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2007年6月 1日 (金)

グレン・グールドとZARD

やや大仰なタイトルを付けてしまった。もちろん、両者に音楽的な
接点は全く無い。
カナダ生まれのピアニスト、グレン・グールドは、抜群の
テクニックの持ち主だったが、むしろそのユニークな表現で、
これほど好き嫌いの分かれる演奏家は珍しいのではと思える
くらい個性的で、いわば、「孤高の天才」というべき人だった。

テンポのふり幅の大きさ。誰よりもゆったりとした遅いテンポを
とるかと思うと、曲によっては誰よりも速く弾いた。
あらゆる意味で「プロ中のプロ」だったが、50歳で亡くなる人生の、
その活動の途中で、彼は突然、「コンサートは死んだ」と言って、
人々の前から姿を消し、もっぱら、レコード録音のみに専念する
という、変わった在り方を選んだ。

芸術家によってはむしろ逆に、録音には否定的で、ライブこそ
重要とする人もいた(いる)し、むしろそちらのほうが理解
しやすい。
なぜ、「コンサートは死んだ」と思ったのかは理解するのに難しい
が、そうした考えを含めて、実にユニークな人だった。


ZARDというグループ、結果的には、坂井泉水さんに限っても、
人前にはめったに出てこないという点で、ミステリアスな存在
だったし、彼女の最期もそうなってしまった。
もっとも、「出ない」選択というのは彼女の控えめな性格はあった
にせよ、基本的には売り出す側としての事務所サイドの「戦略」
という要素が大半だったようだし、実際、
「ミュージック・ステーション」には5回出演した。
ライブ・コンサートも1999年は限定的に行い、2004年は
全国規模で初のツアーを決行してファンを喜ばせた。
最近も、「これからはもっとファンの前に出たい」と語っていたと
いうし、NHK「紅白」からは近年毎回オファーがあり、
出演の可能性もあったと伝えられていたくらいだった。
ZARD坂井泉水さんの「変身」した姿、ファンの前にどんどん
出て行く姿を見てみたかったものだ。

坂井さんは、歌唱力からするとプロの力のすごさを感じさせる人で
はなく、むしろ、「素人」から出発して、伸びやかでパンチのある声
だけど、一般の人から手が届くかもしれないという、そういう
「親近感」による要素が強い。
この点は、グールドや本田美奈子さんとは異なる。
でも、その「カッコよさ」「ミステリアスなありかた」により消えて
しまうことなく存在感を保たせるだけの魅力をもった人だった。

人前に出て行かない、という「かたち」は、確かに存在感を逆説的
に浮かび上がらせもするが、でも、やはり「淋しい」ありかたの
ようにも思える。「もっと、もっと、あなたのことを知りたかった」
というファンは多いのではないか。

グールドも坂井泉水さんも、若くして突然に、忽然と私たちの
前から去ってしまった。それは大変に淋しいことだ。

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