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2009年11月25日 (水)

IFRSに関する法的問題を含む現状について

1.【概要について】
人によって「アイファース」とか「イファース」と呼ばれている
IFRSがいよいよ話題になってきた。
IFRS=International Financial Reporting Standards。
国際財務報告基準と訳され、国ごとに異なる会計制度をまとめ
世界的に承認され遵守されることを目的として、ロンドンに
本拠地を置く国際会計基準審議会
(International Accounting Standards Board、IASB)により
開発・設立された会計基準(統一基準)の(総称の)こと。

全体が完成形とは言えず、今後、IASBにより既存の会計基準
の改訂や新基準の公表が行われる。
国際財務報告基準を自国の会計基準として採用している国および
同基準への収斂を目指している国は、既に100ヶ国以上に
及んでおり、特にEUが2005年から強制適用したことが
各国の採用を促したとされる。
例では、インドは2011年4月1日以降に適用予定。
ブラジルは2010年までに連結財務諸表を同基準に準拠して
作成する予定。
韓国は2011年までに上場会社に同基準を義務づける予定など
その数は増加をたどっている。
アメリカは2011年に「強制的するかどうかを決める」とし、
現状ペンディング状態。

日本は2005年1月にIFRSへのコンバージェンス(収斂)に
同意し、2011年6月末が日本における収斂の期限として
いることから、
「2012年をメドに、強制適用するかどうかを決める予定」
としている。
ただし、強制適用を決めた場合でも、少なくとも3年の準備期間
を置き、2015年または2016年から開始する、としている。
また、金融庁の方針として、
「国際的に事業を展開し、適切な能力のある企業であれば
 2010年3月期から適用しても構わない」とする「任意適用」
を認めている。

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ところで、これを日本が導入する際、大きな問題となる点が、
法的および実務ベースのいずれにも存在するとされるので、
それを整理してみたい。

2.【法的疑問点】
(1)問題となる基本的な点
一番問題とされる根本的な点は、
「任意適用ならともかく、「強制適用」となると、一般市民の
 権利制限、義務負担に関わる強制力を、なぜ海外の
 民間セクターが開発した会計基準に付与するのか?」、
という点。
すなわち、立法機関は唯一国会であって、国民の権利制限の
根拠となる私人に対する立法権については包括的な委任は
憲法上認められていないので、国際会計基準審議会の開発
したIFRSに対して法的拘束力を認めることは最終的には
憲法違反にさえなる、という点だ。

平たく言うなら、
「一民間研究団体が開発した基準を、どうして国家として
 受け入れて、国として指定する義務があるのか?」
ということだろうし、それ自体は、しごくもっともなことに
思える。

(2)日本の企業会計基準の特色
前後するが、それはたぶんに日本の会計基準の特殊な体系と
関係している。
日本の会計基準は固有の、独特の内容をもっていることが
かねてより指摘されてきた。
それが特殊性、閉鎖性ということなのかどうかは別として、
以下、極めて複雑な構成が成されている。すなわち、
日本における会計基準は国家が制定する法律というかたちを
採っていない。いわゆる慣習法として商法、会社法、
金融商品取引法などからの適用等を踏まえた法体系として
の規範として構成されている。
具体的には、1947年に当時の大蔵省(現・財務省ではなく
内閣府を親とした金融庁)の企業会計審議会で公表・設定
された「企業会計原則」を中心に、同じ旧・大蔵省関係では、
例えば「原価計算基準」、「連結財務諸表原則」、
「リース取引に関する会計基準」、「退職給付に係る会計基準」、
「税効果会計に係る会計基準」などがあり、
また、財団法人 企業会計基準委員会による設定として、
例えば「自己株式および準備金の額の減少等に関する会計基準」、
「役員賞与に関する会計基準」、「株主資本等変動計算書に
関する会計基準」、「棚卸資産の評価に関する会計基準」
などがから成っている。

したがって、個々の具体事例について、それぞれ該当する基準に
照らし合わせた対応が必要となるわけで、実務者には当然
極めて専門的な知識と技量が必要とされる。

加えて法的な面を考えた場合、大元の「企業会計原則」ですら
その前文において、
「企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、
 一般的に公正妥当と認められたところを要約したもので
 あって、必ずしも法令によって強制されないでも、全ての
 企業がその会計を処理するに当って従わなければ
 ならない基準」
という、微妙な言い回しをしている。
要するに「特に法定、法令化して強制を明文化しないが、
まあ事実上の強制だよ」としている。
事実上そうでも、明文化、一本化(統一化)法令化していない
わけである。
そこでもって、IFRSについて「強制適用する」となると、
基本的に法整備が必然的に求められることを前提とするから、
国家として法令化ないし、それに準じた対応が想定されるため、
最終的には先述の(1)に記載の問題が表面化すると考えられて
いる。

しかし、たぶん、国際的な流れからいくと、この点は何らかの策
により解消されるのかもしれない、あるいは何らかの対応策に
より解消せざるを得ないとも想定されるため、
以下は、立法的な問題ではなく、実務的にはどうか、そちらこそ
多大な問題が存在しているようなので、現状予想され、
指摘されている主な問題点を整理してみる。

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3.【実用実務に関する問題点】
実際上の問題、すなわち実務的な問題点こそ解消されないと、
導入後「実害」が生じて支障をきたすことが想定されること
から、より深刻な問題であることは言うまでもない。
現状、全体に関する点で次のことが指摘されている。
①重要性に関する別記についての数値基準がないので、
 その重要性の判断の根拠の問題、注記の増大化などの
 非効率性という問題が生じる。
②企業を金融商品とみなした投資家のための会計基準である
 要素が強い。
③進行基準での収益認識は認めない、リース資産を全て
 資産計上する、など、理論的に整合性のとれない点が
 多々ある。

(1)具体的な実務的特長;全体
・現状よりも数値基準が減り、企業ごとにそれぞれの原則を解釈
 して対応することになる。
・現在の1期間に稼いだ純利益を示す損益計算書(PL)重視
 から、貸借対照表(PL)を重視して2期間のBSの
 差額(包括利益)を重視する内容となる。
・現在の債権者保護も含む会社法や各税法を考慮した内容から、
 会社法、税法の制約がなくなり、債権者よりも、投資家向けの
 性質を持つようになる。
メリット;①財務内容の透明性が向上する
     ②海外企業との比較が容易になる
ディメリット;
     ①会計基準の設定・変更が日本の意向だけでは
      行えなくなる
     ②見積もり的な要素が増え、外部分析による
      予測が難しくなる
     ③注記が増え、作成者の負担が増加する

(2)具体的な実務的特長;個別の変化、特徴
・企業買収時に発生する「のれん」を償却する必要はなく、
 営業利益増の要因となるが、毎年、減損テストが義務付け
 られる。したがって、「のれん」価値が減少した場合、
 減損処理が必要となる(毎期の規則的な償却に替わり、
 毎期その状況に応じた減損処理が必要となる)。
・リース利用者のメリットとされたいわゆるオフバランス効果が
 なくなり、利用者はリース資産・債務をBSに計上しなければ
 ならなくなった(既にIFRSの影響で09年3月期から
 リース会計基準が変更されている)。
 →リースをやめて、現物購入や銀行借り入れに替える企業の
 増加が想定される。
・研究費と開発費は厳密に分けられ、それぞれ異なる処理が
 必要となる。
・株式の持合い株の益出しができなくなる…子会社が上場した際、
 その株式を売却しても、被支配株主との取引、資本取引として
 扱われるだけとなり、利益として計上できない。
・有給休暇の消化率がコストに反映される;期末時点で消火されて
 いない有休を費用計上する。
・貸借対照表上に乗せていないオペレーティングリースが
 認められなくなる→「隠れ債務」が顕在化する。
・ポイント引当金が長期負債となる;計上基準が変わり、
 発行時に全額を負債計上しなければならなくなる。

4.【可能性関係;未決定事項。検討されている途中】
・貸倒引当金や連結の範囲が大きく変わる可能性あり。
・退職年金債務のオンバランス化;年金資金積立金が不足して
 いる場合、一括償却の可能性、年金数理計算上の
 差異=不足額を即時に費用計上する可能性あり。
・毎期末の含み損益を加味した包括利益が企業の物差しに
 なる可能性あり。
・いわゆる「発生可能性要件」の削除が検討されており、
 (一例だと)訴訟案件で、敗訴の可能性が低くても、
 引当金の計上が求められる可能性あり。
・デリバティブ取引の初期損益の取扱い
・保険負債への時価会計導入
・投資不動産の評価方法の変更
・実質支配する特定目的会社の連結化
・借入れ費用の資産化

5.【IFRSが導入された場合の衝撃度】
東京証券取引所は、IFRSについて、今のところ、
「企業を同じルールで国際比較できるようになる」と高く評価し、
積極的な旗振り役となっているが、内部統制同様、
いやそれ以上に「厳しさ」を警戒して益々、上場したがらない
会社が増加することは容易に想像がつくので、
取引所としても実は警戒、懸念すべき事態ではないか、と思う。
「内部統制」は既存ルールを精緻化、厳格化するという性質の
ものと言えるが、それに対して、
IFRSは 「今までと全く異なるルールの導入」なので、
より「衝撃度」は大きいと思われる。

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