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2011年9月29日 (木)

幸田浩子 & 林美智子 デュオ・リサイタル    絶品 「カリヨン」と「アヴェ・ヴェルム・コルプス」

ソプラノの幸田浩子さんとメゾソプラノの林 美智子さんによる
もう何年も続いているデュオ・コンサートを
大田区民会館アプリコ大ホールで聴いた。

ピアノは田島亘祥(ひろよし)氏。最初に書いてしまうが、
田島さんのピアノ伴奏はとても良かった。良い奏者だと思う。

ホールについても先に書いてしまうと、このホールに来たのは
今回で3回目くらいだと思うが、内装はシックで落ち着いては
いるが、公的なホール~例えば杉並公会堂などに比べると
音響は良いとは言えないと思う。

さて、曲目は下記のとおりだが、5が終わったところで、
この日初めての2人によりMC。
 「2人での演奏会はこれまで10年近く、8年くらい(だっけ?
  と、2人が顔を見合す)やってきているけど、
  東京では初めて? 2回目?、とにかく東京では
  なかなかできなかった」、と話すのを聞き、

「あれ?そうだっけ?」と私は自分の記憶を辿(たど)ってみた。
1つは、フィリア(神奈川県)、もう1つは確かリリア(埼玉県)
だったから、確かに東京都内ではない。
まあ、自分にとってはどうでもよいことだ。


曲目とそれを歌った人~敬称略

前半
1.ヘンデル 歌劇「セルセ」より「懐かしい木陰よ」
           (オンブラ・マイ・フ)  林

2.ヘンデル 歌劇「リナルド」より「涙の流れるままに」 幸田

3.ヘンデル 「夜明けに微笑むあの花を」
    (イタリア語によるデュエット曲集から) 幸田&林

4.フランク「天使の糧」  幸田

5.バッハ;グノー 「アヴェ・マリア」  林

6.~9.山田耕筰 「この道」、「唄」、「ばらの花に心を込めて」、
   「たたへよ、しらべよ、歌ひつれよ」  幸田

10.~13. 武満 徹 「小さな空」、 「○と△の歌」
              「うたうだけ」、 「翼」       林


後半

14.ドリーブ 歌劇「ラクメ」より
         ~花の二重唱「おいで、マルカ」  幸田&林

15.デラッア 「ヴィラネル」(牧歌)  幸田

16.ドリーブ 「カディスの娘たち」  林

17.グノー 歌劇「ロメオとジュリエット」より
            「私は夢に生きたい」  幸田

18.サン=サーンス 歌劇「サムソンとデリラ」より
            「あなたの声に心は開く」  林

19.~20.オッフェンバック 歌劇「ホフマン物語」より、
       舟歌「美しい夜、おお、恋の歌よ」、 
       フィナーレ「お前の心の燃えがらで」 幸田&林


アンコール

1.武満 徹 「小さな部屋で」 林

2.ベッペ・ドンギア 「カリヨン」 幸田

3.モーツァルト 「アヴェ・ヴェルム・コルプス」 幸田&林


感想

1と2は仕事の都合で間に合わず拝聴できなかった。
この日最初のデュオになる3は、心なしかアンサンブルが
やや不安定に聞こえた。
理由はよく判らないが、速いパッセージでのテンポ感が
2人の間で微妙に違っていたのかもしれない。
リハは当然やったはずだし、この2人にしては珍しいことだ。

前半では幸田さんにしては珍しい日本の曲である
 6から9が興味深く拝聴した。

林さんの10から13は、
 「武満さんの歌は私のライフワークとして、今後も歌い続けて
  いきたい」と語っているだけに、温かな愛情のこもった歌唱。


後半の15と16は、それぞれが得意とするいわば「持ち歌」。
 それぞれこれまでに何回も拝聴しているが、
 確かにそれぞれに「合った」性質の歌だと思うし、
 実際素敵な歌唱だ。

17の曲は難しいはずなのに、幸田さんが歌うと
 「良い意味で軽く聞こえる」というか、あまり難しい曲に
 感じさせない点は「さすが」だと、あらためて感心した。

18も、ここ数年、林さんが度々歌っている曲。
 曲自体素晴らしいアリアだし、林さんの厚めの声が、
 深い情念と結びついて、これも確かに「得意の歌」と言える
 だろう。

最後のオッフェンバックのデュオでは、
 舟歌はアンサンブル的に美観が「いまいち」の感があったが、
 フィナーレの曲は立派なデキだった。


2人を拝見拝聴して全体として感じることは、とにかく
 「堂々としている点」だ。
もちろん、年齢的にももはや20代ではなく、
30代後半(いわゆるアラフォー)というキャリアからの自信
による貫録をまざまざと感じる。

 やはり歌手は「場数」を踏まなければダメだと思う。


アンコール

1.林さんは先述のとおり、「ライフワーク」としている武満徹の
  「歌」から「小さな部屋で」。
  もちろん、来年1月31日に予定しているタケミツ特集の
  リサイタルの宣伝もあるし、実際にそれについて伝えてから
  歌った。

2.そして幸田さんは「カリヨン」
  来たる10月19日の作曲者であるドンギア氏を迎えての
  コンサートの宣伝に意味ももちろんあり、それを述べてから、
  したがって当然カット無しのヴァージョンで歌った。

  「カリヨン」の正式なタイトルは「新しい色の祝祭にて カリヨン」

  ハ長調の素朴で美しいメロディ。
  幸田さんの声を聴いてインスパイアされたイタリア人作曲家、
  ベッペ・ドンギアによるこの曲は、本当に幸田さんの声に合って
  おり、幸田さんの歌そのもののようだ。

   (以下、歌詞を一部引用させていただく)

   「この世の中に し尽くしたこと、言い尽されたことなんて
    何もないはず。
    幸せなことに 人々が待っているのは月旅行だけではなくて
    世界は泳いでいくための広い海で、
    世界はまた始めなくてはならないのだから。
        (中略)

    人は月からだって帰ってこられる。
    大地は手を広げてそこで待っていてくれる。
        (中略)

    世界は泳いでいくための広い海で
    世界は また始めなくてはならないのだから」


この曲を幸田さんが歌うのを聴くとなぜだかいつも涙が出てくる。
理由は判らない。とにかく、この曲を聴くと、
いつも 「幸せな気持ちになる、なれる」 のだ。

「癒し」と言葉はあまりにも「陳腐」になる過ぎた感のある昨今
だから、あまり使いたくないが、
それでも幸田さんが歌うこの曲を聴くたびに

  「ああ、生きていて良かった」、
  「今までどんなに辛い事があったにせよ、こんな歌に、
   こんな歌手に巡り合えるなんて、人生はやっぱり素晴らしい」

と思ってしまうのだ。

未だこの曲を知らない人は、2007年の、私もこの会場の中に
いた紀尾井ホールでのライブ映像がユーチューブで見れるので、
ぜひ見、聴いて欲しい。

このときこの会場で初めてこの曲を知った感動と衝撃は大きく、
ちょうどこの時期、コロムビアの幸田さんの担当が私の友人
だったこともあり、
 「ぜひこの曲を録音して欲しい」
 「とにかく、何がなんでもこの曲を録音して欲しい」
と頼んだのだった。
そして、2008年11月、イタリアで録音、録画されて
翌年発売された。

http://www.youtube.com/watch?v=cfqwCuF2vcU


3.この日のアンコール最後の曲は、大きな拍手の中、
 デュオによるモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。
   素晴らしかった。 絶品と言ってよい。
 この日、数曲歌ったアンサンブル・デュオの曲の中では、
 この最後の最後のアンコールが一番優れたデュオ歌唱だった
 と思う。

この2人によるデュオ・コンサートは、これからもずっと続けて
いって欲しい。

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