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2010年6月 1日 (火)

株主総会 入門 その⑧ 運用実践編その2 ; 事前の対応=社内編

前回5月21日には⑦運用実践編その1;事前の対応の対外編を
書いたので、今回は社内での準備について書く。

【社内的事項】
1. スタッフの選任、体制づくり
 実際の運営に際しては、総務、経理、経営企画などの部門を
 中心にスタッフを決めて臨むのが一般的。
(1)事務局・・・総会当日、ひな壇の議長の後ろで質問に対する
  資料対応や議長の読み間違い等をフォローする。
(2)受付・・・会場の窓口であると同時に、議決権行使書の受領
  (持参失念者等に確かに株主本人であることを確認する
   ことも含む)
(3)場内案内・・・入り口等への誘導や質問用マイクの対応
(4)場外案内・・・状況に応じて、建物の外や最寄り駅間での
  会場への誘導
(5)役員誘導等の対応係・・・会社役員の集合、控え室、
  入退場前後のお世話等

2. 社員株主関係
スタッフと同等と考えたり、扱うことには慎重になるべき微妙な
問題。以前は「議案に賛同すること(意義なし)の表明役」という
実質的な役割を含めた、いわゆる「さくら」的な会社応援としての
株主として「表向きは自主的な出席だが、実態的には会社で
「出ていただく」要請を受けての出席」としての社員株主が
会社の規模(総株主数の状況)に応じて数名~数十名出席する
のが「当たり前」の時代が続いてきたが、昨今では、
プロ株主(いわゆる総会屋)の激減に伴い、必ずしも社員株主に
「強要」することは減少してきている。
出席「していただく」とした場合は、当然事前に通知し、
リハーサルにも出てもらう。
そして本番も含めて次の点に留意する。
①全員が前列にならんで陣取るような露骨な体制はとらない。
②ただし、もしもの事態(暴力行為)の発生も想定して、
 ある程度は前方面に点在して座ること。
③議長の挨拶や了解を求める場面では、(一般の人はなかなか
 言動が少ないので)積極的に、ただし、ごく自然な感じで応答
 すること。特に採決の場面では(声、拍手等により)賛意を
 示すことが重要。動議に対する否決を促したい場合の
 合いの手も含む。
④社章(胸バッジ)を普段着用している会社の場合は、
 バッジを外して出席すること

3. 想定問答作成
株主から出そうなQ&Aを事前に作成しておく。
議長用から、個別回答担当役員用等、直接的な関係者も複数に
なるし、作成する部門も会社によっては管理部門系のみならず、
営業部門も含めて、それぞれの部門や担当者において想定される
Q&Aを用意しておくことが好ましい。
回答者は議長に限らない。議長が担当の取締役を指名して
回答させることが可。
直接的には当然、目前の株主総会に備えるためのものだが、
結果としては(副次的には)作成することにより、それぞれの
部署が抱える問題点、ひいては会社の様々な問題点を
浮かび上がらせることにもなり、作成に携わった者は、
想定問答が「単なる総会のためのアンチョコではない」
ということを知るはずである。
もっとも、実際には、
「想定問答どおりの質疑応答になることはまずない」。
せいぜい似たようなモノを用意できるというところだが、それでも
「精神的な面も含めて」用意すべき。
それと、ポイントとしては、「回答する部分しない点」について
も、法に沿った範囲ではっきりさせておくことは重要である。
完成後は当然、議長、回答者、事務局(担当分けすればよい)
で共有化しておく。
なお、株式会社 商事法務から毎年「別冊商事法務」として
「株主総会 想定問答集 平成○年版」という分厚い参考書が
出ているので、関係者は少なくとも一度は必読である。

4. 議長用シナリオの作成
議長は定款で例えば、
「株主総会は、取締役社長がこれを招集し、その議長となる。
 取締役社長に事故があるときは、取締役会において
 あらかじめ定めた順序に従い、他の取締役が招集し、
 議長となる」等、決めておくのだが、
「シナリオ」とは、その議長が総会当日に読み上げる
「進行用の台本」を言う。
株主総会の進行は議長の全てにかかっていると言え、議長の采配
によってスムーズなものになるか、混乱や「だらしがない」ものに
なるかが決まる。
シナリオとは、当日の報告事項と決議事項を説明して採決を図り、
エンディングを迎えるまでの一連の「セリフ」を文字化して
おくもの。したがって基本的には「招集通知」に基づき、
それに沿って作成する。
よって、報告事項や議案の説明文は原則的(あるいは古典的)
には、ほぼ招集通知の文言と一致させる。
せいぜい文書語を口頭文言に換えているくらい。

ただ、最近の傾向として、特に事業報告(旧・営業報告書)の
部分(下記⑤)は「ビュジュアル化」している会社が増えてきて
おり、必ずしも招集通知と同じとはしない会社も増えてきた。
伝えるべき要点を落とさない限りは法的に問題ないし、だいいち
招集通知と同じ文面を議長が読んでいるのを聞いている株主も
「間違いなく退屈」と言えるので、独自性を打ち出す会社が
増えてきているのは良い傾向であると言える。
「ビジュアル化」にはパワーポイントが使われることが多い。
原則として議長が説明(解説)すべきだが、プロ・ナレーター
による音声吹き替えを行う会社も出てきている。
特に株主から異論が出る場面は見かけられないが、
文句を言われる材料になり得るから、やはり議長自身による
報告、解説が好ましいだろう。
議事の典型的な進行は次のとおり。

なお、質問状に関する対応については5月21日の「その⑦」中
の記載を参照
① 開会時刻の通告(事務局等)・・・無くてもよい。
  いきなり議長が開始してもよい。
② 議長による挨拶と開会宣言
③ 定足数を満たしている旨の報告(事務局。議長でもよい)
④ 監査役の監査報告
⑤ 事業報告(説明という主旨や時間的比重という意味では、
  総会のメイン事項ではある)
⑥ 議案の一括上程・・・・・・以前は「個別上程方式」が主流
  だったが、ここ10年くらいで「一括上程方式」が増えて
  きた。
  利点:⑦の場面で、報告事項や議案等、全てに係る質問を
  受けて、完結できる。
⑦ 質疑応答・・・・・実質的に株主総会の最大のヤマ場。
ここが終われば、一括上程方式の場合、事実上⑧は「機械的」に
通る。
⑧ 議案の採決
⑨ 閉会宣言。新任の役員がいる場合は、閉会宣言の後、紹介。
   幕閉めの挨拶

⑥の一括上程方式をとる場合、②の段階のところで、株主からの
質問を受けるタイミングに触れる際に併せて次のように述べて
おくこと。
「それでは、ただ今より、○○○株式会社 第○期 定時株主総会
 を開会いたします。株主の皆様には、既にお手元の
 「招集ご通知」に記載のとおり、本総会には、報告事項
 ならびに決議事項として、第1号議案から第○号議案までを
 提出いたしております。本総会の議事の運営につきましては、
 議長である私の指示に従っていただきますよう、株主の皆様
 のご協力を賜りたく、よろしくお願い申しあげます。
 また、ご質問につきましては、監査役の監査報告、報告事項の
 報告、決議事項の一括上程 および 各議案の内容説明の後に
 お受けいたしますので、よろしくお願い申しあげます」。

そして、⑦に際して、
「それではここで、報告事項および各決議事項につきまして、
 株主様の皆様のご質問、および動議を含めた審議に関する一切の
 ご発言を頂戴し、その後、各議案につきまして、採決のみを
 とらせていただきたいと思いますので、
 よろしくお願いいたします。
 なお、採決に入ってからはご質問は受け付けられませんので、
 よろしくお願いいたします。
 ご発言につきましては挙手をいただき、私が指名しました
 のち、お手元の出席票の番号と、株主様のお名前を賜り
 ましてから、要件を簡潔にしてご発言いただきたいと
 思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、ご質問に関しましては、具体性に欠けるもの、
 会議の目的事項と関係の無いもの、ご説明することにより
 株主様の共同の利害を著しく害するもの、お手元の
 「招集ご通知」に既に記載のあるもの、会社の会計帳簿等
 を見なければお答えできない詳細な事項につきましては、
 誠に恐縮ながら、お答えいたしかねますので、
 何卒ご了承のうえ、よろしくお願い申しあげます」

それでは、ご質問のある方は挙手、願います。・・・・・・
 (Q&A) ・・・もう無いことが判明したら、
「それでは、ご質問が無いようでございますので、これを
 もちまして質問および審議を打ち切り、議案の採決に
 移らせていただきます」

この「打ち切りのタイミング」こそが最大のポイントで、
総会を会社の主導で行けるかどうかがここにかかっているのだが、
この点は次回の当日編に書く。

5. リハーサル
これまで述べてきたスタッフ、社員株主を含め、そして当然、
議長および役員全員によるリハーサルを実施する。
回数は、その会社の経験度合いによるので一概に言えないが、
初めての場合は当然入念に重ねるべき。
複数回の場合、毎回全員でやる必要なはい。以下は例。
(1)議長、常勤監査役と事務局とでシナリオの読み合わせ
(2)議長、常勤監査役と事務局に数名の社員株主を加えて、
  議長によるシナリオ全文の読み上げと簡単な質疑応答を実施。
  この(2)を2回行うことが好ましい。
  その場合、2回目は動議対応等、レベルを上げて、
  本番さながら「シビア」に実施すべき。
(3)本番会場での全出席者(関係者)によるリハーサル
  会場の設営、すなわち持参すべき小道具等を持ち込んでの
  設置とともに、全体の通しとしての総まとめ的のリハを行う。
  全体の再確認的にとどめる会社もあるが、(2)の後段に
  書いた本番に準じた「シビア」なリハをここでやっても当然
  よい。
  また、受付対応も行うこと。
  受付の対応の重要性については次回の当日編に書く。

なお、当日の運営上のポイントや総会のクライマックスである
質疑応答や動議対応、そして先述のとおり、最も重要なポイント
であるそれらについての「打ち切りのタイミング」、採決等に
ついては長くなるので、次回の当日編に記す。

6. 看板、備品関係
(1)看板・・・①会場内の○○株式会社 第○回定時株主総会
       ②受付の表示 ③会場の状況や会社の方針によって
       ③誘導用会場内外での会場先案内掲示
       ④また、会社によっては会場前方に「式次第」
(2)受付関係・・・①株主名簿(重たいからPC)
          ②招集通知
          ③株主票(出席番号)・・・事前に作成して
          ④議決権行使書を忘れた株主に住所氏名等を
           書いてもらう用紙
          ⑤議決権集計関係・・・昨今はバーコード
           読み取り→PC対応;株主名簿管理人
                        (証券代行)
と要領と手順を確認しておく。
なお、②は地図が記載されていることもあるから、必然的に
出席する株主のほとんどは持参するが、受付では一応
③といっしょに渡すことでよい。
「持っているから要らない」とした場合 にそれに応じた
対応をすればよい。

(3)録音・録画
 ①録音;以前は速記者に依頼して議場に同席させる会社も
  多かったが、昨今では録音テープに替えているケースが
  ほとんどと思われる。
  もちろん後日の議事録作成をメイン目的とするし、何か
  もめごと等不測の事態が生じた際の証拠にもなる。
 ②録画;録画する場合は慎重な配慮が必要。少なくとも
  当日開始前に、「記録のため録画させていただきます。
  ご質問をいただく際に自分のところは削除して欲しい場合は
  お申出いただければ、その際は一時録画を中断します」
  と了承を得ておくこと。

(4)音楽・・・当日開会前の会場内の雰囲気を和らげるという
   意味で、静かな音楽を流しておくのは好ましいことと
   言える。その場合は会場の設備関係を確認しておく。
   録音テープやCD等も独自で用意して持参するのか、
   会場備え置きのものがあって内容的にも好ましい場合は
   それを使うか否かも含めて確定しておくこと。

(5)議長用演台・・・当日の議長席では議長は
  立ったままシナリオを読むのが一般的であり、よって演台に
  シナリオを置く際、適度に傾斜角度がある演題があることが
  当然好ましい。
  ただこれは会場によっては自前で用意しなければならない
  ことがあり、その場合は入手はそう簡単ではないので、
  事前に業者確認しておいたほうがよい。
  そのほか、水差しを置くのか否かも議長と要相談のうえ、
  対応すること。

(6)その他、議長用のマイク、報告する監査役用のマイク、
  あるいは回答役員用のマイクの確認と手配、また、
  会場の広さ等にもよるが株主用のマイクを用意するか否か、
  用意する場合その本数、あるいは担当者が持って
  会場内に待機するのか、スタンドマイクとして最初から
  置いて置くのかどうか、とういう点も会社のスタンスや
  会場によって様々なので、自社のやりかたを決めておく
  必要がある。


7. 最後に、前日宿泊する場合はホテル等の確保
 当日は電車の事故等、何が起きるか判らない、ということが
 ある。よって、役員やスタッフが開催会場から遠方に居住して
 いる人については、極力、会場近くのホテル等に前日宿泊する
 ことが好ましいので、念頭に置いておくべき。

今回は以上です。

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