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2009年12月30日 (水)

労働者派遣法の改正 こうした規制に反対する人々の意見に対する反論

「労働者派遣法」の改正案が固まった。
詳細は各新聞が伝えているので省(はぶ)く。
施行は交付日から半年以内だが、経営側に配慮して登録型は
5年間、製造業は3年間の猶予期間を置くとのこと。

ダムや道路の建設を例に挙げるまでもなく、どんなことでも、
それが良い方向であれ、悪い方向であれ、進行しているある事を
「元に戻そうとすることは大変な困難を伴う」ものだ。しかし、
「どこかで実行しないと、悪い状況は元から断ち切らないと」
(それをしない限り)「絶対に事態は好転しない」ということは、
100%言えると思う。

今回の民主党の改正案について、数紙の新聞社説を踏まえて
書いてみたい。

【日本経済新聞の社説】
これに関しての矛盾点および同紙が労働者側に立っていない論点
については、12月22日付で既に書いたが、もっとはっきり
言うなら、同紙および財界の認識の大きな「履き違い」は、

1つは「多様な働き方を求めている人など少ない。
 それは経営側の方便にすぎない」ということ。
もう1つは「非正規と派遣制度を混同している」ことから生じて
いる。すなわち、
「非正規イコール派遣ではない、という認識ができていないから、
 全て転倒した議論となる」のだ。

どういうことかというと、重要な論点として2つ記してみる。

【重要な論点】
1.事情により非正規で働きたい人ももちろんいる。
 でもその場合、アルバイト等の直接的短期契約を就業会社と
 結べばよいだけで、派遣会社など関与する必要性など
 全くないのだ。
 就業者にとっても(情報が多く得られる点だけが唯一の利点で
 それ以外は)面倒なだけで利点はない。
 派遣制度、というのは、せいぜい「派遣会社という形態=それを
 経営する人とそこで働く人の雇用を創出したのみ」であり、
 派遣制度、派遣会社というものは、雇用制度自体とは本来、
 本質的には全別問題の「事象」にすぎないのだ。

2.企業も、派遣会社を利用するのはコスト的には結局のところ
 全く「得にならない」のだ。
 アルバイターには時給賃金による契約雇用だけで済むが、
 派遣会社をからませると当然仲介手数料(フィー)が発生し、
 これは決して安くない。したがって、
 「派遣会社経由での雇用は、就業期間中のコストは正社員採用
 した場合とほとんど変わらない」のが実情だ。
 ここの部分が、ジャーナリズムでの議論でいつも抜け落ちている
 部分に他ならない。
 そしてしかも、この部分こそが「実務に関する最重要問題点」
 であるにもかかわらず、である。
 要するに派遣会社との契約の実務手続きをしたことの無い人たち
 が議論しているからそういうことになる。

以上、要するに非常に乱暴な言い方を敢えてすると、
「経営者は派遣会社にダマされているにすぎない」
ということである。

では、次に他紙の社説を見てみよう。

【東京新聞】
12月28日の社説で、
「企業側は、派遣禁止は労働者の雇用機会を奪う、と反発して
 いるが、(11月の)完全失業率5.2%、
 有効求人倍率が0.45倍という状況で、労働者が
 「働きたいときに働く」という選択などそもそもできるのか?」
とジョブを出し、
「賃金コストが高まれば企業は海外へ移転するとも強調するが、
 (そもそも、おおむね)海外移転は消費地との直結や円高対策
 の面が強い」とし、
「経営者は直接雇用と長期雇用の原則に立ち戻るべきだ。
 技術の継承だけでなく、職場の一体感の醸成で生産性の向上や
 労働災害の防止も図れる。
 労働者をモノ扱いにしては企業の将来性はない」
と断言している点が良い。

【朝日新聞】
12月28日の社説で変更内容の概要を伝えたのち、
「企業側は、「かえって失業者が増える。生産拠点を海外に移す
 企業が増え、雇用が減る」というが、景気変動のしわ寄せが
 非正規社員に向かう構造を放置したままでよいのか?」
と指摘し、また、改正の内容の問題点として、
「1年に満たない雇用も常用型とされないだろうか?
 みなし雇用も直接雇用が認められるのは派遣元会社との
 契約期間だけでよいのか?」と指摘し、
猶予期間の3~5年は長さ過ぎるのではないか?との主旨を
記している。
そして根本的な問題として、
「正社員と非正規社員との待遇格差の点が論議不足。
 欧州では雇用形態にかかわらず、同一労働なら
 同一賃金は当たり前となっている。
 非正規社員の契約更新の回数や期間の検討、
 非正規社員の技能引き上げなども含め、
 雇用の「調整弁だのみの経営」が必ずも経営にとって
 得にはならない仕組みを確立すていくべき」とし、
最後に、
「不況のたびに大量の失業者が生まれる構造を改めない限り、
 社会は安定しないし、産業の活力も生まれない」、
としている。


【これらを踏まえての まとめ】
1.今回の改正=規制に対してその反対者がよく言うところの
 「登録派遣が禁止されれば、中小企業の人材集めはさらに
 難航する。また、大企業において工場等の海外移転が
 更に増加し、いわゆる空洞化が生じるだろう」
 とする点については、2つウソがある。
{ウそ1}
 まず、中小企業は派遣制度などはあまり利用してはいない。
 そして先述の重要な論点の2で述べたように、
 派遣は実はコストがかかるのだ、ということを理解していない。
 使用人に対する賃金に加えて、派遣する会社に対するフィーが
 加算され、これは決して安価ではない、という点を
 全く考慮していない。
{ウソ2}
 先述の東京新聞社説の解説に加えて、
 「空洞化現象」は1990年前後ならまだしも、中国を
 はじめ東南アジア諸国の賃金は徐々に上昇してきて
 いるようなこんにちの時代においては、かつてのような
 「何でも海外移転」という状況は
 「縮小こそすれ、拡大現象は基本的には減少していく」
 ということを理解できていないのだ。

2.次に「派遣という多様な働き方を認めないような在り方
 は問題だ」とする声に対して反論するなら、
 以前、私の意見が東京新聞の投書欄に掲載された内容および、
 22日の日経新聞社説への反論内容と重なるが、
 「多様な働き方」などと言うのは「キレイごと」であって、
 要するに雇用する側の「都合の良い解釈」にすぎない。
 すなわち、「希望する働き方、というタイプの話しではなく、
 強いられた仕組み、蹂躙(じゅんりん)する為の理不尽な
 システム」にすぎないのだ。
 働く側はそんな「多様などという呑気なことは考えていない」。
 非正規労働を考え、求める場合はアルバイト等の短期では
 あるが直接雇用を求めるのが過去も現在も普通であって、
 派遣会社に登録するなどという、それ自体、手間のかかる
 ようなことなどまずしない。当たり前のことだ。
 第一、派遣登録は、みすみす派遣会社を儲けさせるだけで、
 自分にとっては利点は特別何も無いに等しい。


【付記;ある個人の意見を紹介】
最後に、社説ではないが、あるジャーナリストの意見を紹介して
おきたい。
ルポライターの鎌田慧(さとし)さんは、10月27日の東京新聞
の(人件費ならぬ)「人権費」と題したコラムで、
派遣法改正に反対する財界の意見、すなわち、
「派遣を規制すると、工場が賃金の安い外国に逃げる、失業者が
 増える」という言い分に対して、
要するに「安くて、いつでも切れる労働者が欲しいだけだ」として
次の2つの例を引用している。

①「30年ほど前に北九州に労働下宿という日雇い労働者を
 供給する暴力飯場(はんば)があったが、その下宿経営者は、
 社会事業の一翼を担っている、とウソブイテいた。
 これに似ている」
②「売春防止法」の制定に対して、当時の「関係業者たち」が
 「失業者が増える」と言って抵抗していたのと似ている」

そして鎌田氏はこうまとめている。
「労働者供給事業を禁じている職業安定法の裏側で、
 登録型派遣という名の日雇いやスポット的供給を
 認めたがために、工場への大量派遣と派遣切りという悲惨な
 状況を招いた。こうした非人間的な制度は排除すべきだ」。

この、鎌田氏の言う最後の部分、
「労働者供給事業を禁じている職業安定法」と、その
「裏側で「登録型派遣」という名の日雇いやスポット的供給を
 認めたがために~」という部分は重要。
実はここに問題の根本がある。
すなわち、本来的には認められない状態を、「ねじまげて」
ねん出した制度が「派遣制度」にほかならない。
得をしたのは、実は「派遣会社のみ」なのだ。
「派遣制度は、派遣会社のために作られた制度に他ならない」
のだ。これが本質である。

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