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2007年11月 8日 (木)

パリ管弦楽団来日公演

来日中のパリ管弦楽団 Orchstre de Paris を聴いた。
生で聴いてみたかったオケの1つだ。サントリーホール。
指揮はクリストフ・エッシェンバッハ。もうここ10年くらいは、
ピアニストというより、完全に指揮者として有名になっている。

1曲目は、諏訪内晶子さんによる、チャイコフスキーの協奏曲。
彼女の「おはこ」であり、彼女のトーンは想像どおり、パリ管の
トーンによく合う。どこまでもノーブルで、エレガントな諏訪内の演奏。
結婚、出産後は、一部のマスコミでは、完成度が落ちたのでは、
との評もあったらしいが、どうしてどうして、余裕と風格さえ感じる
演奏だ。彼女はドイツ系のオケより、フランス系のオケとの相性が
良い気がする。フランス暮らしが長いからというより、エレガンスな
トーンによる印象からのためだろう。
エッシェンバッハもドラマ性よりも、ふくよかでノーブルで繊細な美観
に重点を置いたサポート。出だしの弦のシルクのような味わい。
第2楽章から第3楽章に移る、あの「つなぎ」を、とても丁寧に描いて
いたのはとても印象的。
したがって、この曲のドラマ性とか、チャイコフスキー独特の陰鬱さ
とかは求めようもないが、これだけ美しいチャイコフスキーを聴かせて
くれるコンビには文句の言いようも必要も無い。
ソロの高音のトリルとか部分的にはやや弱さも感じたが。
でも、諏訪内さんをライブで聴いたのはこれで7回目くらいのはずだが
今回が一番印象的だった。

大きく長い拍手に応えて、諏訪内さんは、バッハの無伴奏ソナタ
第2番より「アンダンテ」を弾いた。単純で美しい旋律だが、絶えず
「通奏低音」すなわちダブル(重音)のパッセージの多い、楽器に
詳しい人なら、「単純にして難しそう」と解る曲。
素敵な選曲のアンコールだった。

休憩を挟んで、まず、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」。
この曲は、実は今、所属するアマチュアオケで「格闘」している曲
なので、どのくらい難しいかはイヤというほど知っているつもりだ。
しかし・・・・何という素晴らしさ!!
私は「本場もの」というのは本来あまり信用していない。
ロシア人によるチャイコフスキーより、カラヤンとベルリンフィルの
チャイコフスキーの演奏に数倍魅力を感じてきたし、
ウィンナ・ワルツもボスコフスキーの弾き振り演奏は、どうも
「軽すぎて」好きになれなかった。
だが・・・・、だが、ラヴェルとかドビュッシーはやはりフランスの
オケに限る、という感を、今回このオケを聴いて強く抱いた。
オケの「オハコ」だから、エッシェンバッハもオケの演奏に任せ
ながら、要所要所のみ押さえている、という感じだし、それで正解
なのだろう。
もちろん、彼の主張はあり、終結近くは、相当「鋭角的」な演奏で
牽引していた。音楽監督の面目躍如というところ。
この曲は本当はアマチュアはやらないほうがいいと思う。
プロにしても、日本のオケでは多分ほとんど「意味が無い」感じに
なりがちだと想像に難くない、そういう難曲だ。
「ダフニスとクロエ」ももちろん難曲だが、日本人の繊細さとか
童話への愛着性とか思うと、まだダフニスや「マ・メール・ロア」の
ほうが、日本人に向いていると思う。
とにかく、これぞフランス人によるラヴェル、「ラ・ヴァルス」の演奏!
という内容だった。
本来の意味での「自分たちの曲」という思いによる自信と風格と
余裕。素晴らしかった。
これぞ「大人のセクシーさ&エレガンス&気品」。

最後の曲は、ストラビンスキーの「火の鳥」 (1919年版)。
この曲においても、エッシェンバッハは終始、余裕のあるテンポで
優雅で叙情的な面にシフトを置いていたし、このオケの特性に合う
アプローチで、とても魅了された内容だった。
それぞれの木管やホルンの、あるいはチェロのソロの何という
ノーブルな音色だろう! これこそ、フランスの極上の音だ。
それと、終曲に入っていくところでの長い弦のキザミを、これほど
ゆったりと非常に丁寧に緻密にやったのは初めて聴いたくらい、
とても印象的。ブーレーズでさえ、ここまではやらないのでは?
というくらい。お見事。
この曲も、1987年だったか、岩城宏之さんとやったことがあった
けれど、曲の完成度を求めるという点では、もしかしたら
「ペトルーシュカ」より、いや、「春の祭典」より難しいかもしれない。
この日のパリ管ほど美しい「火の鳥」はほとんど記憶に無い。

このオケ、あるいは多分、フランスのオケの良いところは、
例えば、mf から pp に「サッ」と移るとき、まるで「風がファッ」と
よぎるかのように柔らかくしかもトーンをもって奏するところだ。
ああいう音は、日本のプロオケはもちろん、他の外国のオケでも
そうそう無いニュアンスではないだろうか?まあ、ウィーン・フィル
なら、そうしたところは有るが。

万雷の拍手に応えて、アンコールはなんと「ボレロ」!
「パリ管のボレロ!!」。5日のNHKホール(NHK音楽祭)の
演目には入っているが、私は諏訪内さんとの共演が聴きたかった
ので、この日を選んだ。もちろん、7日のラン・ランとの共演も
聴きたかったが。
で、まさか、とは思ったが、「法外の喜び」。
これぞ「フランスの管楽器」という競演。
絶妙なニュアンスという「ご馳走」の連続。
エッシェンバッハは、出だしからほとんど手を動かさない。大きく
動かしたのは、終結部近く、あの、それまでのハ長調からホ長調
に変わったところからエンドまでの1分間くらいのみだった。
それまでの14分くらいは、ご存知の様に、個々の音量だけでなく、
オケ全体の音量をひとくぎりずつ漸増して、すなわち、
音量のステージを少しずつ上げていかなくてはならず、いくら、
ラヴェルがそういうオーケストレーションで書いているとはいえ、
やはり簡単なことではない。
だが、これを、オケがオケの力だけで、コントロールしていった、
その見事さ!
プロだなあ、当たり前だけど。
コンマスのボーイングも全ての曲において本当に素晴らしかった。
これまた、当たり前だけど。

それと、カーテンコールもそろそろ終り近く、管を中心に、後方の
団員たちが後ろを振り返り、サントリーホールのオルガン側の聴衆
にも丁寧に応えていたのはとても良い感じだった。
外来のオケで、いや日本のオケだって、これはあまり見かけない
シーンだ。さすが、エレガントな人たちだ。

エッシェンバッハの指揮は、実は1974年ころだったか、聴いている。
ピアニストとしてはもちろん既に有名だったが、指揮者としてはまだ
「駆け出し」のころで、髪もフサフサしていたころだ。都響だったか、
日本のオケと、ベートーヴェンの「エロイカ」と「運命」を演奏した。
ホルンが何度かトチっていて、エッシェンバッハが可哀相だ、と
思ったことは覚えている。新宿厚生年金会館だったと記憶している。
あれから、33年。今や、パリ管とフィラデルフィア管の常任指揮者で
あり、ウィーンフィルにも招かれているようだし、大変な活躍だ。
彼は幼少時、不遇な境遇にあったこともあり、日本では
「ねむの木学園」などをよく訪れるなど、福祉、というか、恵まれない
子供たちにも絶えず気を配ってきた優しい人柄。

パリ管も創立40周年。年配の人には、旧・パリ音楽院管弦楽団の
音色を好む人も多いようだし、新・パリ管もミュンシュ亡き後、
カラヤン、ショルティと、マエストロが振ったとはいえ、バレンボイム
のころは、何となく「いまいち」という録音が多かった。
(あくまでも録音に限っての印象だが)

でも、前回の、プラッソンとの来日公演はとても評判が良かったよう
だし、エッシェンバッハとの相性も良さそうだし、これからも、
どんどん聴いていきたいオケだ。

なお、今日ではなく5日の演奏はNHK音楽祭だから、
いつかNHKで放送があると思う。全部ではないにしても。

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