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2007年11月28日 (水)

サブプライムローン問題を整理する

アメリカにおける、サブプライムローン、すなわち、
「信用力の低い個人向け住宅融資」のコゲツキ問題に端を発した
金融不安が世界を席巻しはじめている。
奇しくも、あの「ブラックマンデー」から20年。あの当時は、証券界に
いたので当時の気流は知っているが、驚きはあったが、「どうせまた
持ちこたえるだろう」という、余裕というより、ある種「根拠の無い
安堵感」が市場にも業界にもあったのは確かだし、実際、2年後の
1989年12月の大納会最高値へ市場は突っ走ったのだった。

だが、今回はそういう「余裕」は、はたしてあるのかどうか?

11月の証券市場の下落率は、ニューヨークで8%、ロンドンで9%、
東京ではさらに大きく11%、台湾に至っては15%だし、韓国や
シンガポールなどのアジア圏も10%を超えている。
ちなみに、上海市場は(建前上は「共産圏」なので)中国本土と
いうことで、市場への資金出入りを政府が制限していることが幸い
して、それほどの影響は今は出ていない。
もっとも、後で触れるが、中国は外貨準備高を円換算だと150兆円
ほど抱えていて、ほとんどが「ドル建て」というから、最近のドル安
に相当な警戒感を抱いているのは当然だ。

今回の(あるいは、ここ10年前後くらいの)、いわゆる「証券化」され
た商品について、私は詳しくないので、その点についての解説は
日経新聞なり、経済雑誌等をお読みいただきたい。

要するに、「住宅ローンをまとめて証券化し、その金融商品を更に
加工した、一種のデリバティブ商品(証券)に関する騒ぎなのだが、
その大元は、アメリカにおける、それほど経済的に必ずしも豊かで
ない人々(信用力の低い、と評される人々)向けの融資を行い、
「住宅を買いましうね」とした、経済活動(住宅プラス金融業界)の
「しかけ」が発端で、それが、キチンと将来的には金利が上がって
いく構造を説明していなかったとか、そういう混乱も伴って、返済に
苦慮する人々が急増してきたこと、が、今回の状況の大元。

だから、純粋に「金融資産問題だけとは言い切れない」複雑な要因
が多々考えられるので、あるいは、先述の「デリバティブ」という、
ある種の「ヴァリエーション的な金融商品」がからんでいるため、
いったいどのくらいの「損失」を、関係している金融機関が発生させ
てくるかが、「正確という意味においては」「全く読み込めない」のだ。
ここに、混乱と不安の最大の理由、要因がある。

シティ・グループは、160億ドル=約1兆7,000億円の損失が生じると
言われているし、
メリルリンチ証券も79億ドル=約8,300億円の損失、と言われて
いる。この7~12月における欧米の大手金融機関20社の
推定合計損失額は、約680億ドル=約7兆3,600億円と言われて
いるが、これは実は、非上場の資産運用会社や、ファンド額を
公開していない大手機関投資家の額が加わってはおらず、また、
まだ更に、シティ・グループにはサブプライム関連資産が547億ドル
(5,800億円)、メリルリンチ証券にも209億ドル(2,200億円)
残っている、とも言われているため、FRB(米国連邦準備理事会)は
推定として、全世界では、3,000億ドル(約32兆5,000億円)の損失、
と、はじいているし、ドイツ銀行の某アナリストによれば、更に多額の
4,000億ドル(約43兆円)、という「天文学的な」損失額をはじいて
いる。

要するに、元々はアメリカの住宅融資資金、という、本来的には
極めて「限定的な問題」なはずなのだが、それだけ、
「そういう証券化された、いわば派生金融商品」に多くの国の
金融機関が手を出して(購入あるいは運用側として)いるわけ
なのだ。


では、日本はどうか。

以前からこの分野に進出していた 野村ホールディングスが
1,450億円の損失。
大手の6つの銀行の状況で、中間期(と、通期見通では)
みずほファイナンシャルが 700億円 (通期では1,700億円)、
三井住友が 320億円 (同 870億円)、
住友信託が 90億円 (同 190億円)、
三菱UFJが 40億円 (同 270億円)、と、
中間決算の合計で、1,500億円の損失を見込んでいて、
通期では 3,000億円と見込まれている。

その他、農林中金が 07年10月時点で1,057億円の損失、
あいおい損保が 252億円、
山陰合同銀行および常陽銀行がそれぞれ 20億円の損失、
滝野川信金でも 73億円、ということで、
正に複数の証券化商品を束ねた「債務担保証券(CDO)」と
呼ばれている商品に手を出したところが手ひどい損失を被って
いる。

したがって、2008年3月期における、国内の銀行、証券、
生損保等の合計損失計上額(予想)は、6,000億円、と
読まれているが、それより多くなるかもしれない。

日本の企業で、金融関係でなくとも、例えば住宅関連(建機)
のコマツ、あるいは信越化学、三和ホールディングス等の各社
は、北米での売り上げダウンという影響が出ているし、
耐久消費財として、ホンダやマツダも大きな売り上げダウンが
生じている、等々、何も金融業界だけの問題ではもちろんなく、
米国や日本だけの問題でもないわけだ。

「利上げ」政策を少しずつ進めていこうとしていた日本銀行も
思わぬ事態に「先が読めない」と困惑している。


こうした、金融市場の不安定要因は当然のことながら、各国
の他の(一般的な)消費者の経済的ビヘイビヤーに影響が生じて
いる。
例えば、米国では、消費者ローンの貸倒確率が上昇しているし、
1戸建て住宅の販売も16年ぶりの低水準という。
自動車や家電の購入が減速し、ガソリン高もあって日用品の
購買動にも影響が生じている。

信用収縮の拡大→住宅市場の不振→景気全体の低迷→
一段の金融不安、という、悪いスパイラルが発生しているわけだ。

イギリスでも、中堅銀行のノーザン・ロック社の株価が4割の下落
を生じるとか、ドイツのインフレ率も3%を超えてくるのでは、と
言われ始めている。ユーロ圏の10月の物価上昇率は2.6%に
まで上昇してきている。


このように、世界的な 「株安」、「長期金利の低下」、
「ドル安」(=円高。厳密には無論イコール円高、ではないが、
        一応そう表記しておく)、
といった不安材料が世界の金融市場を覆い始めていて、
「いつ晴れるのだろう?」ということが全く「読めない」ため、
市場全体が「疑心暗鬼」になっているのである。

こうしたことから、米国を中心としたカネ=マネー=投資運用資金
は、最近では、金(キン)や原油の先物市場に流れ始めてもいる
ようだが、原油高に更に「油」がかかってしまう恐れはある。
産油国も、原油価格の決定通貨をドルからユーロに変えてくる
ことも考えられ、そうすると、更にまた一段と、ドル安、米国での
ひいては世界での「株安」スパイラルを大きくするかもしれない。

現在、東京証券取引所第一部市場での売買高の実に6割は、
「ガイジン」によるものだが、米国本国の不安材料の余波(懸念)
もあって、東証から資金を引き上げ始めてもいるようだ。
(当然、市場全体の傾向としては、個別はともかく、いわゆる
 「株安」につながる)。


以上のように、基本的に業績の良い企業はいたずらに心配する
必要は無いものの、少なくとも、当面、各国の証券市場の動向
や、為替レート等々、注意深く観察していく必要は、どこの国にも
どこの企業にもあることは間違いないようである。

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