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2012年1月 3日 (火)

第55回 NHKニューイヤーオペラコンサート

2007年の第50回から連続で会場であるNHKホールで
観、聴いているので今回が6回目。

今回は冒頭からエンディングに至るまで合唱の場面
 ~ソリストを交えて~がとても多かったこともあり、
また個々の歌唱に出来不出来のムラがほとんど無かった
という点で、あるいは演目的に、あるいは「トリ」を
藤村実穂子さんが深い余韻をもってビシッとキメてくれた
という点で、一番印象的な同コンサートだったかもしれない。

皆さん良かったが、まず最初に特に印象的な人を列記したい。

ベスト3は

妻屋秀和さんのハンス・ザックスと合唱
    ~「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
藤村実穂子さんのデリラ
    ~「サムソンとデリラ」
中嶋彰子さんのムゼッタと合唱。特に児童合唱
    ~「ラ・ボエーム」

それに次いでは

腰越満美さんの つう
    ~「夕鶴」
幸田浩子さんのクネゴンデ
    ~「キャンディード」
清水華澄さんのサントゥッサと合唱
    ~「カヴァレリア・ルスティカーナ」


出演者(敬称略)と曲目

下野竜也 指揮、東京フィルハーモニー管弦楽団

合唱は、新国立劇場合唱団、二期会合唱団、
      藤原歌劇団合唱部、NHK東京児童合唱団

合唱の指揮指導=冨平恭平


曲目(演目)

1.ワーグナー 歌劇「タンホイザー」から巡礼の合唱
    “ふるさとよ、また見る野山” (混声合唱)

2.プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」から
    “誰も寝てはならぬ”
     福井 敬 (テノール)&女声合唱

3.ヴェルディ 歌劇「トロヴァトーレ」から
    “見よ、恐ろしい火を”
     村上敏明 (テノール)&男声合唱

4.ヴェルディ 歌劇「椿姫」から
    “ああ、そはかの人か~花から花へ”
     森 麻季 (ソプラノ)& 大槻孝志 (テノール)

5.ビゼー 歌劇「カルメン」からロマの歌
     “にぎやかな楽の調べ”
     林 美智子 (メゾ・ソプラノ)
     &フラメンコ舞踏=アルテイソレラ

6.  同   闘牛士の歌う
    “諸君の乾杯を喜んで受けよう”
     成田博之 (バリトン)&混声合唱

7.團 伊玖磨 歌劇「夕鶴」から
    “与ひょう、あたしの大事な与ひょう”
     腰越満美 (ソプラノ)

8.プッチーニ 歌劇「蝶々夫人」から“ある晴れた日に”
     木下美穂子 (ソプラノ)

9.プッチーニ 歌劇「ラ・ボエーム」から“冷たい手を”
     望月哲也 (テノール)

10. 同  “私が町を歩くと(ムゼッタのワルツ)”
         ~第2幕フィナーレ
     中嶋彰子 (ソプラノ)
     安藤赴美子 (ソプラノ)
     須藤慎吾 (バリトン)
     斉木健詞 (バス)
     平野忠彦 (バリトン)
     望月哲也 (テノール)
     混声合唱、児童合唱


11.バレエ
   後藤晴雄(牧神) 上野水香(ニンフ)
   東京バレエ団
   音楽;ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」
   振付;ニジンスキー(1912年作)
     「パンの笛」(フルート)竹山愛、
    (マラルメ作「牧神の午後」朗読)夏木マリ

12.マスカーニ 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から
    “復活祭の合唱“主はよみがえられた”
     清水華澄 (メゾ・ソプラノ)&混声合唱

13.バーンスタイン 「キャンディード」から
    “着飾ってきらびやかに”
     幸田浩子 (ソプラノ)

14.プッチーニ 歌劇「トスカ」から“たえなる調和”
     樋口達哉 (テノール)

15. 同  “テ・デウム”
     堀内康雄 (バリトン)
     大槻孝志 (テノール)

16.ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」
    から“親方たちをさげすんではならぬ”
     妻屋秀和 (バス)&混声合唱

17.サン・サーンス 歌劇「サムソンとデリラ」から
    “あなたの声に心は開く”
     藤村実穂子 (メゾ・ソプラノ)


エンディング~バーンスタイン 「キャンディード」から
   “メイク・アワ・ガーデン・グロウ”
     歌手および合唱全員


個々の感想

1.ア・カペラ(部分の)合唱での開始という演出が良い。

2.福井 敬さん得意の曲で、何度も聴いている。
  昨年より良かった。というか、
  福井さんとしては当然のデキ(内容)

3.中間部とラストの高音が輝かしくて良かった。

4.森 麻季さんは声量は弱いが、高音でのキメと
  流麗な技術でキメたが、福井さん同様、
  麻季さんとしては当然のデキ(内容)

5.林さんは気のせいか、ご出産後、あまり良い声が
  出ていないように思えてならない。

6.成田さんはまあまあのデキ。
  というか、バリトンならあのくらい歌えて当たり前。

7.とても良かった。
  ヴィブラートは結構かかっているのだが、よくありがちな、
  それにより日本語が不明瞭になるということがなく、
  とても良い日本語の響。
  他の人のときに比べてブラヴォーが少なかったのは、
  この曲をよく知らない人が多いためなのかどうかは判らない。

8.良かったが、やはり木下さんならこのくらいは歌えるだろう、
  という意味では当然のデキ。

  指揮者に関して一言。
  木下さんがテンポを動かしたがっている(少し前に
  行きたがっている)ように感じた場面があったのだが、
  指揮者は完全にオケをコントロールすることのみに重点を
  置いていた。
  オペラをたくさん振っている指揮者だったら、そういうところ
  では直ぐに「歌手に付ける」ことをするだろうになあ、
  と想像しながら聴いた。


9.やや教科書的というか、ディクションで、あるいは
  歌い回しの技術で聴かせようとしているとことが
  見えてしまって、初々しい恋の喜びというものは
  感じられなかった。
  
  それと、これを歌わせるのなら、続く、「私の名はミミ」を
  安藤さんに歌わせてあげて欲しかった。
  次の10のワンオブ的な場面だけでは安藤さんが可哀そうだし
  聴衆としても残念だった。
  こういうところは今回の(ごく少ない)不満なところ。


10.中嶋彰子さんは声といい外見(キャラ)といい、
   ムゼッタは「はまり役」に思う。とても魅力的。

   そして合唱、特に児童合唱であるNHK東京児童合唱団が
   発音も声も音程も全て素晴らかった。出色の児童合唱。
    児童合唱の指導者は金田典子氏。


11.後藤晴雄さんが主役。
   ニジンスキーの演出から100年とのことだが、
   中性の神秘感と淡いエロティシズムがあって魅力的。
   ただ、上野水香さんをもっと主役的に観たかったのだが、
   こういう演出なら いたしかたない。
   夏木マリさんの朗読はなんだか、「悪魔くん」の
   「お婆の呪文」を連想して可笑しかった。

   指揮者に一言。
   美しいドビュッシーではあったが、いくらなんでも
   「熱が無さ過ぎる」と思う。
   このわずか10分に満たないがしかし音楽史における
   モニュメント的な偉大な曲は、確かに静謐さと神秘さを
   湛(たた)えてはいるが、しかし深いところで実は
   「熱い」ものだって絶対に存在する曲だと思うが、
   そういう点の表現には全く興味の無い人に思えた。


12.初出場のご祝儀票も含めるが、でも清水華澄さんは
   声量があり、合唱が主な場面(重なる部分が多い部分)
   での出番で、やや気の毒だったが、実力があることは
   示せたと思う。合唱も良かった。

13.さすが、もうベテランの域にある幸田さん。
   声がどうというより、こういうキャラを存分に演じ、
   歌いきれるところが素晴らしい。
   エンディングの声の伸びも良かった。

14.樋口さんはバリトンに近いような温厚なテノールの声で、
   ハデさは無いのだが、それゆえか、また外見的な面も
   含めてだろうが、女性にとても人気がある。
   この日も、他の歌手に対してはほとんど全て「男性主導に
   よるブラヴォー」 (3人~4人くらいの声が特に聞こえて
   きたが) だったのに対して、樋口さんだけは
   「ブラヴォーの第一声が女性だった」のが面白く、
   実際、そのことに対しても(温かな)笑いが場内に起きた
   ほどだった。

15.堀内さんのスカルピアと合唱が良かった。

16.妻屋秀和さんは本当に素晴らしい。
   これぞ「ドイツの歌劇場で通じた声」だ。
   マイスタージンガーのエンディングを生で久しぶりに
   聴けたこと自体もとても嬉しかった。

17.藤村実穂子さんも「流石(さすが)」。
   フランスの曲とはいえ、バイロイト音楽祭の常連として
   キャリアを積んでいるだけのことがある。
   基礎力がしっかりしているのだろうけれど、
   それを基盤した「深い声」。
   この美しく偉大なアリアを、気品に満ち内面の感動を
   秘めた歌唱を披露し、聴衆を魅了した。


エンディングが素晴らかった。
毎度のシャンパン大騒ぎ曲もいいけど、こういう感動を讃えた曲
で締めくくられると、ただただ音楽の素晴らしさ、歌、合唱、
生きていることの素晴らしさに感謝しないではいられなくなる。

かつてないほど素晴らしいエンディグだった。


指揮者の下野氏は全体としてはうまくまとめていたと思うが、
8と11で書いたように、私にはいささか表面的、教科書的な
指揮に過ぎる感じがして、
「オペラティックなエンタ性は無い人」に思えた。

合唱はとても良く、冨平氏の指導による貢献度合いが
高かった点はぜひ言及しておきたい。


終演後=生放送の終了後、こんなにも
 「お客さんが席を立とうとしないニューイヤーオペラは
  記憶が無いほど」で、
それだけ聴衆は余韻を楽しんだのではないか、と想像
できる。
久々に「深いところから感じ入る感動の演奏会」だったと
思う。

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