ウルトラシリーズその2 ジャミラの死 言葉だけは美しいけれど
定演は終わったけど、公約の1つをまだ書いていまんせんでしたので、遅ればせながら書きます。
最初は余談で、ウルトラマンに変身する科学特捜隊のハヤタ隊員(というか、事故で同体化=乗り移ったという設定)役は黒部進さんで、その娘さんは今、女優やモデルとして活躍している吉本多香美さんだ。吉本さんは子供のころ、「ウルトラマンの子供なら、空を飛んでみろ」と、からかわれたらしい。
さて、ウルトラマンで印象的な作品(回)はいくつかあるが、例えば、DVD第10巻第37話「小さな英雄」のピグモン。人間の味方をして死んでしまう。
もちろん、最終回(第39話)の「さらばウルトラマン」も印象的。
だが、これから書きたいのは、第6巻第23話「故郷は地球」での
ジャミラのこと。
宇宙ロケットの軌道修正失敗により、行方不明となった某国(という設定)の乗務員ジャミラが、他の惑星で奇跡的に生き延びたが、異質な「化け物」となって地球にようやく戻り、冷たい人類に復讐をするという内容。ジャミラが憎しみの心を捨てられないまま死ぬシーンは子供心に「可哀想」だと思ったし、あらためてDVDで見てもそう思う。
「いきさつ」に配慮して彼の慰霊碑が作られ、碑文にはこう刻まれたのだった。
「人類の夢と科学の発展のために死んだ戦士の魂 ここに眠る」
ジャミラの正体を知ってから、彼に同情してきたイデ隊員はこれを
見て憤り、吐き捨てるように言う。
「犠牲者はいつもこうだ。(碑文の)文句だけは美しいけれど・・・」
慰霊碑の前に立ちすくむイデ隊員を他の隊員らが次々に呼ぶ(ただし声だけ、というのがスゴイ)。「イデ」「井出」「いで」「イデ」。まるで、「そんな感傷的なこと言ってもしょうがないだろう、現実に戻れよ」とでも言っているようである。
すごいエンディングだ。これが「子供のための番組」だろうか?大人にさえ、深遠で哲学的な内容だ。とても子供に理解できる設定でもなく、セリフでもない。これぞ円谷作品の真骨頂という感じがする。
「文句=言葉だけは美しいけれど」
これには「靖国問題」や、不祥事で謝罪会見する大人たちを想起させる。前者では、「死者の悲しみを無視して、生き残った者が勝手に死者をキレイに祀りあげる」という構造。死者がどういう無残な死にかたをしたかには近づかない。例えば、私達は、戦前の大投手、沢村投手が戦時中、どの船でどのあたりで沈没して亡くなったかを知らないのだ。
後者では、子供の自殺には形式的に謝る教師、病院の医療ミスを
しらばっくれるか、せいぜい形式的に謝る医師たちを想起させる。
生者にだけでなく、死者にさえ冷酷な私達。
「言葉だけは美しいけれど・・・」
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