金融商品取引法に基づく内部統制報告制度の初年度最初の
適用年度会社である2009年3月期の上場会社による結果が
公表された。
決算期変更等により昨年11月と今年3月に報告(公表)した
会社2社は別として、この6月にEDINETで報告した会社数は
2672社。
内、いわゆる事業年度末(期末)日現在での「不合格」である
「有効ではない=重要な欠陥あり」とした会社数は56社だった
ほか、会社内で整備や運用あるいはそれに対する評価が完了
せず、外部監査人=会計監査人(多くは監査法人)が評価
しようもなく、「意見不表明」とした会社は9社。
後者も実質的な「不合格」だし、前者では、正直に
「少なくとも2009年3月期(2008年4月~09年3月間)
では、当社では○○○○という、正確な財務報告を作成する上
での障害と成り得る重要な欠陥が存在しました」、
と分析して公表したのに比べたら、後者はそれすらできない、
そこまで至らなかったのだ、という意味では実は前者よりも
「重症」なのだが、新聞等は前者のみに力点を置いて報道して
いたことにはやや疑問を感じた。
これは、実際に携わった「現場」=企業内以外の人、
投資家、マスコミ等には、この制度自体の理解度が未だ未だ浸透
していないのだろう、予想できる。
それはともかく、「重要な欠陥」の報告(公表)社数は、
「以外に少なかった」、と思っている関係者が多いのではないか?
と想像する。これは先述のことと関係するが、
実は当事者である各企業や最終評価者である会計監査人
(監査法人等)においても、正直なところ、
「金融庁はどこまで厳格さを求めているのだろう?」
という思惑があり、監査法人等においても、
その厳しさの「サジ加減」がまちまちであった、という状況に
あったと推察できる。
また、投資家においても、よほど法律や、普段から関連記事に
注目していない限り、「内部統制、何それ?」という状況も、
少なくとも現在においては強く存在しているはずだ。
なので、以下に記載する該当企業の株価も、
公表後にほとんど影響が出ていない。
もっとも、今後は別である。
これから、数か月経ち、1年経ち、という中で、
直接関係したいなかった人々においても、今以上に注目される
ようになるのは必至と思われる。
それはともかくとして、報告(公表)内容を調べてみたので、
状況を記したい。
当初「ゲバ評」では、例えば東証マザーズや大証ヘラクレス、
名古屋セントレックス等の、いわゆる新興企業は、
「上場基準が甘いので内部組織的には未成熟と想われるので、
不合格が多く出るのではないか?」、
との声もあったが、報道ではそこまでの資料は無いので、
私が全て調べた結果、次の状況が判明した。
東証マザーズ市場上場企業は、なんと、
「重要な欠陥有り」はゼロ、という極めて優秀な、立派な結果
だった。もっとも、「意見不表明」が2社あったのは残念。
「欠陥ゼロ」については、規模的に比較的小さな会社が多いので、
統制整備、評価がし易かったのではないか、と想像できるが、
ともかく、何よりの結果だ。
大証ヘラクレスは「重要な欠陥有り」4社、「意見不表明」1社。
名古屋セントレックスは「重要な欠陥有り」3社、
「意見不表明」ゼロ。
西松建設などの不祥事を起こしたころは東証一部とはいえ当然
「欠陥あり」と出してきたので、東証や大証の一部、二部は
結構ある。
東証一部の「重要な欠陥有り」は17社
(ただし、内、大証一部との併行上場が3社と
ジャスダックとの併行が1社を含む)
「意見不表明」が1社(名古屋証券取引所一部との併行上場)
東証二部の「重要な欠陥有り」が3社、「意見不表明」1社。
大証一部の「「重要な欠陥有り」は先述の東証一部との
併行上場会社の3社。「意見不表明」ゼロ。
大証二部の「重要な欠陥有り」は6社、「意見不表明」ゼロ。
これらの中で、偶然かもしれないにしても目立つのは
ジャスダック市場上場会社だ。
「重要な欠陥有り」が22社(先述のとおり東証と併行上場1社を
含む)、
「意見不表明」が3社。
そのほか、福岡Q-Boardと札幌アンビシャスで
「重要な欠陥有り」がそれぞれ1社ずつ。
(「意見不表明」はゼロ)
なお、欠陥ありや不表明での理由で目立った点を見るべく、
全社、内部統制報告書で確認したが、とりわけ印象的だった
のが、
「間接部門、特に経理・財務部門で人員削減をしていたため、
スキル的に人材不足により整備・運用にミスが出た、
あるいは評価できる人を配置できなかった」、
とするものだ。
それ以外は当然ながら、直接的に決算作業におけるそれで、
勘定科目におけるミス、例えば減損損失や引当金計上での
計上ミスや繰延税金資産や法人税等調整額での重要な修正等、
連結財務諸表作成での計上ミスが多くを占めている。
金融庁自身が言うように、「欠陥」とあっても別に直に上場廃止
につながるわけではなく、しかも、該当の会社であっても
その多くは、3月末時点では不合格だったが、6月中までの
「内部統制報告書」提出日までにはそれを修復できている」
としている。
先述のように、幸か不幸か、いずれにしても投資家には
未だ深い知識や認識は未だ無いと思われ、よって、これは
「幸」だと思うが、不合格とされたところにも別に悪い風評が
立たないし、株価にも影響がほとんど出ていないようだ。
そもそも、主旨は「米国のエンロン社等のような虚偽報告、
粉飾決算等をしないように、会社内で統制をとれるように整備し
運用され、それがモニタリングされている体制にし、それを表明
しましょう」とのことなので、自社内での、ある種モラル的な、
またシステム的な問題とも言える。
ところで、今回、私が個人的に注目した会社は、東証一部の
大企業、精密機器、老舗大企業のO社(事件は公表されている
ので、社名を伏せる意味は無いが、判決が出ていないことも
あるので一応伏せる)。
同社で起きているのが1つの係争事件。
それは、同社社員のA氏が、
「会社のため、良かれと思い、内部通報制度を利用して、
その窓口に上司B氏の状況を告発したところ、あろうことか、
窓口担当部門は、B氏の側にたって、B氏にそれを伝え、
会社の人事としても、事実上の「報復」であるところの、
そして法的に禁じられているところの、告発者Aに対して
不遇な異動処置(いわゆる左遷)を行った」、
というもので、A氏はO社を告訴して、今、まだ係争中。
事実関係がA氏の主張のとおりだとすると、ヒドイ事件で、
以前他社にもあったが、比較的小規模な会社だったためか、
少し報道されただけだったが、O社は有名大企業。
それが、法で定められた、そして今回の内部統制においても、
「全社統制」における重要な設定要件の1つであるところの
「内部通報制度」そのものの信頼を失墜させた、
という意味で、決して1企業だけの問題ではなく、日本国内
全ての企業環境において、社会通念的にも極めて悪質な事態
なのだ。
これが本当のことなら、今回のO社の行為は、
「制度そのものに対する重大な裏切り行為」であって、
制度そのものの信頼を損ねた忌々(ゆゆ)しき事例と言える。
こんな例があったら、たまらない。
そして、想像はしていたが、O社が提出した「内部統制報告書」
の結論(自己評価)は「有効」。
監査法人も「内部統制監査報告書」で同様の評価としている。
しかし、もし今後、判決でA氏の主張が認められると仮定した
場合は、同社の「報告書は虚偽報告」となり、
それこそ重大な問題と化する。
そして、当然、「無限定適正意見」とした監査法人の責任も
追及されることになるのである。
一応、今回の状況記載はここまでとしておきたい。

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