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2011年5月21日 (土)

森 麻季さんリサイタル in フィリアホール     レクイエム 異色のコンサート

想像もしないプログラムだった。
謙虚さと力強さに満ちた森 麻季さんのメッセージを、
私たち会場の聴衆はしっかりと受け取ったのだった。

21日、森 麻季さんのリサイタルをフィリアホールで聴いた。
麻季さんは13日(金)にも同ホールで「日本とドイツの作品」
と題して公演を行っているので、この日は2日目の公演という
位置付け。この日のタイトルは「イタリアとフランスの作品」。

13日の公演は拝聴していないが、冒頭にモーツァルトの
「レクイエム」から「涙の日=Lacrimosa」という合唱で
歌われる曲をソロで歌っているように、今回の2公演は
それぞれタイトルはあるものの、先の大震災を強く意識した
もので、特にこの21日のプログラムはそれが顕著だった。

震災前に予定されていたものとは大幅に、特に前半は
たぶんほとんど総入れ替えの変更をされたようで、
以下のとおりプログラムを記載するが、その前に、
プログラムに記載された麻季さんのメッセージが
今回のリサイタルの根幹に在るスピリッツであり感情感慨
であることから、以下、引用記載させていただきたい。


         ごあいさつ
 このたびの東日本大震災でお亡くなりになられた方々に
 心よりご冥福をお祈りいたします。
 また被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
 未曾有の大地震、猛威を振るった津波、大火災、そして
 原発の影響と、折り重なる大きな試練に耐え、困難を乗り越える
 ために、日本中が心をひとつにしていなければならない時です。
 今回はそんな思いを込めてプログラムを変更させて頂きました。

 私は音楽の力を信じています。音楽は人の心を結び、
 心をひとつにします。一人一人の力は小さいかもしれませんが、
 思いを共有すれば、希望へとつながることでしょう。
 会場全体で被災地の方を思い、心を一つにして
 祈りを捧げられるよう、精一杯歌います。

    森 麻季


プログラム前半

1.ヴェルディ : レクイエムより 「涙の日」

2.フォーレ : レクイエムより 「ピエ・イエズ」
               同  「天国にて」

3.ピアノソロでラヴェル : 「クープランの墓」より「メヌエット」

4.ヴェルディ : レクイエムより
  「その日こそ怒りの日、災いの日、大いなる悲嘆の日
   ~主よ、永遠の休息を彼らに与えたまえ
   ~天地が震い動くその日、主よ、かの恐ろしい日に
     我を永遠の死から解放したまえ」

後半が

5.グノー : 歌劇「ファウスト」より 「宝石の歌」

6.ピアノソロでラヴェル : シャブリエ風に

7.リスト : 夢に来ませ
   同   ペトラルカの3つのソネットより
        「平和は見いだせず」

8.ピアノソロでサン=サーンス/ゴドフスキー編:白鳥

9.ヴェルディ : 歌劇「椿姫」より
     「ああ、そはかの人か~花から花へ」

アンコール

10.越谷達之助 「初恋」

11・山田耕筰 「からたちの花」

12.久石譲 「坂の上の雲」より 「Stand Alone」

13.バッハ&グノー「アヴェ・マリア」


前半は黒地に白のガラの入った色調としては地味目のドレスで
登場。もちろん曲の内容を考慮してのものだ。

そして麻季さんのリサイタルでは彼女のMC入りというのは
私は初めてで、マイクを使ってはいるものの、
「蚊の泣くような小さな声」で語り始めた。
もちろん、歌う直前なので声に負担をかけないためだ。
本当はMCはしたくないだろうけれど、特別な思い入れによる
リサイタルということだろう。
以降も、9のヴィオレッタのアリアとアンコール曲を例外として
最後まで解説と、特に実際にそれぞれの歌の歌詞を相当量
読んでからの歌唱。

前半はMCのネタノートだけでなく、通常ソロでは歌わない曲
がメインとしていることもあり、当然だが楽譜を持っての歌唱。


1は長大な第2曲「怒りの日」の中からスコアの624小節から、
 合唱のパートを含めて、少しのカットはあったと思ったが、
 第2曲の最後までを歌われた。

2の「ピエ・イエズ」はしばしば単独でソプラノ歌手がとりあげる曲
 なので驚かないが、「天国にて=イン・パラディスム」をソロで
 歌うことはまずないので驚くとともに、麻季さんの誠実な思いが
 ひしひしと伝わってきた。

4は、会場でプログラムを見たとき、
 「どうつなげてどの部分を歌うのだろう?」と期待が高まった。
 終曲=第7曲「リベラメ=Libera me」の冒頭から合唱パートも
 歌いながら~例えば7~9小節のアカペラ合唱の部分も歌ったし
 なんと「怒りの日」のテーマが再現される45小節目からも
 歌ったし、合唱としてのクライマックである382~400小節も
 388小節からのソロの部分に先立って382小節目から
 歌ったし、もちろんソロとしての聴かせどころも当然カットを
 加えながらも、132小節から170小節までの変ロ短調による
 感動的な部分(最後の和音は長和音)を歌い、そこから
 先述の部分を含めて正にエンディングであるCの音のよる
 「libera me,Domine,demorte aeterna,in die illatremenda」
 「libera me」 「libera me」
 という最後まで歌う、という極めて異例なリサイタルとなった。

すこぶる感動的なシーンであり、これまで麻季さんの公演は
リサイタルだけでも5回以上拝聴しているが、
最もインパクトの強い、前半だけでも忘れられない
感動的な演奏会となったのだった。


さて、後半(5、7)はドレスも水色に変えて、いつもの、
敢えて言えばきらびやかな歌技法の歌唱をメインとする内容。

有名な5はもう見事な歌唱で、聴衆を沸き立たせた。

7のリスト。リストの曲は管弦楽曲にしてもピアノ曲にしても
 「技巧だけはやたら派手だが内容がいまいち」の曲が多いが、
 この2つの歌曲は叙情性といい技法といいとても見事で
 聴き応えがあった。素敵な歌曲だし、歌唱だった。

そして、前半は別格とすれば、いわば本日のメインである9では、
 ドレスを白(クリーム)色系に変え、
 オペラの役=ヴィオレッタになりきっての名唱。
 自在で完璧な声のコントロール、流麗なトーン、
 哀愁と享楽さの表現等々、
 全ての点で魅力十分の素晴らしい歌唱だった。

 この歌唱のレベル、完成度は、森 麻季というより、
 日本人歌手がとうとうここまで到達したのだという
 最高レベルの歌唱とも言うべきものだったと思う。


そして当然アンコール。
10は、普通、しとやかに歌うスタイルが多いと思うが、
 麻季さんはやや意外なアプローチをとり、
 良い意味で裏切られたというか、実にドラマティックに、
 まるでオペラのアリアのように切々と歌いあげた。
 実に見事。

11も何度も拝聴しているが、清々しく素敵。


12.そして、とうとう「生 Stand Alone」
 リサイタル開始前から実は密かに期待していた曲を
 とうとう聴けた。
 とうとう、待望の「生」「Stand Alone」。
 17日のNHK歌謡コンサートでも生放送の中で歌われた
 とのことだが、その番組は見逃していたし、何よりも
 ステージから4列目の席での「生 Alone」は感激極まれり
 だったことは言うまでもない。

麻季さんはリサイタルのアンコールでの、「この曲が最後です」
ということを示すとき、たいてい、「最後に」と言って
客席を笑わすことが多いのだが、この日は、
 「ずっと歌っていたいのですが…」
 (会場;笑。誰かから「歌っていて」との声あり) として、
13.バッハ、グノー編曲の有名な「アヴェ・マリア」により、
この日の公演を閉めたのだった。

ピアノの山岸さんはいつもながらの素晴らしい演奏で、
リサイタルの成功の大きなパーセントを握っている。
ソロでは3つのうち、演奏としては6、曲としては
ゴドフスキーの編曲が面白かったという点で8が印象に残る。

森 麻季さんのリサイタルは毎回毎回本当に素敵な感慨、
温かな感情を生じさせてくれるのだが、
今回は前半の熱い感動を含めて、本当に忘れがたい
素晴らしいリサイタリルだった。

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