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2010年5月21日 (金)

株主総会 入門 その⑦ 運用実践編その1 ; 事前の対応=対外編

前回、2009年9月1日に、
株主総会 入門 その⑥「招集通知を作る;ⅲ株主総会参考書類」
を書き、事前の書類上での完成までたどり着いた。

前回も書いたが、招集通知の完成で、実務的および「感情的」には
「8割は終わった」ということは一面の真理ではあるが、
それはあくまでも一面であり、これからの実践編こそが事実上の
「株主総会そのもの」と言える。
慣れないうちは緊張すると思うが、慣れてくればこんなに面白い
ものはないといってもよいほどの 「IRにおける一大イベント」
とも言えるので、ぜひここからのノウハウこそ、習得していただき
たい。

なお、会場選びについてはこのシリーズ連載の最初の段階で言及
しているので、問題ないと思う。
この⑦その1では総会日までの主要な準備、ポイントを整理する。


Ⅰ【対外的な事前準備事項】

1.株主提案権の有無
まず前後するが、株主は原則としてその権利等において「平等」
であることは繰り返し書いてきた。
しかし、例外も少しだがあり、その中でも株主総会に関わる点に
おいても最も重要な点は「株主提案権」というもの。
規定された大株主、すなわち、総株主の議決権の1%以上
(定款で引き下げ可)または300個(単位、例えば1000株を
売買単位としている会社においては×1000で30万株。
なおこれも定款で引き下げ可) を総会日の前6カ月間以上
所有している株主は、開催日の8週間前までに書面で送付(提示)
すれば株主総会で付議する議案を提案できる、とする権利を言う。
(8週間についても定款で短縮可)。
いわば経営に参画できる共益権と言えるが、もちろん、
その提案内容が法令や定款内容に違反、抵触等の問題がある
ものは拒否できる。
以上のことから、8週間が過ぎるまで、こうした提案が来るか
どうかに留意し、もし届いた場合は会社としてどう対応するか
協議して決定する必要が生じる。

2.法定備置書類と株主からの請求
(1)法定備置書類と原則対応
書類関係;基本、招集招通知は別として、事後が多いが事前に
対応しておくものもある。
まず、株主や債権者から閲覧や謄写等の請求に対応する義務
としての法定の「備置」書類がある。
以下は全てではなく主要なものを記す。

①定款・・・備置期間の定めはない(永久備置)ので、
       変更があった場合は都度差し替える。
       株主、債権者が営業時間内に閲覧、謄写を希望
       してきた場合はそれに応じる義務がある。

②計算書類・・・総会日の2週間前から、本店においては5年間、
      支店においては3年間備置し、その間に株主、債権者
      から営業時間内において閲覧、交付の請求があった
      場合は応じる義務がある。
      なお、別途「保存」としての義務が会社法では10年
      法人税法的にも7年という定めがある。
   なお、「会計帳簿」に関しては、議決権の100分の3以上
   を保有する株主に閲覧権が限定されている。
 
③株主総会議事録・・・本店においては10年、支店においては5年
      の備置義務がある。株主、債権者が営業時間内に閲覧
      謄写を希望してきた場合はそれに応じる義務がある。
 
④取締役会議事録および監査役会議事録
    ・・・本店においてのみ10年間の備置義務がある。
      株主、債権者が営業時間内に閲覧、謄写を希望して
      きた場合はその者が「裁判所の許可を得て(いること
      を条件に)」閲覧、謄写に応じればよい、という点で、
      他の書類とは異なるので注意が必要。

⑤株主名簿・・・本店、ただし株主名簿管理人=代行機関がそれに
      代わることでよく、ほとんどの会社がそのような対処を
      している。
      そしてそれは資料の性質上「最も微妙な」ものだから、
      ということとも関係する。すなわち、会社としては
      守秘義務の観点からも最も外部者に見せたくない資料
      であるからだが、株主、債権者が営業時間内に閲覧、
      謄写を希望してきた場合は法125条3項に定めた
      拒絶できる場合に該当しないときはそれに応じる義務
      がある。
      実際問題としては「拒絶理由について、条文以上に
      厳しく対応している」のが実態で、要するに
      「よほどの絶対的な正当理由がない限りは応じない」
      とするのが会社および株主名簿管理人たる証券代行
      機関の「常識的対応」であることを知っておく必要が
      ある。

⑥有価証券報告書・・・金融商品取引法上、金融庁に提出後5年間
      「公衆縦覧に供する」義務がある。
      関東圏なら関東財務局 証券閲覧室での縦覧。
      なお、2004年6月から同報告書はEDINET
      による提出義務に変わり、紙面提出が廃止された。
      これのより縦覧もEDINETからのそれとなった。

⑦議決権行使書・・・その他、「議決権行使書」も総会終了後、
      3ヶ月間は保管義務があり、その間にもし株主が
      閲覧希望で来社した場合には見せる義務がある。

(2)株主からの請求に際しての留意点
以上のように、一定の条件の下で原則として株主からの請求に
応じる義務がある。
また、請求行為自体は招集通知発送後とは限らない。
いつでも有り得る。
法定に沿った対応、という留意点のほか、基本的な姿勢として、
相手が確かに株主または債権者等であるかどうかを確かめる必要
があり、またその場合でも、請求理由については厳密に求め、
それについての慎重な検討と対応も当然心掛けるべきである。
「ヘンな株主」からかどうかの確認と判断という微妙な問題も生じる
ケースは有り得るし、特にいわゆる「反社会的勢力」にからんだ
相手の場合は、弁護士に相談するなど、更に慎重な対応が
必要な場合があることも留意しなければならない。

3.法定ではないが株主から総会前に来る可能性のあるもの
(1)株主からの質問状
招集通知発送後とは限らない。いつでも来る可能性はある。
基本的には回答は用意しておく。
ただし、当日進行に関する回で詳細は述べるが、回答を拒否できる
種類のものも法で規定されていることに留意して作成する必要が
ある。
①招集通知発送の前に到着したもの
 事前の場合、招集通知を見たうえで出して着ているわけではない
 ので、総会の議案や報告事項に直接的に関係したことでないこと
 詳細なものというより大枠的な、あるいは経営理念的なものが
 予想されるし、また、中には「威圧を目的としただけの形式的な
 もの」である場合も有りうる。
 なので、招集通知発送数日後以降に届く質問状を出した株主に
 比べれば、当日出席する可能性は低いと想像できる。
②招集通知発送数日後以降、総会前日(当日開始直前)に届いた
 質問状の場合、特に招集通知に記載した事項に関する内容の
 質問状の場合は、差出人が当日出席する可能性は比較的高い。
 (絶対に来るとは限らないが)

(2)対応方法
先述のとおり、基本的には回答は用意しておくべき。そのうえで、
当日のその質問に対する対応は幾つかの方法がある。
①差出人が欠席の場合は触れない(回答しない);
 当日、受付でその株主が来場しているか否かを確実に逐次確認
 する。もし、欠席している場合は質問状が来ていること自体にも
 全く言及することなく(無視して)議事を進行させる。
②来場している場合は、質問を受け付ける際、その前後等、
 一定の段階の場面で、
 「○○様より事前に質問状をいただいておりますので、回答
  させていただきます。なお、1つ1つということでなく、関連した
  ご質問は一括してお答えするなど、包括的にお答えさせて
  いただきます。また、株主総会の目的事項に関しないもの
  ~等々はお答えいたしかねますのでご了承願います」と、
 法314但書、施行規則71条で、回答する必要のないものは
 省いている旨を伝えたうえで一括回答する。
③上記①や②にかかわらず、とにかく議場で回答を読み上げて
 しまう。

以上の3とおりが主な対応策と言えるので、適宜、会社で判断して
実行すればよい。


Ⅱ【議決権の確保と決議】

1.議決権確保の確認
さて、ところで招集通知を作成して無事発送できたからといって
「自動的に総会が開催されるとは限らない」。
開催に必要な議決件数というものがあるので、これを絶対的に
確保しなければ「始まらない」。
最終確定についての詳細な点は次回書くが、概略を述べる。

最終確定して「出席総数、その議決権の個数は○○です」として
公表し、「ですので、開催、議案の決議に必要な個数は定足数を
満たしている」旨、株主に伝え、株主総会の開催を実質的に宣言
することになるので、当日の開催直前までの数がその最終の数
となる。
しかし、当然ながら招集通知を発送して当日に至るまでの確保状況
に着目していかねばならず、少なくとも前日で「問題ない」状態が
確保されることを当然のこととしなければならない。

具体的には、「議決権行使書」がどの程度行使されているか
(証券代行機関に到着しているか)ということと、
大株主で当日出席する株主がどれくらいいるか、という
その総数により判断する。

会社の株主構成状況によっては「議決権行使書」を投函して
いただくことを株主に促す努力も必要となる。
例えば電話等による大株主への出席または「議決権行使書」の
投函の催促(ただし丁寧なお願い、という姿勢での)。
また、招集通知と議決権行使書を発送する際に、
「出席できない場合、お早めに投函をお願いします」という紙面
(目立つよう色紙を使うなどして)同封することも、特に
大株主が少なく、株式保有者が大人数に分散している会社の
場合は、議決権の確保=開催条件の一環として、行うことを
検討すべきである。
後者についてはコストがかかるうえ、それに見合った効果が
どの程度かは不明ではあるのだが。
 

2.議決権行使書集計と決議方法
(1)開催に必要な定足数について
議決権の確保というところと前後してしまうが、決議にはその議案
の内容によって「普通決議」(取締役・監査役の選任等)と
「特別決議」(定款変更、取締役・監査役の解任等)がある。
(他にも「特殊決議」という稀な種類があるが省略)
「普通決議」は役員選任等多々あり、該当する条文位置も
そうとう散りばめられているので、詳細は省く。
「特別決議」は定款目的の変更のほか、減資、事業譲渡、
株式併合等、「普通決議」に比べて、より厳格な可決が求められる
ようなことに絞られてはいるものの、これも該当条文(箇所)
としては多岐に及ぶので詳細は省く。

(2)普通決議のための必要数
株主総会の決議は、定款に特別の定めがある場合を除き、
議決権を有することができる株主の議決権の過半数を有する株主が
出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
(法309条)
「定款に別段の定めがある場合を除き・・・」というのは、
定足数の排除を可能としていることを指し、定款で定足数を置かず
決議に際しては出席した人の過半数の賛成で可決できる、と
定めれば、その内容で決議ができる。

(2)特別決議(309条2項)
当該株主総会において議決権を行使することができる株主の
議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあって
は、その割合以上)を有する株主が出席し、
出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって
行わなう。
特別決議では定足数の排除はできない(必ず前提として必要な
議決権数が要る)が、出席者を過半数よりも厳しくも緩くも
できる。ただし、緩和の場合も3分の1を下回れないので、
最大緩和する場合は定款で、
「3分の1以上を有する株主が出席し・・・」とする。


【「出席」 の意味;内容】
前後するが、それぞれにおいてで言う「出席」とは、当日来場する
株主だけでなく、事前に投函していただいた(届いた)
議決権行使書を当然含む。


3.出席者情報を極力押さえる
議決権が確保できたら、先述のとおり、当日どういう株主が来場
するかどうかについて、可能な限り情報を集めること。
「株主名簿管理人(旧;名義書換代理人)である証券代行機関から
の情報や、場合によっては地元の警察、あるいは、
社団法人 警察庁管内特殊暴力防止対策連合会=「特防連」の
情報にも留意する必要がある。

4.そのほかの重要な関係者等への連絡、要請
 ①顧問弁護士・・・事務局として入ってもらう場合など
 ②証券代行=株主名簿代管理人・・・当日の受付での
   最終集計等のサポート要員
 ③警察関係・・・最寄りの(開催地区を所轄する)警察署へ
  「警戒派遣」の要請をしておく。
これら①~③はいずれも当日出席してくれる人員(数)を確認し、
あるいは要請しておく。
 ④大株主と包括委任状・・・動議については次回の当日編で
  書くが、動議対応として会社の当初の意向どおり(議案
  どおり)に導いて可決するには、当日の出席者の中での
  議決権の賛否による(事前に行使された議決権数は考慮
  されない)。そこで、「与党である大株主」の誰かに
  「株主からの予期せぬ動議に際しても、会社側に
   賛成するための議決権」として、大株主に
  「包括委任状」を持参して出席していただくことが好ましい。
  あるいは会社によっては「必須要件」となる。
  どんな事態にも会社側で多数派になれるための配慮を
  しておくという主旨である。

①~④の該当者には「招集通知」ができたら事前に渡して
おくこと。

以上、今回はここまでです。

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