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2012年2月11日 (土)

「VOICE SPACE」~「詩と音楽のコンサート」 with 谷川俊太郎さんと谷川賢作さん

言葉、日本語というものが他の言語同様、言葉である以上、
一定の規律、文法によるある種の「縛り」の中に収められて
いるのは当然だし、時代的あるいは地域的な違いや変化等が
当然在るにしても、あるいは漢字とひらがなによるこれも
時代的地域的に微妙な組み合わせの彩(いろど)りが在るにしても
言葉である以上一定の規範に従うことは自明であり、
これに抗することは相当難しい、という一般論は成立するだろう。

「VOICE SPACE」というユニークな、人員構成的にも
折々で変化する弾力性のある集団が、
公演の最後で「明日」を歌うのを聴くと、
彼ら彼女らの目指す先が「可能性」~ある種漠然とした、しかし
それでも確実に前に向かって歩いて行くという「希望」に立脚した
何か新しい創造を生んで行こうとするいわば
「可能性そのものを紡(つむぎ)ぎ出すかのような創造の原動力」
を思い浮かべたのだった。

もちろん彼ら彼女たちは新劇等の純然たる劇団ではないし、
西洋の絶対音楽を核とした純然たる音楽集団とも異なる。
描かれる、空間に生み出されるもの~言葉と音楽と身体による
表現は、その中でどれが主でどれが従とか言うことは
あまり意味を為さないように思える。

常に空間の中で言葉と音が交差し、あるいは身体的な躍動が
交差する。
創り出されるものは確かに前衛的で斬新なイメージを受ける
ものが多くあるが、しかし同時に、それは民話的で原始的で
あったり、土着的で牧歌的で単純無垢な要素も有している。

言葉や音が奇妙に断片的に投げ出されても、
不思議な統一感をもって空間に描かれる、あるいは
そういう可能性を目指しているかのように言葉や音が発せられて
いるように想像できる。


作品の中で多くを作曲している中村裕美による創作が
「VOICE SPACE」のユニークな世界を形作っているのか、
あるいはいわば最初から「VOICE SPACE」という独自の
個性的な世界が空気としてあって、中村裕美が
それに彩るように作曲しているのか、いずれかは判らないが、
たぶんその両方が真実でもあるように想える。

私としては2010年12月以来、今回が2回目のステージの
拝見拝聴となるので、さすがに初回の「困惑的な衝撃」は薄らぎ、
客観的に楽しめた。

もちろんそれでもある種の違和感、と言っても
否定的なものではなく、「快感」と言ってもよいような、
いわば「肯定的な違和感」というイメージ、
そうしたユニークな空間パフォーマンスの楽しさを
あらためて感じることができた。


そして、なんと、私にとって高校生時代からの憧れの詩人
である谷川俊太郎さんとご子息でピアニスト作曲家の
谷川賢作さんとの共演としての公演だった。
「VOICE SPACE」と谷川親子とは度々共演されていることは
知っていたので、いつか直に拝聴したいとずっと思っていた。


2月11日、都営新宿線の船堀駅のすぐ近くにある
「タワーホール船堀」というなかなか立派な施設の小ホール
での公演に出かけた。

プログラム(パンフ)に記載された内容をそのまま書くと、

主催=いるかいる会
    (江戸川区にほんご文化プロジェクト実行委員会)

後援=江戸川区

 「VOICE SPACE Presents 詩と音楽のコンサート①
  with 谷川俊太郎と谷川賢作」
 ~わくわく どきどき ことばであそぼう

である。

この日、まず11時から「親子向け公演会」があり、
13:30から「大人向け公演」があり、私は拝聴したのは後者。

プログラムによれば、そこでも「親子向け」でも9作品演奏されて
おり、「大人向け」と共通する曲は
冒頭の「どこへいくのですか?」のほか、
「したもじり」という計2曲だけで、あとはそれぞれ別の曲。

また、公演を①としているから、今後、出演者や会場(ホール)が
どこかはともかくとして、コンセプトとしては継続されて
いくのだろう。

以下、個別に感想を簡単に記す。


1.どこへ行くのですか? (詩;佐々木幹郎 曲;中村裕美)
   出演者=全員

2.りんごへの固執 (詩;谷川俊太郎 曲;中村裕美)
   語り;薬師寺典子 Violin 朝来桂一

3.愛のあと (詩;谷川俊太郎 曲;谷川賢作)
   朗読;谷川俊太郎 Saxophone 大石俊太郎
   Cello 関口将史 Piano 谷川賢作

4.したもじり (詩;谷川俊太郎 曲;中村裕美)
   尺八;渡辺元子 鼓;石井千鶴

5. Be Sleep Baby (曲;武満徹 編曲;谷川賢作)
   Irish Flute;豊田耕三 Violin 朝来桂一

6.どこのどなた (詩;まど みちお 曲;中村裕美)
   語り;澤村祐司 Saxophone 大石俊太郎
   Cello 関口将史 Piano 谷川賢作

7.朗読と歌のリレー「こころ こころ」(詩;谷川俊太郎)
   全員が数名ずつ
  ・こころ1(朗読)
  ・襤褸(曲;石井千鶴)
  ・こころ ころころ(群読)
  ・悲しみについて(朗読)
  ・ころころ(曲;谷川賢作)
  ・こころ ころころ(曲;中村裕美)
  ・まどろみ(朗読)

8.詩人は辛い (詩;中原中也 曲;谷川賢作)
   Vocal 小田朋美、澤村祐司、薬師寺典子、黄木 透、
       中村裕美、渡辺元子、石井千鶴
   Saxophone 大石俊太郎 Violin 朝来桂一
   Cello 関口将史 Bodhran 豊田耕三 Piano 谷川賢作

9.明日(詩;佐々木幹郎 曲;小田朋美、中村裕美)
   8と同じ全員


1は出演者の多くが客席から入り、
  「どこへい子のですか?」と客席にたずねるように開始。
  早くも独特の空間性。

2の薬師寺さん。
 ウィーン留学中のため今回は参加できなかった小林沙羅さん
 が以前演じたときのようなダイナミズムは無いが、
 ソフトで薬師寺さんならではの「りんごへの固執」を表現
 していて、とても良かった。
 薬師寺さんも十分美形だし、声も良い。

3について、俊太郎さんが
 「愛のあと」というのは「愛の行為のあと」という意味です」、
 として朗読したのだが、その補足説明を聴いたとき、
 290席ほどの小ホールとはいえほぼ満席の老若男女も
 一瞬(公演の副題~狙い、どおり)ドキッとしたかもしれない。
 内容もどことなく艶(なま)めかしく、でも静かな夜のような
 静謐な神秘感と気品があり素敵な詩だった。

4はとても面白かった。2人が楽器だけでなく、
 声による断片的な合いの手を入れながらの演奏。

5は賢作さんが逸話を披露。何でも、氏が生まれたとき、
 武満さんが俊太郎さんにプレゼントした曲で、
 賢作さんいわく、
 「この武満さんによる直筆=原譜は、いくらお金を
  積まれても門外不出。宝物」。
 もっとも、この曲の存在を知ったのは賢作さんが
 30歳くらいになってからとのことで、
 俊太郎さんも特に話さないでいたらしい。
 シャレた明るいシャンソン風の曲。

6は中村さんにしたら極めて良い意味でオーソドックで、
 西洋音楽的。いや、むしろ武満的と言うべきかもしれない。
 武満の「燃える秋」に少し似た感じの素敵な曲。

7はまた、会場に団員が降りてのパフォーマンスがあり、
 それでも最後の「まどろみ」を俊太郎さんが読む際には
 全員が舞台に登り、俊太郎を囲むような演出がなされていた。
 当然だが練習がキチンとされているのがよく判るシーン
 だった。

8はボイスのみんなが特に大好きな曲とのことで、
 実際魅力的な内容。

そして最後は「明日」。
会場にも合唱を呼びかけての、というのはいつもの
エンディングスタイルだ。

こうして休憩なしの1時間30分の公演が終わった。


なお、余談だが、実はご子息の賢作さんはもう10年近く前
だが、近くで接したことがあった。
友人の結婚式に出席した際、新婦の縁戚にあたるとの
ことで、賢作さんも来賓として来場し、ピアノ演奏も披露
されていたのだった。

「VOICE SPACE」は折々で、内容的に、あるいは
当然ながら参加者の都合にもより、メンバー構成が異なる
ことも1つの特徴でもる。

ウィーン留学中の小林沙羅さんが参加されなかったのは
残念だが、今後当然また機会があるだろうから、
楽しみにしているしだいだ。

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