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2011年9月 7日 (水)

もう一度 オリンパス訴訟について        山口利昭弁護士の見解と「Kageroh’s News」 さんの興味深い意見を紹介します

ブログ名「ビジネス法務の部屋」の山口利昭弁護士が8月31日付で
 「やっと認められた内部通報への制裁と「人事権濫用」論
   ~オリンパス事件」 として書かれている。

山口先生は、2010年1月25日の東京地裁判決(原審判決)に疑問
を持ち、
  「この判決内容であれば、企業にヘルプライン(内部通報制度)
   を作らないほうがましである」と述べ、
  「ヘルプラインへ通報した社員に対する通報直後の配置転換
   ついては事実上の制裁であることの推定が働くため、
   配置転換の必要性は会社側が積極的に立証すべきであり、
   立証できなければ「人事権の濫用」とすべきである、
   そのほうが労働契約法15条の趣旨(懲戒権濫用の禁止)に
   合致すると提案していた」

  「このたびの高裁判決はまことに妥当なものと考えており、
   企業は、事実上の制裁措置(社内の閑職に追いやる、
   隔離する、自宅待機を命じる)によって自主的な退職を迫る、
   という手法をとる。
   配置転換は事実上の制裁措置としては企業側の
   「伝家の宝刀」であり、ここにメスが入った今回の
   高裁判決は非常に実務に与える影響は大きいものと
   判断する。
   社内の窓口への「内部通報」の事案に適用された意義は
   大きい」

と述べている。


他者のコメントより

なお、このブログに対して数人がコメントしているが
 (その内の1人は私)その中で面白い意見があった。

 「この企業に関連したテレビドラマ(内視鏡の事始め物語)が制作
  され放送されるのですが、内視鏡で患者の体内を診るよりも
  前に、会社内部の問題を診るほうが先ですよね」

 また、この人はこれに続けて、例のフジTVへの抗議デモに関して
  (社名は出していなものの)
 「法的にもコンプライアンス上も道義上も全く問題がない
  某マスコミにデモするヒマがあったら、例えばこういう企業にこそ
  デモを掛けたり不買運動をすべきだと思うんですけどね。
  なんちゃってね」

と書いていて面白い。

さて、山口先生は、この8月31日の文はやや速報的な意味合いも
あってのことを踏まえてか、判決全文を読んだうえで、再度、

9月5日付けで、
 「企業側からみた「オリンパス配転命令事件」控訴審判決の
  重み」

と題して更に詳細に解説している。


 「本判決は、H氏の内部通報が公益通報者保護法の通報対象
  事実に該当するか否かという点ではなく、社内のヘルプライン
  (内部通報規則)によって保護されるものかどうかに焦点を
  当てているところに特徴があり、これが人事権濫用論に
  大きな影響を与える」


 「H氏による適切な内部通報があったとすると、そもそもH氏を
  「いい加減なことを申告してきやがった、おかしなやつ」として
  処遇することはできないのであり、配転の必要性も配転の
  目的の不当性も厳格に審査されることになる。
  適正な通報であるなら、社内的にはヘルプライン手続きに則って
  処理されねばならないにもかかわらず、オリンパス社の
  通報窓口担当者が守秘義務違反を犯し、人事権を掌握する
  被控訴人が通報を認識するに至った。
  このことは配転命令を「権利濫用」と認定するうえでとても重要な
  事実認定となる」


 「昭和61年最高裁判決の判断基準からすれば、配転命令に
  正当理由がないケースというのは、きわめて限定的な場面しか
  想定されていないにもかかわらず(企業側にとって配転命令の
  裁量権は広く、簡単に司法判断によって「おかしい」とは
  言われないにもかかわらず)、
  内部通報制度を活用したH氏に対する処遇は
  「業務の必要性や配転の目的も、企業側の主張はまったく
  不合理とまでは言えないけれども、相当程度疑問が残る」
  として「権利濫用」が認められた」


 「ヘルプラインという社内ルールで「内部通報社員には、
  不利益な取扱をしてはならない」と規定されていることは、
  裏を返せば企業もしくは通報者の上司は、内部通報者に対して
  不利益な取り扱いのおそれがある、ということ。だからこそ、
  通報直後の配転、これまでと全く異なる部署への配属、
  社内における勤続評価と配転後の評価の差といった事実認定
  が、「不利益取扱であることを推認させる」ことになり、
  会社側からの配転先の業務の必要性、配転の目的の合理性
  といった 「企業側のお決まりの主張」では排斥しきれない
  ことになる」


 「会社側の、一般的な主張を排斥できるだけの証拠を社員側は
  持っていないため、一般的には「正当理由」が認定されることは
  稀だが、ヘルプラインに従って内部通報をした、という「事実」が
  社員と会社を(訴訟上で)五分五分の関係まで押し上げている
  と言える。
  解雇権濫用事例でもそうだが、裁判所は労働契約の効力を
  判断するについて、就業規則にどう書かれているか、
  という点を非常に重視するため、ヘルプラインという
  社内ルールが存在する以上、そのルールの解釈もまた
  非常に重視する、ということ」


 「オリンパス社のヘルプラインに則ったH氏の内部通報の
  「適正性」、ここがたいへん重要なのだが、本判決は
  非常に広く、その適正性を認定している。
  もちろんオリンパス社のヘルプライン運用規程の解釈として、
  ではあるが、法令違反だけでなく、企業行動規範に
  反するもの、企業倫理違反、またそれらの「おそれのある行為」
  に関する通報は適正なものとしている。さらに、
  通報だけでなく、「相談事例」であっても適正なものとして
  受理されねばならない、と。こういった通報は通報者に
  対する守秘義務に留意して処理しなければならず、
  この処理を誤ると「通報があったことを人事権者が知った」、
  と認定され、これがダイレクトに「不利益取扱の推認」へと
  結びつくことになりる(通報があったことを人事権者が
  知らなければ、そもそも報復や制裁と推認されることは
  ない)。
  このように広く「内部通報は適正である」と判断されると、
  本判決のように、従業員と会社は武器対等の状況となる
  ので、けっして妥協を許さない従業員及び妥協を許さない
  代理人弁護士が相手方となると、企業の社会的信用、
  社会的評価を大きく毀損するような事態になってしまう
  リスクが高まる」


 「判決全文を読んで印象に残った点は、配転後の通報者
  への処遇がパワハラとして認定されている点。
  怒鳴ったり、嫌がらせをする、といった行動が
  パワハラに認定される事件はすでにたくさん判例があるが、
  本判決では
  ①自主的に退社したくなるような不当な仕事を与える、
  ②これまでの勤務評価に比較して著しく不当な勤務評価を
   行うこと自体をパワハラと認定しており、
  また非常に精緻な事実認定によってこれを根拠付けている。
  この点は今後、別の事件でも非常に参考となる」

以上が、山口弁護士の見解の主旨。


さて、これに関して、ウェブ上で面白い意見を読んだ。

  「Kageroh’s News」 さん というブログで、

 9月1日付けで書かれている。
 http://kageroh001.blog.so-net.ne.jp/2011-09-01-5


ここで このブログの筆者は、

 「この判決自体は、まっとうな判決だと思います」としたうえで、

 「しかし、浜田さんが最初にとった行動が正しかったのか?
  というと私は、正直なところ疑問に思います」

として、こう理由を述べている。 すなわち、

 ①「浜田さんの上司が取引先の社員A氏を引き抜こうとした
   ときに違法性があったかどうかはわからない。
   浜田さんが通報したのは、あくまで「取引先の信用を失う」
   という理由で、違法性があると考えたわけではないので、
   コンプライアンス(法令順守)窓口に通報する内容ではない
   と思う」

 ②「また、引き抜かれようとしていたA氏は、給与面などで
   今の会社に勤めているよりも有利な条件を提示されたかも
   しれず、その意味ではA氏の未来をつぶしてしまった可能性
   もある」

よって、(主に①の理由から)

 ③「浜田さんは「正しい行動をした正直者がばかを見ることが
   あっていいのか」と言っているが、それが本当に正しい行動で
   あったのか?
   私は、少なくても軽率な行動であったのではないかと
   考えている。
   もちろん、それでパワハラをする上司は論外だが」


なかなか面白い疑問提示だと思う。
結構、「真実」は含んでいるかもしれない。

ただ、それでもこの「Kageroh’s News」さんの指摘、意見には
幾つかの点で論旨の弱さはある。


その1
例えば、与えられた材料だけからでは、
「Kageroh’s News」さんや私ら第三者は、
 「コンプライアンス(法令順守)窓口に通報する内容
  ではないと思います」と、
 はたして断言できるのか?という点だ。

その2
もう1点は、
 「引き抜かれようとしていた方は、給与面などで
  今の会社に勤めているよりも有利な条件を提示されたかも
  しれません。つまり、この方の未来をつぶしてしまった
  可能性もあるのです」
 とする部分はあくまでも「Kageroh’s News」さんの
 推論に過ぎない、という点だ。

すなわち、誘われたA氏には全くそんな気はなかったかも
しれないし、それどころか、もっと穿(うが)った見方をするなら、
A氏は、そんなことをオリンパス社をしてきている、ということを
社内にしゃべってしまったかもしれず、それにより
原告の浜田さんが危惧したとおり、その社とオリンパス社の
関係が悪くなったかもしれないことも(これまたこれは推論に
過ぎないが)可能性としてはあったとも言えるからだ。

そして、「Kageroh’s News」さんは原田氏の行動への疑問のみ
について言及し、最も重要な点について言及されていない。
それは次の点であり、「重要なポイント」としてまとめてみたい。


重要なポイントについて
コンプライアンス窓口なる内部通報制度の窓口担当者の行動
そのものがが、コンプライアンス違反を犯している、
この制度の運用を根本的に(たぶん意図的に)間違った対応を
 (それこそ会社のために良かれと)したのだ、という、
正にこの点こそが、この事例、この訴訟の、最も肝心要の
ポイントなのだ。

窓口担当者は、この制度の本来の主旨に沿う対応をせず、
「まるで会社組織の秘密警察であるかのような、不都合情報に
対する見張り役」のような行動~疑義対象者に自分のことを
通報してきた人がいて、その内容も教えてしまったこと
 ~本来の窓口機能の放棄、怠慢、裏切り行為
 →内部通報制度そのものへの裏切り行為を行った、
という点だ。

オリンパス社に限らず、窓口担当者によりこの行動をされて
しまった場合、その瞬間から、この制度そのものの死を意味する
ことになるからだ。
少なくとも、私がこの判例で最も重大に考えている点は
正に この点に尽きる。

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