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2012年3月11日 (日)

町田フィルハーモニー合唱団 第12回演奏会 バッハ ロ短調ミサ曲 素晴らしい演奏

3月11日のこの日は、プロ、アマを問わず、全国各地で
演奏会が開催されたと推察する。

私は 町田フィルハーモニー合唱団の第12回演奏会を
横浜みなとみらい大ホールで聴いた。

曲はバッハの「ロ短調ミサ」。
ミサと言ってもレクイエムではないし、もともとこの演奏会は
東日本大震災が起きる前に~よって3.11も偶然に~
開催が決定していたもの。

後述するが、この合唱団は定演としては年に2回とかではなく、
1回でさえもなく、ほとんど1年以上の間を置いて入念に練習を
積んでくる。
したがって出てくる音楽=演奏された内容も、実に余裕のある
温かな余韻を内包した魅力的なものとなるのだ。


さて、演奏者が全て登場してから、演奏に先立ち、
団から挨拶があり、「演奏に先立ち、全員で黙とうを捧げたい」
として、聴衆も全員起立して黙とうしてから開始した。
本当は2時46分が好ましいのかもしれないし、
そうした演奏会も多々あったようだが、何しろ大曲で、
しかも峻厳とした曲想が続く曲なので、2時を少し回った、
曲が開始される前、としたことでも何らとくにどうこうコメントを
要しないだろう。

とにかく、ステージ上の全ての演奏者、客席も全ての聴衆が、
他の演奏会のそうした皆さん同様、御魂に祈り、
今なお厳しい状況の人々をあらためて心に浮かばせながら、
演奏が開始されたのだった。

指揮は過去、2度この合唱団を指揮している松井眞之さん。
ベテランらしい 的確にして風格ある指揮ぶり。

管弦楽は前回の「メサイア」と同じ東京ヴィヴァルディ合奏団。

ソプラノ永崎京子さん、アルト戸畑リオさん、
テノール経種廉彦(いだね やすひこ)さん、
バス浦野智行(ちゆき)さん
オルガン鈴木真澄さん


感想

合唱団主催の演奏会なので、合唱団のことから書くべきだろうが、
実は失礼ながら想像以上に素晴しかったので、合唱については
敢えて最後に書かせていただく。


   ソロ歌手について

アルトに比重のある曲だが、戸畑さん、とても安定した歌唱。

ソプラノの永崎さんは、高音で伸ばすところが、ロマン派の
オペラアリアのようにヴィヴラートをかけるわけにはいかない
ためか、ややバロックトーンを意識し過ぎたきらいがあり、
ちょっと棒伸ばしのような無機質さを感じたのは気になった。

なお、第一部および第二部のそれぞれ2曲目の
ソプラノとアルトのデュオの際、ステージの関係もあるにしても、
指揮者を挟んで左右に別れて配置させ歌わせた点はやや疑問。
実際、デュオ曲でハーモニー的に不揃いなところも幾つか
あって気になった。

テノールの経種さんは声量こそ控え目だが、リリックの良い声。
バスの浦野さんは地味ながら、温厚な声でこうした曲には
合っていると思う。

   オーケストラ

オーケストラは「メサイア」のときも書いたが、
立派な室内管弦楽団で、まったく申し分ない。
曲中のソロ演奏も、コンマスはもちろん、第1トランペットと
トランペット群、オーボエダモーレ、そして終わり近く、
フルートのソロは特に素晴らしいデキ。

なお、オルガン奏者についてはプログラムには名前だけ
記載があるだけだが、鈴木真澄さんという奏者は
とても良い演奏をしたことはぜひ書き加えたい。


   合唱団

合唱だが、開始早々、失礼ながら、
「あっ、こんなにうまかったんだ」とあらためて感心した。
特に男声であるテノールとバスがいずれも発声にムリの無い、
温かな柔らかなトーン。しかも、アマチュアにありがちな
「合唱を始めて間もないころの棒のような声というのは皆無」。
音程もトーンも安定していて素晴らしい。

女声も伸び伸びと歌っているが、慾を言えば、
アルトはもっと聞こえてよい。前に出してよいと思う。
ソプラノも安定していたが、もっと遠慮なく出ても良い場面は
あったようにも想える。ただ、大曲ゆえ、そうそう最初から
ガンガン歌うわけにはいかない、ということはよく理解できる
から、これは「無いものねだり」の範囲。

全体としても挙げるたらきりのないほど良いところは多々あった。
第一部「Kyrie eleison」のフガートも立派な進行だったし、
「Qui tollis peccata mundi」の3拍子は楽譜の見た目よりは
実際は難しいはずだが、キレイに進行していたし、
第一部最後の「Cum Sancto Spiritu」は16分音符の進行が
各パート難しいと思うが見事だった。

第二部でも安定した運びが継続されており、
冒頭の「Credo in unum Deum」の進行は常に柔らかく
美しいトーンだったし、「Et incarnatus est」は第一部の
「Qui tollis~」同様、三拍子の進行は楽ではないはずだが、
丁寧な運びだった。

そして「Crucifixus」でのパート間の安定した受け継ぎから、
これまた16分音符が大変な「Et resurrexit」を
しっかりした音程で乗り切り、
「Confiteor unum baptisma」後半のアダージョから一転
しての「Et expect resurrectionem」にうまく切り替えて
からは、「Sanctus」以降、速い3拍子で16分音符が
多用される「Plenisunt coeli et terra」や
「Osanna in excelsis」では既にノド=声や体力的にも
相当キツイ段階だったはずだが見事に歌い継ぎ、
最後の雄大なフガート「Dona nobis pacem」を
立派に歌い終えたのだった。


冒頭に記したとおり、この合唱団の演奏会運営に関する特色
として、1996年9月の第1回から、次ぎの演奏会までは
各ほぼ1年以上、長いスパンのところでは1年半も間をあけて
公演に臨んでいるということが指摘できる。

今回の日時決定は昨年の「3.11」よりも前に決定されており、
実際、演奏会のチラシは昨年9月の段階で既にプリントアウト
されていたのだ。
これだけ時間を費やしてコツコツと仕上げていくことは
特にアマチュアにとってはとても重要なことだと思う。

それだけ時間をかけてじっくり練習を重ねてきていることが、
今回の演奏会でも如実に表れていたと思う。
前回2010年8月の「メサイア」での素朴さも良かったが、
いわゆる技術的なレベルという点では特に男声がトーンの
美しさと音程の安定感とで進歩著しい感があったと思う。

今回一番感じたことを、非常に僭越な言い分を承知で
敢えて言わせていただくと、

 「指揮してみたい合唱団」
 「指揮させていただきたいほどの魅力を持った合唱団」

ということ。

指揮はともかく、今後も毎回拝聴させてだきたいと思う
ごく稀な合唱団だ。

   お疲れ様でした。素晴らしかったです。

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