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2008年6月10日 (火)

「蛇の目」判例等、株主代表訴訟判決の衝撃。役員が支払う個人賠償金は「億」円単位

雑誌「ビジネス法務」7月号で、会社法で有名な弁護士の1人、
鳥飼重和先生が、最近の株主代表訴訟における、取締役の
「次々の敗北」である判決を取りあげ、

 「もはや憧れのポストではない 判例がつくり上げた
  『取締役の責任』の厳格化」

というタイトルで、記事を書いている。
また、昨日発売された、「週間 東洋経済」でも、「法化社会」、
「訴訟社会」の到来の特集記事を組んでいる。

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まず、事例集の前に基本的なことを「おさらい」しておこう。

取締役が、その職務を行うについて悪意または重大な過失が
あったときは、第三者に対して損害賠償責任を負う。
(会社法429条1項)。

取締役の悪意または重大な過失により、会社が損害を被り、
その結果、第三者に損害が生じた場合、本条により当該取締役
は、直接第三者に対し損害賠償責任を負うかどうか、例えば、
取締役らの悪意または重大な過失による任務懈怠によって、
その会社が業績が悪化(または倒産)するなどして株式が無価値と
なってしまった場合、株主は当該取締役らに対して、
直接損害賠償請求をできるか、という点に関しては、
東京高判平成17年1月18日の判決で、
「証券取引所などに上場され公開取引がなされている公開会社で
 ある株式会社の業績が、取締役の過失により悪化して株価が
 下落するなど、全株主が平等に不利益を受けた場合、株主が
 取締役に対しその責任を追及するためには、特段の事情がない
 限り、株主代表訴訟によらなければならない」、としている。

株主代表訴訟とは、 6ヶ月前より当該株式を保有している株主が
会社に代って、取締役の会社に対する責任を追及する損害賠償
請求訴訟(会社法847条)をいい、会社においては、
取締役の会社に対する責任を追及することが行なわれにくい現実
を踏まえて、株主が直接取締役に対して訴訟を提起できるものと
して、株主による会社ないし取締役への監視・監督機能を強化充実
し、もって会社運営の適正を期する狙いを有する。
しかも、訴訟手数料はわずか、8,200円で訴訟を提起できるように
なったことから、その数がここ15年ほどの間に増大して来ている。

基本的には当然、「法令違反事実」が問題となる。
新会社法では、任務懈怠として問題となるとされている。
(423条1項)

①取締役の具体的法令違反(独禁法、証取法等の違法行為等)
②取締役の忠実義務違反(= 経営判断の誤り-経営者としての
 合理的裁量の範囲の逸脱の有無
すなわち、「経営判断の原則」からの逸脱、不法行為。

なお、取締役は、退任後もその在職中の行為につき問題とされる
余地があり、 被告となる取締役は、実際業務執行を行なった
代表取締役のみならず、監視・監督義務を怠った他の取締役も
当事者とされ得る。
具体的には、取締役会にその案件が諮られた際、
「反対しなかった」ことはイコール賛成=同意者(同罪者)に
なり得るわけだ。

ただし、新会社法では「責任追及等の訴えが当該株主若しくは
第三者の不正な利益を図りまたは当該株式会社に損害を加える
ことを目的とする場合」には請求できないとの定めが新設された。
(847条1項ただし書)。

また、昨今「流行」の「役員賠償責任保険」(「D&O保険」)は、
取締役の故意による犯罪行為等は保険の対象とならない。

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「おさらい」は以上として、事例を記そう。

①4月23日に東京高裁出でされた「蛇の目ミシン工業」の
 「株主代表訴訟、差し戻し控訴審判決」が、「衝撃」をもって
 経済界を「激震」させている。
 「旧経営陣5人に対して、総額583億円の支払いを命じた」もの
 で、「5人に「破産しろ」と言い渡したに等しい」(牛島信弁護士)
 内容となっているのだ。
 1人当たり単純平均で=116億円以上。
 ホリエモンでも返済不可能(彼については少し後述する)。
 しかも、2006年4月の最高裁による差し戻し判例の前の、
 東京地裁、および東京高裁では、「責任は問われない内容」
 (取締役側の勝利)だったもので、事実上、最高裁により、
 「一気に逆転」されたものだった。

これには、「前座」が幾つかあった。
時系列的には遡るが、以下、②から始めよう。

②足利銀行事件の和解 (2007年9月、宇都宮地裁)
 事件の内容は省略するが、判決結果というか、「和解」だが、
 これは「和解」などという「しろもの」などではなく、
 事実上、「最も厳しい判決」とさえいえるものだ。
 銀行の旧経営陣に対して、いわく

 「当座の生活費として、100万円を持つことを認めるが、それ以外
 については、所有する家屋、株式、銀行預金等の全てを売却、
 解約して、賠償金に充てよ」、とするものだったのだ。

それこそ、「ぶっ飛び級」の内容だ。

以下も、事件内容は省略して、判決内容のみを記す。

③旧・北海道拓殖銀行事件、最高裁判決 (2008年1月18日)
 元頭取を含む取締役ら14人に対して、
 「総額=101億円の賠償命令」。
 1人当たり単純平均で、7,000万円を超える額。

④ダスキン事件、最高裁判決 (2008年2月12日、総額確定)
 旧経営陣=13人に対して、総額=53億4,000万円の支払い
 を命じた。
 1人当たり単純平均で、約4億1,000万円。

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株主代表訴訟の「時候」は10年である。
すなわち、退任後も、10年を経過していなければ、訴訟を
起こされる可能性がある、ということだ。
更に、提訴されると時候は中断し、裁判が決着するまで
「エンドレス状態」となる。
すなわち、場合によっては、退任後20年後くらい経ってから、
有罪判決を受ける可能性もあるのである。

実際、先述の①の事例、「蛇の目ミシン工業」判決は、
株主代表訴訟の一番最初の提訴は1993年、15年も前に
起こされている。
そして、これまた繰り返しになるが、2001年の東京地裁判決
および、その後の東京高裁では、今回とは内容は全く逆で、
旧経営陣の責任は全く問われない判決内容だったのだ。


この大逆転劇(判決)の連続出現。
これこそ、完全に「コンプライアンス至上主義」を決定づける
「流れ」と言い切ってよいと思われる。

数十億の資産があると言われているホリエモンさん。
今後の訴訟の展開では、「スッカラカン」になる可能性は、
冗談ではなくて有る、と思う。
それも、そう遠くない時期に、かもしれない。
お金目当てで近づく女性さん、「やめときなさい」。
しかも、金だけでなく、あんなに往生際の悪い、ブザマで
男らしくないヤツだとは以外だった。
あのとき、「ごめんなさい。僕が悪かった。出直します」、と
謝罪していたら、もっと早く「社会復帰」できただろうに。
人間、潔く過ちを認めたほうがカッコイイし、後の展開がガラリと
変わるのだ、ということはあり得るのに。
そのことに気付かない、ということは、
「本当のところでは、頭が良い人間とは言えない」、ということ
だと思う。

話を戻すと、いずれにしても、
「役員に対して甘い時代は、もはや完全に終わった」のである。

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