌ・ダルク」

この日は、朝日カルチャー講座で、
 「指揮者が語るモーツァルト」と題してのもの。
アシスタントピアニストは、桐朋学園大学4年の石井楓子さん。

資料として配布されたものは、交響曲の数小節の写しが
印刷されたもの

1.交響曲第35番「ハフナー」の第1楽章の冒頭29小節間

2.交響曲第39番
 ①第1楽章の冒頭34小節間=18小節の序奏と
                   アレグロに入って16小節間
 ② 同 第2楽章の冒頭10小節間
 ③ 同 第3楽章の冒頭22小節間
 ④ 同 第4楽章の冒頭17小節間

3.交響曲第40番
 ①第1楽章の冒頭32小節間
 ② 同 第2楽章の冒頭8小節間
 ③ 同 第3楽章の冒頭10小節間
 ④ 同 第4楽章の冒頭9小節間

4.交響曲第41番「ジュピター」
 ①第1楽章の冒頭16小節間
 ②第2楽章の冒頭12小節間
 ③第3楽章の冒頭19小節間
 ④第4楽章の冒頭17小節間

加えて、
5.ピアノソナタ第10番 K545の第1楽章


山田さんはまず、
「人が演奏するモーツァルトで、私が途中で寝てしまう
  確率 80%」として、その理由をこう述べる。
「起伏の無い演奏が多いのです。モーツァルトの音楽は
 本当はもっと楽しいはず。楽しめるはず」、として、
あまりにも教科書的な演奏が多いことを述べた。

以下、各交響曲の冒頭を石井さんに弾かせながら、
「いやいや、そこはもっと○○のように」と修正していくかたち
で進めていった。
オケに注文することをピアノソロで置き換えたかたちによる
講座だ。

そしてこうも言う。

「他の作曲家だと、ステージにいて、客席からパワーを
 もらうことがあるが、モーツァルトに関しては
 そうとは限らない」

「バッハはやはり基本は教会音楽。時間の流れが無い。
 ベートーヴェンは明らかに在る。
 時間の中で場面 場面がある。
 モーツァルトはその中間。
 時間の流れがあるような、無いような。

 よって、それをどうつくるか。
 例えば、16分音符のキザミ。
 気圧~強弱というよりディレクション(方向性)を
 つくること」

「モーツァルトの楽譜はFとPくらいしかない。
 クレッシェンドもあまり書いていない。
 これらを「真に受ける」と間違える。
 Pでも、柔らかい、温かい、Fでも強い、激しい、など
 いろいろある。
 欧州ではFは大きくではなくグランデ、
 Pは弱くというよりも室内楽的に奏すること、と
 一般的に解される」

と解説された。


譜例1の35番の冒頭では、
「(1~5小節の)2オクターブの跳躍は「大事件」なんです。
 解ってもらえないかもしれないですが;笑」。
「6~9小節はカンタービレ。10からは決然と」
Fに向かう場合はたいていクレッシェンドと考えてよい。
など。

譜例2の①、39番の冒頭では、
2小節目3拍目からのヴァイオリンはPで降りてくるが、
「Fに向うのでクレッシェンドを」、7~8小節の
 セカンド・ヴァイオリンとヴィオラ、チェロ、コントラバスは
 テヌートで。
 その上をファースト ヴァイオリンはミステリアスに
 歌って。表拍をとらないで(目立たせないで)」


あとは時間の関係上、
2の④の第4楽章冒頭のファースト ヴァイオリンは
とても難しく、「オケ入団でのテストでよく出されるところ」。

3の①の冒頭は、上昇音型でクレッシェンド、
下降はディミヌエンド。

4の①冒頭は、FとPの対比を鮮やかに、
4の③の音型はユニークな流れ。
下がったら上がる、上がったら下がる、という
常識的な進行とは異なる、という意味で。

4の④の冒頭、ド-レ-ファ-ミの進行における
余話として、
「ブラームは意識してかしなくてか判りませんが、
 4つの交響曲は1番がハ短調(ド)、2番が二長調(レ)、
 3番がへ長調(ファ)、4番がホ短調(ミ)、と、
 4つの音の進行に沿うような主音により作曲して
 います」と話した。


そして、最後に更に面白かったのは、石井さんに、
あの単純にしてとても有名なソナタの第1楽章を
「思うまま弾いてください」とし、演奏後
「なぜ、あまりペダルを使わなかったの」と問いかけた後、
「世間では、ピアノでモーツァルトを弾くとき、
 あまりペダルを使わないと教える先生が多いことは
 知っていますが、それはどうだろう?と疑問に
 思います」とし、

今度は石井さんに、ロマン派の曲のようにペダルを
多様して弾かせた。

冒頭の 「もっと楽しくてよい」とする主張と同じ見解で、
いわば地味な端正なだけの演奏より、
多少ハデでよいから、
思いのまま感情を出して演奏すべきだ」
ということだと思う。

基本的には賛成だ。

このように、実際的な指導を見、聴かせながらの講義は
実に楽しく、勉強になった。

終了後、CDサイン会で初めて話した。

「私はアマチュアオケでヴァイオリンを弾いていますが、
 昔、岩城宏之さんと「ハフナー」をやり、弦楽器群は
 とても怒られたということがあったんです」
と言うと、
「そうでしたか。岩城さんだと、キリッとした
 良いモーツァルトをやりそうですね」。

また、
「昨年、武満の合唱の演奏会や、サイトウ・キネンでの
 「ジャンヌ・ダルク」を聴かせていただきました」
と言うと、少し目を見開いたように、
「そうですか。これからもどうぞよろしく」
という会話をした。

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