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2013年5月19日 (日)

ヒラリー・ハーン リサイタル 水戸芸術館     委嘱作品と Bach と 意欲的なプログラム

ヒラリー・ハーンのライブ演奏をとうとう聴いた。
17歳で録音したバッハの演奏に驚愕して以来、
関心を持ち続けいていた。
2011年3月に聴く予定だったが、直前に起きた
東日本大震災で、その年の来日は無くなった。

5月11日の名古屋しらかわホールを皮切りに行われた
今回のツァーの最終公演の地は、1年前に亡くなられた
吉田秀和さんが館長をされていた水戸芸術会館で、
私はホールだけでなく、水戸自体、初めて行った。
上野から特急で70分強かかるので、関東圏とはいえ、
近いとは言えない。

今回のツァーでは、ヒラリー自身が世界の26人の作曲家に
5分前後での曲を委嘱したプロジェクトである
 「27の小品:ヒラリー・ハーン・アンコール」
 ( In 27 Pieces : Hilary Hahn Encores )
  ~27曲目は、全世界から一般公募~
からの曲をメインとし、他はバッハやフォーレ等を置く、という
実に個性的で意欲的な、魅力的なプログラムを持って来た。

なお、27日の中には日本人作曲家としては、
大島ミチル氏と佐藤聰明氏が入っており、
今回の中にも大島氏の作品が含まれている。

ピアノは即興演奏や現代音楽演奏で評判が良いという
コリー・スマイス氏。選曲的も適任と言えるだろう。

曲目は

1.アントン・ガルシア・アブリル(1933~)
   “First Sigh” from “Three Sighs”

2.ディヴィッド・ラング(1957~) “Light Moving”

3.モーツァルト ピアノとヴァイオリンのためのソナタ
    変ホ長調 K.302

4.大島ミチル(1961~) “Memories”

5.J・C・バッハ シャコンヌ

 (休憩)

6.リチャード・バレット(1959~) “Shade”

7.エリオット・シャープ(1951~) “Storm of the Eye”

8.Gフォーレ ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調

9.ヴァレンティン・シルヴェストロフ(1937~)
Two Pieces for Violin & Piano
  ①ワルツ ②クリスマス・セレナーデ

アンコール
1.ジュームズ・ニュートン・ハワード“133...at least”
2.デヴィッド・デル・トレディッチ “Farewell”


 感想

1.アブリルの“First Sigh” from “Three Sighs”
 即興的掛け合い。ピアニストは即興演奏家としても
 活躍されているそうだから、ぴったり。

2.ラングの“Light Moving”
 ヴァイオリンは終始分散和音を駆け巡る感じの曲。

3.モーツァルトのソナタ
 オーソドックスに、古典の曲として弾いた。

4.大島ミチル“Memories”
 出だしは日本風。ほどなく非常に高い音を使っていて、
 とても興味深く聴いた。
 ヒラリーの特性を活かして見事な作品。

5.バッハの「シャコンヌ」
 委嘱作品がメインとはいえ、この曲がこの日の演奏会の
 大きな位置を占めていることは言うまでもない。
 17歳で録音をした演奏に驚嘆して以来、直に聴くチャンスを
 待っていた。
 実に見事な演奏だった。

 半径1メートルの見えない線の中を上下左右に体を行き来
 させながら、ヒラリーはどう弾いたか?

 ヴァイオリン音楽の最高峰の作品。30に及ぶ変奏曲を
 ヒラリーはときにダンスのようだったり、静謐な瞑想だったりと
 変奏曲単位ごと、いや、極端に言えば、1小節ごとに、
 音量、速さ、強さ、堅さと柔らかさなど絶妙に変化
 させながら色分けしていく。
 
 といっても皮相な派手さ意表を突く奇抜さなどは皆無で、
 むしろ全体としてはシックな気品ある安定感のある演奏
 という印象だ。
 各変奏の表情付けを変化させながらも、全体としては
 確実に「3拍子としての音楽」をキープしていく。
 それを基盤に置くことを決して忘れたりはしない、
 そうした誠実さが演奏の基盤にあるのだ。

 本当の意味での音楽的な演奏。純度の高い、格調高い名演だ。
 演奏後の拍手は、それまでの曲の2倍か3倍大きな音で、
 長く続いたのだった。

休憩後、

6.バレット“Shade”
  正に現代的な曲で、なかなか面白かった。

7.シャープの“Storm of the Eye”
 これまたとても現代的な曲想なのだが、とても良かった。
 重音を含めた種々の奏法をふんだんに盛り込んだ
 意志の力に満ちた曲。

8.フォーレのソナタ
 第2楽章の瞑想的な演奏、第4楽章のロマン性。見事。
 全体が気品のあるソフトで清らかなスケール感をもった演奏
 で、とても良い演奏だった。
 拍手の大きさも、「シャコンヌ」に負けないくらい
 大きく長く続いた。

9.シルヴェストロフの①ワルツ ②クリスマス・セレナーデ
 アンチ・現代音楽と言ってよいほど、ロマンティックで
 夢見るような優しさをもった曲。
 印象的な音によるエンディングも、この曲というより、
 この演奏会を締めくくるに相応しい「エピローグ的」な
 曲想を持った作品。


アンコール
1.ジュームズ・ニュートン・ハワード“133...at least”
  作曲者名と曲名を告げてから演奏。もちろん英語で。
  親しみ易い素敵な曲

2.デヴィッド・デル・トレディッチ “Farewell”
  日本語で、「最後の曲は…」とヒラリーが言ったので、
  会場爆笑。
  これも親しみ易い素敵な曲


もう一度全体としては、前半はバッハを別とすれば、
大島ミチルの作品が私には一番面白かった。
後半はエリオット・シャープの曲が面白かった。もちろん、
フォーレは大曲だし、清々しいまでに気品に満ちた名演
だったし、シルヴェストロフの曲は予想に反して
とても美しい曲で良かったし、
アンコールの2曲も親しみ易い曲で素敵だった。

あらためて、現代屈指の素晴らしいヴァイオリニストである
ことを確認できた。

終演後のサイン会では200人くらいならんだだろうか。
私ももちろんサインをいただいた。

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