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2008年10月19日 (日)

三善晃 作品展 Ⅱ合唱作品

「三善晃と同時代人として彼の作品を聴けることは無上の
喜びである」、という主旨の言葉を、1985年に開催された
三善さんの個展(演奏会)のプログラムに寄稿したのは
故・武満徹さんだった。

18日、19日と、三善晃さんの75歳を祝っての作品展が
東京オペラシティ大ホール(タケミツメモリアル)で開催
された。
18日の、Ⅰ器楽・歌曲作品(室内楽) は、都合で拝聴
できなかったが、今日のⅡ合唱作品の会は、彼の合唱
作品の素晴らしさをあらためて堪能でき、格別な三善体験
をさせていただき、感動的なひとときだった。

プログラムは最後に書くが、指揮はすべて栗友会合唱団
の栗山文昭さん。
合唱は、複数の複合体である栗友から数団体に分かれて
歌った他、やはり複数の小学生コーラス団体から成る
<むさし野ジュニア合唱団「風」>が前半の1曲と後半の
1曲を分担。その他、樹の会、耕友会、合唱団お江戸コラリ
アーズ、という、総勢600人前後という盛大な「合唱祭」
だった。
前半の1曲目、「島根のわらべ歌」や後半ラストから2番目の
「波」を聴くと、三善の作品において、「児童コーラス」が
必然的なまでに活かされていて、それが常に無垢で純粋な
心の具現化としての表出として、それが新鮮に聴き手の琴線に
触れてくるのが嬉しくもあり、感動的である。
日本の作曲家で、三善晃ほど児童合唱の素晴らしさを伝える
曲を書いた人は他にいないのではないか、と思う。

今回、大人のコーラスの各曲において、各団体とも、
人によって譜面を持っている人と持たない人がいて、聴衆に
よっては不思議というか気になる人もいたろうけれども、
私はあれで良いと思うし、当然、栗山先生も三善先生も
それを許したのだろう。
要するに、各個人の状況において、結果、総和体として
最高のパフォーマンスとしての歌の響き、「合唱」がステージ
に実現されればよいわけで、先日の学生によるNHKの
コンクールとはコンセプトが違うわけだから。
なお、児童は前半の1曲も後半の1曲も暗譜。
子供はそのほうが好ましいだけでなく、彼ら、彼女らは
それができちゃう年齢なのだ。

三善さんの合唱は、武満さんの言葉を借りるなら、
「絶対抒情」とも言うべき禁欲的なまでの美観と、憧憬の
ような「いとおしさ」や、厳しいまでのリズムの変化と強弱の
変化に彩られていて、あらゆる意味において「プロ中のプロ」
の作曲技法を土台にしているが、それでも底辺において、
「優しい眼差し」というものが常に存在していることに
心打たれる。

今回はプログラムに無い「レクイエム」、「詩篇」、「響紋」、
小品の「麦藁帽子」や「三つの抒情」は何度も聴いてきて、
大好きな曲だが、それ以外の三善さんの合唱曲を(もちろん
この日の曲もそのごく一部にすぎないにしても)、総括的に、
久しぶりに集中して聴かせていただく機会に立ち会えた
ことは本当に幸せな瞬間であった。

ラストの曲、2003年作曲の「であい」は、児童を除く
全ての合唱団員がステージに立ち、男声が150人前後、
女声が200人前後の大合唱で歌われた。
これについては全員暗譜。詩が「さよなら」という言葉を
「キー」としているとはいえ、ある種、「祝祭的な」曲でも
あるし、ラストを飾るに相応しい、素敵な大合唱だった。

その最後の曲が終わり、三善先生が客席から「車イス」
で壇のすぐ下まで補助者に導かれて拍手に応えた姿に
ちょっとショックを受けた。
2006年5月の岩城宏之さんとの最後のリハーサルを
思い出してしまったので。

全ての団員がステージから去ったのち、三善先生が会場から
退場される際、多くの聴衆が、あらためて氏を囲むようにして
大きな拍手を贈った。私もすぐ近くまで駆け寄って行き、
拍手を贈った。
この文でお気づきのように、三善さんのことを、「さん」、
「氏」とか、統一されていない表記をしてしまっているが、
私にとっては「先生」とお呼びしたい、そう表記したいのが
一番正直な気持ちだ。
もちろん直接お話ししたことも、いわんや教わったこともない
作曲家だが、私の中では「先生」とお呼びしたい、
最も尊敬すべき作曲家なのだ。


最後に、こんなステキな演奏会なのだが、主催、企画者に
ひとこと。大ホールでの「自由席」というのは、実はもっとも
「自由ではない」のであって、しかも、あれだけ「招待席」
とされてしまう状況には閉口した。
もちろん、我が国を代表する偉大な、多くのファンを持つ
人気作曲家だし、かつての桐朋学園の学長だし、
プログラムにも多くの著名人、お弟子さん、例えば、
遠山一行さん、池辺晋一郎さん、西村朗さん、田中信昭さん、
新実徳英さん、沼尻竜典さん等々からの祝辞、思い出、
エピソード、常日頃からの敬意等々が寄せられるほどの人
だから、たくさんの「招待」は理解できるが、その他の席は
「指定席」として販売して欲しかった。

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なお、プログラムは以下のとおり

島根のわらべ歌(2003、混声・児童合唱とピアノのための)
         宇都宮大学混声合唱段、千葉大学合唱団、
         むさし野ジュニア合唱団“風”
路標のうた(1986、二群の男声合唱とピアノのための)
             宇都宮おとこコーラス粋狂座
空(2000、女声合唱版)
悲しみは(1984、無伴奏女声合唱のための)
あなたにサンタがいるなんて(2001、女声合唱のための)
  以上3曲=うつのみやレディーシンガー晶<AKIRA>
        合唱団るふらん、女声合唱団 青い鳥
<その日>-August6-(2007、混声合唱とピアノの
              ための) 合唱団 響
(女声合唱曲集「街路灯」より)
街路灯(1982)、カチューシャの唄(1996)
佐渡おけさ(1996)
  以上3曲=宇都宮室内合唱団ジンガメル
         コーロ・カロス
交聲詩曲 波 (2001、童声・混声合唱と2台のピアノの
       ための) MIYOSHI AKIRA Chorus、
             むさし野ジュニア合唱団“風”
であい(2003改訂版初演、混声合唱と2台のピアノのための)
             栗友会合同合唱団

以上です。

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