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2009年1月 9日 (金)

日本経済新聞 西條都夫編集委員の文についての感想

この日の日経新聞朝刊の第1面に、同新聞社編集委員の
西條都夫氏が「雇用と競争力 両立探れ」と題して、朝日や
讀賣での社説に準じるような扱いで「概論」を書かれている。

少し文面を追ってみよう。
前段は主にいくつかの現状の紹介と説明。中段では、雇用の
転機として2001年に、創業者、松下幸之助さんの生前の
方針いうより思想であった「社員は家族。人減らしはしない」
と決別して、同社が希望退職を実施したことを挙げている。
確かにあれは「象徴的な」出来事だったが、最近は創業者が
墓の下に居ることをよいことに(?)社名(商号)まで変えて
しまっているが、翁はどう思っているのだろう?
激怒してやしないか?

さて、話を戻そう。

問題は後段。結論から言うと、抽象的表現、「借り物」的
表現が多すぎるように思える。

疑問点1.
「内部留保を人件費に回せ、という議論もあるが、企業が
 雇用調整をためらえば、社債の格下げリスクなどに直面、
 資金繰りが逼迫(ひっぱく)する恐れすらある」
と言うが、これはまだ米国の格下げ神話が生きていた時期の
発想のままで、時流の変化を理解していないコメントで、
この人に限らず、今の財界幹部は、米国が掲げた、そして
それの敗北が決定的となった思想である「株主絶対主義」の
影響下から脱し切れていないように思える。
もはや「格付け神話は死んだ」と言えると思う。
少なくとも、実際問題として、格付けに対しての信用は、
「完全になくなった」と言えるのではないか。
今後未だ、旧態然たる「格付け神話」を信じて融資の判断を
するような銀行は、それこそ、その「判断ミスという自己責任」
の名において、国際競争から淘汰され、駆逐されるだろう。
なので、氏の不安は杞憂だではないか、と私には思える。

疑問点2.
「製造業への派遣禁止のような「過去への回帰」を進めること
 にも疑問がある。規制強化は企業の競争力を損ねて、
 雇用意欲をを冷やし、かえって雇用水準を押し下げることに
 ならないか」
と言うが、ならないと思う。
まず、「過去への回帰への拒絶」は財界首脳の発言に明確に
出されていたが、これは現状の深刻さがまだ理解できていない
証拠である。でもその「深刻」さはそのうち否応でも判るように
なる。
 (「否応でも」の詳細な記述はここでは控えるが、1つの
  ヒントを挙げていくと、今年必ず実施される、
  「選挙での結果」とだとだけ書いておきたい)
さて、西條氏は「疑問」と言うが、どういう疑問なのかを、
明瞭に、論理的に書いていない。後段を指すのだろうが、
その後段の、
 「規制強化は企業の競争力を損ねて雇用意欲をを冷やす」
という表現ではあまりにも抽象的すぎる。
財界の首脳なら抽象論でお茶を濁していられるが、経済の
ジャーナリストであればそうはいかないはずである。
なぜ、強かった時代の雇用システム、雇用構成要件に戻すと
「競争力を損ねる」のか?いわんや、「雇用意欲を冷やす」
とはどういう意味なのか?
繰り返すが、こういう具体的な事項に関しては、抽象的議論で
逃げるようなことは、少なくとも経済ジャーナリストは
やってはいけないと思う。

疑問点3.
「当面の策としてはワークシェアリングや失職している人たち
 への救済が急務だろう」について、
後段はもちろんそのとおりだが、前段の
「ワークシェアリング」は、1999年前後にも話題になったし、
今回も、先日、御手洗経団連会長が口にして以来、
そればかりが最初に挙げられるようになって来ている。
ところが、会社勤務者はおそらく全員が感じていると思うが、
「それが一番難しい。一番「非現実的」だ」と思われるのだ。
「聞こえ」は良いが、現実問題として(方法論として)は、
実は一番厄介なことで、御手洗会長はそれを理解していて
言ったのではないか、と勘繰りたくなってしまうほどだ。
すなわち、「どうせできないでしょうけど」、もっと言うと、
「やれるものなら、やってごらん」、と内心は思っていて、
できないことを知っていて、「聞こえの良いキレイゴト」を
言っただけなのではないか?と私は思っている。

賛同点
もちろん、この西條氏の文の中には幾つか賛同する点も述べら
れている。特に、
「政府は定額給付金を断念し、2兆円の原資を、仕事のない人
 の生活補助や職業訓練の費用に充ててはどうか」
という点は100%賛同する。また、
「苦しいときでも、企業は未来への投資は怠ってはならず、
 中でも人材投資の優先順位は高いはずだ」
と言う点も、そのとおりだと思うが、この点は、先述の疑問点
の1と2に矛盾するように思え、氏はこの語彙矛盾、自己矛盾
であると私が感じる点を、どう説明されるのか、という点に
関する答えとなるような部分は、この日のこの文面からは
得られるように書かれていないことは残念である。

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