« 湯浅誠氏と自民党、大村秀章厚労省副大臣の連携&「最大の敵は無関心」 | トップページ | 幾つかのインタビュー、幾つかの言葉から »

2009年1月 3日 (土)

第52回NHKニューイヤーオペラコンサート 2008

3日は姪っ子の誕生日なので、親族の新年会はここ何年も実質
この日。そして、17時ころ退席して19時開演のNHKホールに
直行する、というパターンがこれで3年連続3回目。
「NHKニューイヤーオペラコンサート」。
今回は「つなぎ」のコーナーである、ジャズ=ガーシュインに
一番衝撃を受けたのだが、以下、順を追って書いてみたい。

開幕冒頭、「タンホイザー」の「歌の殿堂をたたえよう」では
2階左右に別れたトランペット群がややズレたり、合唱の男声の
声の「粒」がやや乱れていたり、ちょっと<?>の開始。
帰宅後、TVで確認すると、それほどでもないのだが、
ホール内では、特にトランペット・バンダのズレは明瞭に
聴きとれ、会場から「失笑」が起きたほだった。

高野二郎さん(テノール)の「魔笛」から「なんと美しい絵姿」
 これは恋の歌なのに、恋心が感じられない。声や技術は
 このくらいの人はいくらでもいるので、その「心」が見えて
 こないとちょっと苦しい。厳し過ぎる感想かなあ・・・。

安井陽子さん(ソプラノ)。同じく「魔笛」より
 「復讐の心は地獄のように胸に燃え」
 昨年特に注目を集めた新星ということは知っていて、初めて
 聴くので楽しみにしていた人の1人。
 2年前に臼木あいさんが歌い、NHKの音楽スタッフをして、
 「この曲をこの演奏会で完璧に歌えた最初の人」と絶賛され
 たので、ハードルは高いはず。
 声の質感はこの曲に合っているが、音程はいまいち
 完璧とは言えなかった。2年前の臼木さんが90のデキだと
 仮定すると、今日の安井さんは75という印象。
 厳し過ぎるかなあ・・・。
 でも良い歌手だと思う。今後に期待。

樋口達哉さん(テノール) オッフェンバックの
 「ホフマン物語」から「昔アイゼナハのお屋敷に」
 長いアリアを清らかにまとめた。

幸田浩子さん(ソプラノ) 同じく「ホフマン物語」より、
 「森の小鳥はあこがれを歌う」
 お人形が歌う、という設定なので、途中で「ネジ切れ」を
 起こすというとても面白く、有名な曲。
 以前、私はテレビで森麻季さん、プライベートな会で
 臼木あいさんによるこの曲の歌唱を聴いている。
 この日の幸田さんは、贔屓目抜きに、その可憐な声と、
 技術的に最高難度に属するこの曲を完璧な音程で見事に
 歌い、とても魅力的で素敵だった。
 来月=2月のCD第2弾、「カリヨン~愛の祈りを歌う~」
 が待ち遠しい。

佐藤泰弘さん(バス)による、ボイト作曲「メフィトフィーレ」
 から「私はあまのじゃくだ」
 この曲は初めて聴いたので、感想は控えたいが、
 難し曲を立派に歌われた、という印象。

佐々木典子さん(ソプラノ)による、ドボルザークの
 「ルサルカ」より、「月に寄せる歌」
 大好きな曲だが、あらためてオーケストレーションの
 素晴らしさに感動した。ドボルザークが、「新世界」や
 第8交響曲、チェロ協奏曲を、「仮に書いていなかったと
 しても」、この1曲だけでも、「この作曲家、天才」、と
 誰もが思うはず。
 今やベテランの佐々木典子さんの風格と深みのある
 名唱。しかし、最終的には歌手個人や作曲家個人さえも
 超えて、この作品の美しさ、偉大さのみがホールの空間
 一杯に拡がったのだった。
 これは作曲家と歌手への最大の賛辞という意味で、
 敢えてそう記したい。

そして、第1部の最後は、成田勝美さん(テノール)と
横山恵子さん(ソプラノ)による、「ワルキューレ」より、
第一幕のエンディング。ワーグナーの素晴らしい世界が
ホール一杯に拡がった。
成田さんも立派だったが、特に横山さんが素晴らしい。
「この人なら、欧州の歌劇場で十分歌えるな」と思って、
終演後、あらためてプログラムのプロフィールを見たら、
もうとっくに活躍されている。そうだろうな、と思う。
ソプラノの人がときに苦手な点である中音域の声も
全く痩せることがなく、朗朗と歌える。ワーグナーはそれが
できないとちょっとキツイ。だから、ソプラノに限らず誰もが
ワーグナーを歌えるわけではない。
日本の歌手の国際的レベルをあらてめて示した名二重唱
だった。

第2部は、「ガーシュイン・ソングブック」と題して、
ディナ・ハンチャードさんのソウル・ソプラノ、山中千尋さんの
ジャズ・ピアノによるガーシュイン・メドレー。
ハンチャードさんは初めて聴いたのだが、その歌い出しの
第一声から「グサッ」と心を掴まれたのは私だけではなく、
おそらく会場中の誰もがそうだったのではないか、と想う。
「衝撃」。感動しっぱなし。山中さんのピアノも実に見事で、
ワーグナーの世界から一転して、NHKホールのど真ん中に
一気にアメリカのジャズの世界がホール一杯に拡がった
のだった。ちょっと、この2人、それぞれに今後完全要注目。
本当に見事だった。

そして第3部。
林美智子さん(メゾ・ソプラノ)による、「カルメン」の
 ハバネラ「恋は野の鳥」
 言うまでもなく有名な曲を、気品のある色気で歌われた。
 もっと「ネチッコイ」色香を期待する人には物足りないかも
 しれないが、こうした彼女らしい「爽やかな色気(?)」は
 とてもユニーク。

小森輝彦さん(バリトン)による、同歌劇より、これまた
 有名な「諸君の乾杯を喜んで受けよう」
 歌唱後の客席の反応は大喝采だったが、私には「普通」
 という印象。高音域は立派だったけれど、低音域の音程が
 いまいちだったので。すみません。

小山由美さん(メゾ・ソプラノ)による、マスカーニの
 「カヴァレリア・ルスティカーナ」より「ママも知るとおり」
 小森さんとは逆に歌唱後の客席の反応はいまいち
 だったが、別に悪くないと思う。ヴィブラートがやや多い
 ので、メリハリが無かったのかもしれないが。
 きっと、技術というより内容的に難しい曲なのだろう。

福井 敬さん(テノール)による、レオンカヴァルロの
 「道化師」から「衣装をつけろ」。名テナー健在。
 「さすが」の歌唱。

臼木あいさん(ソプラノ)による、有名過ぎるくらいの曲、
 プッチーニの「ジャンニ・スキッキ」から「私のお父さん」
 他の人が、5分~10分前後の曲なのに、若手実力派の
 あいさんが3分足らずの曲なので、そういう意味では
 ちょっと可哀想そうだったが、これまでは彼女の抜群の
 「技術」に関心が行きがちな中、この日の歌唱は
 ヴィブラートが多いこともあって、情感たっぷりの歌唱で、
 これまでのイメージを少し変えた感もある内容だった。
 今、彼女は新たな歌の世界に入っていこうとしている過渡期
 にあるのかもしれない。最後のロングトーンは感情と技術の
 コントロールが立派だった。
 でも、彼女を初めて聴いた人には、この曲だけでは、
 まだまだ彼女のスゴサは判らないと思うけれども。

堀内康雄さん(バリトン)による、ジョルダーノの
 「アンドレア・シェニエ」から「国を裏切る者」
 すごく立派な歌唱。素晴らしい。

高橋薫子さん(ソプラノ)による、グノーの
 「ロミオとジュリエット」から「私は夢に生きたい」
 曲が特に大きな特徴がある曲でもないので、
 とりわけ彼女の個性を出し切れたとは言えなかったが、
 それは彼女のせいではなく、曲のせい。

直野 資(たすく)さん(バリトン)のよるヴェルディ「オテロ」
 から「無慈悲な神の命ずるままに」
 もはや大ベテランといってもよい人。
 特別圧倒的というのではないが、確実で堅実な名唱。

佐野成宏(しげひろ)さんによる、プッチーニ「トスカ」から
 「星はきらめき」
 力強さではなく、繊細さをもったカヴァラドッシ、という
 感じ。これはこれで立派な歌唱。

大村博美さん(ソプラノ)による「蝶々夫人」より、
 「ある晴れた日に」
 大村さんには独特の品というか、良く彫琢された大理石の
 ようなツヤと骨が真中にドシっとあるような安定感を感じ
 させるような人で、とても注目している。
 この日の歌唱も、一般的な歌唱よりはやや男っぽい感じ
 の歌唱で印象的。

最後は全員での「乾杯の歌」。1人あるいは2人で交互に
ソリストが歌うので、声の個性の違いが明瞭に判り、
とても興味深い瞬間。
福井さん、臼木さん、幸田さんの「声の伸び」がとても
良い。今年も素敵な演奏会だった。

« 湯浅誠氏と自民党、大村秀章厚労省副大臣の連携&「最大の敵は無関心」 | トップページ | 幾つかのインタビュー、幾つかの言葉から »