« 朝霞の公務員宿舎建設「凍結」は当然 | トップページ | 山本義隆 著 「福島の原発事故をめって」 »

2011年10月 5日 (水)

「原発をつくった私が、原発に反対する理由」  菊地洋一 著 (元GE技術者) 角川書店

当然ながら原発や放射能に関する著作本がこのところたくさん出版
されている。
これまた当然ながら、そのほとんどが「原発は不要」とする内容
であり、放射能汚染に関する詳細な記述である。

後者においては、3.11以後の書かれたものについて共通する
事項の1つに、
 「大震災と原発事故直後からよくTVに出て解説していた人の
  あの内容がいかに杜撰(ずさん)で、適当な誤魔化し、
  いい加減さに満ちていたか」
という点に言及している点がある。
この本でも、たびたび著者はそれに言及している。

この本の著者は1941年に岩手県釜石市に生まれ、縁あって
1973年にGE、すなわちアメリカのゼネラル・エレクトリック社に
入り、同年から1980年にかけて、東海第二原子力発電所と
福島第一発電所の建設に携わった人である。

「はじめに」と題した前書きにも、
 「三陸の人間は地震と津波を直結して考える。明治29年と
  昭和8年の大津波の話は(自分の世代では)誰でも知っている」
と述べている。

原発製造に携わるうちに、
 「こんなものが安全であるはずがない。いつか大事故が起きる」
という危惧を抱き、それを確信するに至り、GE退社後は
しばらく沈黙を通していたが、

 「50歳を迎えたときに、それまでの生き方を180度変え
  「反原発」を訴えていこうと決めました。
  現場を誰よりも知っているからこそ、自分がやらなくては
  いけない。
  自分の責任から逃げ回るのはもうやめようと思った」

として、既に1990年代から各地を歩いて、反原発の講演などを
行ってきた人である。

以下は、本の中からとりえわけ重要な、あるいはショッキングな、
印象的な部分を紹介させていただく。

原則的には漢字を含め表現はそのままだが、ごくわずか、
少し言い回しを変えたり追記したほうが判り易いかと思った部分は
私の表現に(ごくわずかだが)換えている。
また、文が登場する順番も必ずしも本文の(章などの)順番
どおりではない(前後している)ことも一応記しておきたい。


 「テレビ等で福島の状況を見たとき、その後の作業が
  いかに困難で、いかに長期に及ぶか、
  すでにどれほどの放射性物質が大気中に放出されているのか、
  それがどれくらい拡がり、汚染が長期に及ぶものであるか、
  ということが手に取るように分かりました」

 「原子力の専門家と称する人が登場して、原子炉のイラストを
  示しながらあれこれと説明していたが、どれも空虚で、
  ときには全く的外れで、しかも誰もが他人事のように話して
  いた。
  <心配し過ぎることはない>、
  <ただちに健康被害はありません>、
  そんな声を聞くたびに情けなくなってしまった」

 「イラスト自体もあまりにも単純過ぎだった。
  実際はもっと複雑なのに、ある人は格納容器の中は
  こうなっています、などと小学生が描いたマンガのような図を
  見せながら解説していた。
  しかし、いいですか、彼らの誰一人として原子炉はもちろん、
  格納容器の中になど入ったことがない人たちばかりなのです」


 「私は原子力の専門家ではありませんが、原子力発電所が
  どうやってつくられているのか、その細部がどうなっている
  のかについては、おそらく誰よりも自分の目で見て、
  それを知っていると思います。
  全体を見る立場で仕事をしていたからです」

 「原子力発電所というものはあり得ないくらい複雑な構造を
  持っています。そして全く未成熟な技術でできているのです」

として、以降、相当な量を割いて格納容器の内部について説明、
解説している。

 「福島原発の1~5号機の格納容器はGEが開発した
  「MARK1」と呼ばれる機種で、完成直後からGE内部でも
  安全性に問題があると指摘されてきた「いわくつき」のもの。
  GEの内部でも「稼働を停止する、しない」で激しい議論が
  起き、停止主張派の技師3人が一度に辞職した」

 「<MARK1>の弱点は一言で言えば内側からの圧力に
  対する弱さ。格納容器が小さ過ぎて、水素などが大量発生
  すると容器そのものがもたない。にもかかわらず、
  利益優先で「止めて点検」をほとんど行ってきていない」

 「建設前には「周辺住民の意見は重要です」などと言いながら、
  そんなこと全く考慮せずに建設する」


 「いったい原発には総延長何キロの配管がからまっているのか
  判らないほどの配管だらけの内部。先ほど述べた、
  「あり得ないほど複雑」ということです」

 「地震波と鉄骨の共振などが全く考慮されていないうえに、
  人間による作業ミスがいくらでも起こり得る状況」

 「原発で最も恐れるべき事故は<冷却材喪失事故>」

 「空中からのぶささがり構造は、原発の最大の泣き所」


 「建設時、支持装置を構成するハンガーや防振器の取り付け
  位置のもとになる計算方法、取り付け箇所の変更表示、
  移動距離が制限内かどうか、といった全てのことを
  正しく知っている人はほとんどいない。
  しかも、部材の設計、製造、機能テスト、施工、それらを
  行うのは全て別の人間、複数の会社。
  なので、全てを把握し、メンテナンス状況までを
  知っている人はおそらく皆無」


 「溶接の方法にも問題有り」

 「配管の内部に生じた突起。これを取らないと内部から
  破損する危険がある」

 「こうした欠陥配管の脆弱性について何度も改善を
  電力会社に求めて来たが、全く聞いてもらえないできた」

 「2003年に行われた全国の原発の再循環系配管検査では
  そこにヒビ割れ件数が全国の原発で計100以上あった。
  それでも<大丈夫です>という電力会社。
  電力会社は言う。
  「今さら交換できないし、ずっと注視しているから
   大丈夫です」、と」

 「国の定期検査のいい加減さ。1日稼働を止めたら
  1億円の罰金という中では、検査など国も電力会社
  双方とも「さっさと通したい(合格としたい)のだ」


その後は日本における原発の誕生のいきさつについて記された後、
作業員の被曝の実態について、現実の状況を書いている。


 「原子炉自体が恐ろしいほど高レベルの放射能物質」

 「作業員が防御服をいくら着用したところで、防げる可能性が
  あるのは(直接 放射性物質を吸い込まないなどの)
  内部被曝だけで、強い放射線を体中に浴びることは
  防げない。
  水垢は放射性物質の塊で、これを削り落とす作業は
  命がけの作業。短時間で交代しても被曝は避けられない」

 「しかも、こういう作業は下請け、孫請け、ひ孫請けの会社が
  (それも主に臨時に)雇った人に詳しい説明など受けずに
  やらせている。ホコリにも放射性物質が含まれているのに、
  暑さなどからマスクを外してしまう作業員が多いことは
  電力会社も知っている。
  だから作業員は皆、内部被曝をしてしまっているはず」

 「現場で事故が起きても<上>の会社には言えない。言ったら、
  「あそこの(孫請け等の)会社は外せ」ということに
  なってしまうから」

 「あるいは作業者がミスに気付いて上に進言しても、
  ひとりの意見では直せない。電力会社としては、
  やり直しを公にすることで信頼性を低下させたくないし、
  納期や予算の関係でそうさせない。このように
  作業員1人の「命」などまるで配慮されてはいない
 に等しい現場」


 「事故が無くとも、原子炉内の検査、格納容器の点検、
  配管の修理や取り換えなどを続けなくてはならない以上、
  作業員は全て被曝を続けることになる。
  原子力発電所があれば、そこには必ず被曝労働がある。
  こんな労働現場があってはならない」


 「GE退社後、全国の原発を調べ見て回ったが、
  「全ての原発が危険」と判った。
  特に急を要するのは浜岡原発。
  地震(予想)地帯のうえ、構造的に大きな問題がある」
  (この点についても筆者は本の中で詳細に説明している)


 「原子炉内の弱点は、直下型地震のエネルギーには
  絶対に耐えられない、という点だ。
  GEは原子炉の真下で直下型地震が起きて、基礎を上に
  突き上げてくるかもしれない、などとは考えていない。
  だから、アメリカでは一応地震多発地帯は避けて建設されて
  いるが、日本では役所も電力会社もそんなことを考慮せず、
  地震が多発すると予想されている地帯に平気で建てて
  しまった」

 「東海地震等により浜岡で大きな事故が起きれば、
  名古屋はもちろん、東京と大阪を含む広大な範囲で
  影響が出る。
  さらに、東南海地震、南海地震と南にいくに従い
  その3つの地帯全てに地震が生じた場合、
  四国と九州にある原発を含めた事故により、
  西日本全体が放射能影響地帯となる」


 「チェルノブイリ事故の死者が31人というのは直接的な人数。
  WHOの報告によると、被災した国は3か国、740万人。
  間連しているとされるガン死亡者は9000人以上と
  言われている。
  日本のJCO事故の際は2名が死亡。
  667人の被曝者を出している。こうした数字を無視して
   「あのときも健康や環境に影響は出ていなかった」
  などと言うのは悪質なウソ」

 「原子炉建屋は屋根が無いに等しい状態。だから、仮に
  テロリストがボーリングの球を落とせば簡単に壊れる。
  いやそんな必要もない。
  というのは、海水の取水ポンプを壊せば、
  今の福島原発と同じ状況になるから」


 「二酸化炭素を出さないクリーンエネルギーなどと
  よく言えたものだ。
  運転中の原子炉ではウラン燃料が核分裂を起こしながら
  毎日作り出されるプルトニウム、ストロンチウム、ヨウ素、
  セシウムなどの高レベル放射性廃棄物を出しており、
  それらの有害度は二酸化炭素の比ではない」


 「二酸化炭素を出さないから地球温暖化を促さないと
  いうのも大ウソで、原発は発生する熱量の3分の2を
  温排水というかたちで海にじゃぶじゃぶ捨てている。
  原発は地球を温暖化させているのです」


 「使用済み核燃料を処理する場が無い現実。
  再処理してから埋める、というが、再処理工場として建てた
  青森県六ヶ所村はとにかく結論が見えていない。
  「完成」などしようもないので、今、廃棄物をプールして
  いるだけ。
  ここが一杯になればそれぞれの原発施設内で危険な廃棄物も
  保存することになるのは時間の問題。これが今の現状。
  ゆえに原発は「ゴミ捨て場の無いマンション」とか
  「トイレの無いマンション」と言われる所以(ゆえん)。

  仮にどこかに処理して埋められたとしても、アメリカ政府は
  100万年監視が必要、と言っている。
  埋めるに際しては、ガラスで固め、ステンレス容器に入れる。
  更にこれを鉄の容器に入れて粘土で固めてから岩盤に埋める、
  ということだが、100万年の監視ができるのか?
  ステンレスと粘土が100万年もつのか?」


 「再処理後にまた発電に使おうとの発想で計画された高速増殖炉
   「もんじゅ」。「こんなものは危険過ぎてムリ」として、
  1984年の段階でアメリカですら開発製造を止め、イギリス、
  フランス、ドイツもとっくに研究を止めているのに、
  日本は1980年からいまだに「研究」を続けていて、
  年間の維持費だけでも500億円かかっており、
  これまでに総額約2兆5000億円使っている。

  1ワットも発電していない工場の建設に2兆5000億円
  かけている国など、世界に他に1つとしてない。
  2050年までに完成させるなどと妄想計画を言っている
  バカバカしさ」

 「プルトニウムを作りたがっている背景には原子爆弾が
  いつでも作れる、という政治的思惑もある」

ちなみに、この点は次のブログで紹介する山本義隆氏の本に
更に詳しく出てくる。


終わり近くで筆者は「地熱発電こそ、これからの日本に
一番相応しいかもしれない」とした後、こう書く。


 「原発ができて活性化した街など一つもありません。
  多少は雇用が増えて「息子が地元で就職できて良かった」
  という人はいるとしても、町全体が活性化した例はない。
  予算の4割とかに及ぶ補助金を得て立派なホールや
  施設を造っても、町はシーンとしている。
  大きな温水プールを作っても、
  そこに歓声をあげて遊ぶ子供たちの姿はない」

 「ときには町中が賛成派と反対派に分かれて憎しみ合う
  ようにさえなる。地域にウソがはびこり、
  人々の心がむしばまれてしまう」

 「放射線の被害というものは未来の子供たちを殺すことです。
  福島の事故で死者はまだ出ていないじゃないかと
  言う人もいますが、とんでもないノーテンキとしか
  言い様がない」

 「原子力政策で最悪だったのは、都合のいい情報だけを
  大量に出して日本人を洗脳して、ほとんど「バカ」にして
  しまったことです。だますほうは悪いが、
  我々もそろそろ国や電力会社が言うことを
  真に受けるのをやめるべきです」

必読の書である。

« 朝霞の公務員宿舎建設「凍結」は当然 | トップページ | 山本義隆 著 「福島の原発事故をめって」 »

ブログ HomePage

Amazon DVD

Amazon 本

最近のコメント

最近のトラックバック