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2012年8月 9日 (木)

原爆小景~林光追悼 東混八月のまつり

毎年8月、作曲家の林光さんは東京混声合唱団と演奏会を
開いていた。
1980年を第1回として開催し続けてきたそのコンサートの
プログラムに毎回必ず入れていたのが自身の作である
 「原爆小景」 である。
第1部の「水ヲ下サイ」は1958年に、
第2部「日ノ暮レチカク」と第3部「夜」は1971年に完成して
いて、この構成による曲と思っていたが、
林さんは2001年に、それまでの無調やトーンクラスターを
駆使した3曲とはうって変わって、単純な調性をもった
 第4曲「永遠(とわ)のみどり」を作曲して加え、
完成版としたのだった。

その林さんは今年1月5日に80歳で永眠され、したがって
この日の演奏会は「主(あるじ)なき最初の」演奏会であり、
「光さんにさよならは言わない」追悼コンサートとして開催
された。

指揮は、林さんと20年以上いっしょに共演してきた
ピアニストの寺嶋陸也さんと、今をときめく大活躍の
1979年生まれの山田和樹さん。

寺嶋さんは正に林さんが自作自演指揮する姿をずっと
見て聴いてきた人だし、
東京混声合唱団のレジデンシャル・コンダクターでもある山田さん
は20代のときに三善晃さんの「レクイエム」を取りあげるなど、
現代曲や合唱曲も積極的に指揮してきている人だけに、
追悼演奏会に相応しい2人。

曲は

1.原爆小景  指揮…寺嶋陸也

2.コメディア・インサラータ
   指揮…山田和樹  ピアノ…寺嶋陸也

(休憩)

3.日本抒情歌曲集より
  浜辺の歌 野の羊 この道 曼珠沙華 ゴンドラの歌

   指揮…山田和樹  ピアノ…寺嶋陸也

4.うた ねがい  指揮&ピアノ…寺嶋陸也

アンコール
1.武満徹 作曲、林 光編曲 「死んだ男の残したものは」
2.林 光 作曲 「星めぐりの歌」


感想

1は今さらながら強い感動を覚える曲。寺嶋さんの指揮も、
この曲をずっと指揮してきたのではないかと思えるほど見事
だった。
ただ、曲としては私はやはり最初の3曲で完結していても
良かったように思える。
林さんがどういう思いで第4曲を加えたのか、
今の段階では私はよく理解できない。
単に単純な調性の曲に戻ったことに不満があるという
のではないのだが、例えば同じく原民喜さんによる詩とはいえ、
 「永遠のみどり」では「ヒロシマのデルタに」という言葉が
出てくるので、ナガサキに対する原爆としての関係性に
いみじくもやや難が生じてしまうような気がすることも
疑問の1つである。

2は、「サラダ記念日」で有名になった俵万智さんの
 12の短歌に作曲したもの。
 山田さんのムリの全くない自然な指揮ぶりが印象的。

3はそれぞれ著名な曲を林さんが編曲したもの。

4は佐藤信さんの詩に林さんが1985年に作曲したもの

アンコールの1は、山田さんが冒頭の入りだけを振って
 すぐ舞台に下がり、合唱とピアノに任せた。
 武満さんの有名な強い感動を持った曲だが、ただ、正直、
 林さんの編曲はやや「添え過ぎ」ている感があり、
 原曲のままのほうが良いと思った。
 特に、歌詞的にピークとなる
 「死んだ兵士が残したものは~、平和ひとつ残せなかった」
 という、それまで、「残<さ>なかった」を
 ここだけ「残<せ>なかった」としている部分は
 4声がいっせいにたたみこんで歌ったほうが絶対に良いのに、
 林さんは女声だけで旋律を書き、男声をオブリガート的な
 かたちにしていたので、この重要な部分が「弱かった」
 のだ。とても残念。

アンコールの2は寺嶋さんの弾き振り。
 ピアノによる同じ音型が何度も繰り返される中、
 童謡っぽく単純に優しく語りかけるように歌われる
 印象的な曲。
 林さんを送るのに相応しい曲だったと思う。

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