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2011年2月15日 (火)

幻冬舎 MBO 実質成立 しかし…あたらめて問う 「ではなぜ上場したのか?」と

幻冬舎の本は面白いものが多い。
特に新書はすこぶるユニークで興味深い本がたくさんあるし、
内容だけでなく印刷された字も大きく読みやすいし、
 (その点、岩波新書はいまだに薄いインクと小さなフォントを
  変えておらず読みにくい)
黄色と白の装訂もシンプルにして本屋さんの陳列棚の中でも
結構目立つので斬新にして戦略的にも成功していると思う。

不況産業の象徴の1つのように言われてきた出版業界の
中では異色の進取の会社なので私は同社の本は好きだし
ファンであるし、それはこれからも変わらない。
そう宣言明言したうえで、それはそれとして、
今回の同社のMBOについて感想を書いてみたい。


2月1日付けで、今回の「MBO」(経営陣が参加する自社株式
の買収)による非上場化をめざす「TOB」(公開買付)に際して
「イザベル」なる未知の投資ファンドが同社株式を
1月20日時点では実に37.48%も取得していたことから、
幻冬舎の思惑通りMBOが成立しないのではないか?と
(同社からすると)危ぶまれたが、結果としては、
2月15日に開催された臨時株主総会で予想どおり、
立花証券は欠席により行使せず、見城徹社長だけでも
58%の議決権を持っていたことから、MBOに必要な
定款変更議案が出席議決権ベースで3分の2を超える
議案賛成票が確保行使されて議案が原案通り承認可決され、
幻冬舎の非上場化が実質決定した。

3月16日付けでジャスダック市場から「撤退」=上場廃止される
とのこと。

なお、「イザベル」は水面下で経営陣に対して高値
(TOBよりも高い値段)で株式の買い取りを求めていたらしい。
大方の予想どおり「案の定」だろうし、
所詮「ゲスなヤンキー野郎ども」というところだ。

もっとも、「狙われた」のは当初22万円と設定されたTOB価格
が純資産から割出す1株当たりの価格38万円に対して
「安すぎる」と判断されたことがあるだろう。
TOBに際しては当然、時価よりも高めに設定(といより「誘導」)
するのだが、直近の時価を基準としてTOB価格を決定する
ことの危険性、あるいはもっと言うなら「時価という成り行きを
カモフラージュとした恣意的で作為的価格設定」自体に
モラル的な批判だけでなく、技術的(買占め等)な対抗手段を
許してしまうという「スキ」が生じたと言える。

モラルの問題はあとで述べるとして、「時価上乗せ比率」の
適正度合いをめぐっては過去に訴訟があったし、
今でもいくつかは継続している。
「牛角」で有名なレックス・ホールディングス、
歯磨きのサンスター、いずれも主にTOB価格
(それだけではないが)を巡っての裁判沙汰が長く続いている。

しかし、恐らく株主たちが「本当に怒っている理由」は
「時価上乗せ比率の適切性」ではないと思う。要するに

 「おたくが上場したときから応援して投資してきたのに、
  急に勝手に上場廃止を決めるとは何事か?
  この裏切り者め」

というのが多くの株主たちの本音ではないかと思う。

そうした中、またもやMBOを表明した会社が出た。
「TSUTAYA」で有名なカルチュア・コンビニエンスクラブ
(CCC)が2月3日、MBO実施を発表し、
「非上場をめざす」と正式に表明した。
理由はいつもながら「ワンパターン」であるところの

 「機動的な経営戦略により経営の巻き返しを図る」

というもの。
「上場維持費のかさばり、出版社は上場には向いて
 いないことが(上場後に)解った。
 市場からの資金調達もあまり必要でないことが判った」
とのことは正直な感想だろうが、
そんなことはIPOに多少なりとも関わっている(関わってきた)
人なら全員理解しているはずである。
「今さら何だ」と怒る株主がいて当然のことだ。


個々にやむを得ない事情はあるにしても、あえて一般論で言うなら
上場すること自体、企業としてとても名誉であり、大変な労力を
かけるイベントであるわけで、そうまでして株式を公開した企業が
「やっぱりやーめた」と「あっさり退場」していくのは率直に言って
「投資家への裏切り行為」という面を否定することはできない。

上場時(とその後の)株式の市場価格にもよるが、上場会社と
その創業者一族あるいは経営陣の多くは上場時にいわゆる
「創業者利潤」を確保したはずである。
せっかく苦労して上場したのに、

 「オープン経営よりクローズド経営のほうがやはり機動的
  弾力的な経営ができる」

と「まるで今頃気づいたかのようなコメント」によって「退場」
するなら、

 「最初から創業者利潤の獲得(株価によるボロ儲け)が
  目的の全てだったのでしょう?」

と疑われても反論はできないはずである。


2010年においてはMBOで上場廃止した企業は10社。
2005年から数えると64社もあるという。主な会社だと、

2005年 ; ワールド、ポッカコーポレーション
        (いずれも東証一部)
2006年 ; すかいらーく (同)

2007年 ; 東京スター銀行 (同)

2009年 ; オオゼキ (東証二部)

2010年 ; サザビーリーグ(ジャスダック)
       コンビ (東証一部) 等。

私は仕事でオオゼキさんが上場する前から会長さんと面識がある
のでとても残念。氏については
「創業者利潤だけ取ってさよなら」という人では断じてないことは
存じ上げているので、やむにやまぬ事情があったのだろう。


2月22日、東証の齊藤社長は定例会見で、

 「2009年以降にMBOを実施した企業17社のうち、
  上場時の時価総額を上回る価格で買い戻したのは
  わずかに2社のみだ。
  高値で株主に買ってもらって、増資もし、リスクマネーを取り
  株価が半分くらいに落ちたので株主がうるさくて事業が
  できないから上場廃止する、というのは
  (法的に許されているとはいえ)心情的には非常に不愉快だ」

とコメントしたが、多くの株主と思いを共通する率直な感想だと
思う。

それはそうと、それにしてもここ数年、株式を公開(上場)して
くる会社数が激減している。
これについては後日また別途書いてみたい。

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